第14話 崩壊ー2ー
「法器って武器なんですか・・・?」
「古代神話によると法器も間接性が高いが、武器となっている」
「・・・えっとその『崩壊』っていうのは、どのくらい強いんですかね・・・」
「『崩壊(ディケイ)』とは、万物それぞれの『自分自身をかたどっている情報』を狂わせ全てを灰燼に帰させる最高レベルの攻撃性フォースとなっている」
「全て・・・ですか・・・」
「だが『崩壊(ディケイ)』にも制限があってな。まず、今の焉修のレベルだと、せいぜい体の器官一つか二つを消し去るほどの力しかない。加えて『崩壊(ディケイ)』の発動の際、失う『代償』が大きすぎて、そう何回も発動できたものではないんだ」
「代償・・・?」
「ここでいう代償は三つある」
「三つも・・・」
「まず一つ目、『崩壊(ディケイ)』の発動の際、膨大なスタミナを消費する。強い技がゆえに、必要とするスタミナ量はどうしても多くなってしまう」
「一回発動につき、どのくらい消費してしまうんですか」
「常人なら一回発動で体内のほぼ全てのスタミナを消費する。だが、焉修なら七回発動しても大丈夫だ」
「でもたった七回・・・」
「だから焉修は基本的に汎用型武器(ジェネリックインターフェース)を使って戦う。その戦力もすさまじくてな」
「なるほど・・・」
「では二つ目だ」
と司令が二つ目の代償を言おうとしたのを止め、ふと沸いた疑問をぶつける。
「そもそも、スタミナってなんですか」
前、司令から説明を受けたとき、同じ単語が出てきたが、その時は「ふーん」程度に聞いていたので、あまり深く考えなかったが、今更考えてみると「スタミナ」っていうのは何なのか、よく分からない。
「・・・スタミナを説明してなかったか」
今回は俺にも非があるとしても、司令は結構な頻度で知らない単語を平気で使ってくるので困ったものだ。
「スタミナ、というのはあくまでわかりやすい表現に言い換えてるだけだ。正しい名称を『超越的熱量(フォースタクト)』という。超越者(エクシード)が常時的に持つフォース行使のためのエネルギーだ」
「その力の詳細は分かってるんですか?」
「完全にとは言えないが、現在はその九割は判明している。例えば汎用型武器(ジェネリックインターフェース)は超越的熱量(フォースタクト)研究の成果の賜物といえるだろう。まぁ詳しいことは須藤に聞いてくれ。私はあまりそこらへんに精通してなくてな」
「了解です」
「では話を戻すぞ。二つ目の代償とは「媒介力(エージェンス・フォース)」の減少だ」
「また知らない単語・・・」
「『媒介力(エージェンス・フォース)』とはこれもまたフォースの行使に必要なエネルギーだ。エージェンシーが「媒介者」という意味であるから基本的に超越者(エクシード)自身が持つ力ではなくて、エージェンシーが持つ力とされている。例外があるとするならば、自分の体自身がエージェンシー化することだな。例えば景子先生は媒介力(エージェンス・フォース)を自分で保持している」
「なるほど・・・」
「・・・いつも話が少し脱線するが、まぁわからない単語をそのままにしておくよりはましか」
「なんか・・・すみません」
何か悪いことをしている気分になったので、一応謝っておいた。
「さて、その媒介力(エージェンス・フォース)というのはフォースの行使後、それぞれがもつ本能的な仕組みによりエージェンシーに戻るとされている。そのため普通の超越者(エクシード)ではよほどのことがない限りこれを気にすることはないし、もはや知らないことがある」
「ただ、その焉修っていう人は別だと」
「あぁ。もう一度言うが、あいつのフォースは『崩壊(ディケイ)』。この力の適応範囲は対象物に限らず、フォースすらも崩し去ってしまう。そのため、この力がエージェンシーに戻ってこないため、エージェンシー内の媒介力(エージェンス・フォース)というのは徐々に減っていってしまうんだ」
「回復はするんですか・・・?」
「それが分からないんだ。そのため、あいつには緊急時以外のエクシード・フォースの行使禁止命令をだしている」
「ちなみに『超越的熱量(フォースタクト)』に関してはわかってるんですか」
「そっちに関しては判明している。一応回復はするが、その速度は個人差があるが、かなり遅い傾向にある」
「なるほど・・・」
「三つ目、それは尋常じゃないくらいの『待機時間(ロードリソース)』がいることだ」
「その言葉に関しては初耳ですが、なんとなく察したので説明は不要です」
「助かる。さて、お前は「非制限創造(アンリミテッド・ブレット)」の行使の際、自分の欲しい力を念じる必要があると言っていたな。それがお前にとっての『待機時間(ロードリソース)』だ。お前の場合特殊で、念じている間は別世界に転移するようだな。お前は分からないかもしれないが、傍から見て、実際にかかっている時間は刹那に等しい。だが焉修に限らずお前以外の執行者(エンフォーサー)は別世界に行けたりはしないし、現実世界で待機しないといけない」
やはり自分は特別なのだと改めて確認した。推測なのだが、自分はフォースの行使に伴い別世界に転移して、その際の現実世界の時は止まっているということだと思う。
「皆、それでも発動は一秒かかるかかからないかで済むのだが、焉修は別でな。発動に二十秒かかる」
「なぜそんなに・・・」
「あいつが使える唯一の「崩壊(ディケイ)魔法―吸収型」、ほかの崩壊(ディケイ)魔法には分散型と風化型などが主としてあるのだが、あいつはこれしか使えない」
「ってか、もはや魔法なんですね」
「魔法みたいなものだからな。最近は〈魔法〉という言葉をつけるのが流行っているそうだぞ」
「へ、へぇ」
流行りとかあるんだ・・・と思ってつい変な反応をしてしまった。
「さて、また脱線したな。話を戻そう。吸収型の崩壊(ディケイ)魔法の仕組みとしては、エクシード・フォースを利用し、体外に移動させた超越的熱量(フォースタクト)を圧縮して、いわゆるブラックホール的なものを生成する。万物はブラックホールの強大な重力により引き込まれ、圧倒的なエネルギーにより物質は原子レベルまで分解される。これが分かりやすい説明だな」
「・・・わかりやすい・・・?」
「はぁ、こういった理論的なことは景子先生に聞いてくれ。さて、話は終わりだ。詳しいことは現地で直接本人に聞けばいい」
「一つだけ聞いていいですか」
「なんですか」
「『魔法』というのは『崩壊(ディケイ)魔法』以外にもあるのですか」
「もちろんあるが、私も全ての種類を把握してるわけではない。『崩壊(ディケイ)魔法』はもちろん〈魔法〉とつく力には特徴があってな。それは原理が分かってる、かつ使えるのが一人だけではない、加えて汎用型武器でも行使可能ということが条件だ」
「つまり、超越者(エクシード)であれば誰でも使えればいいということですかね」
「そう捉えてもらって構わん」
「つまり、『崩壊(ディケイ)』というのはお前でも使えることができる。しかし、汎用型武器では、汎用型武器を必要としない、つまりそのエクシード・フォースを直接扱える者に比べ、圧倒的に弱い力でしか発動できない。加えて、さっき言った通り代償が大きすぎるが故、誰しもが使いたがるわけではないし、人気度でいえば最下位レベルだろう」
「はぁ」
「だが、『崩壊(ディケイ)』が魔法に登録されているのは紛れもない事実だから説明が楽で助かってる。一方お前の力に関しては情報がなさすぎるから魔法として登録できない。登録できないことは全くもって構わんのだが、うまく説明ができないし、私も分らないことだらけだ。全く困ったものだ」
俺は悪くないはずなのだが、こちらを若干睨みつけるような、呆れるような目に屈して、萎縮してしまった。
「魔法登録履歴は全て残っている。公安部外の組織が主に行っているのだが、履歴自体はこちらでも保管してある。そちらでは基本的に全て魔法に括られていて、エクシード・フォースと言っても通用するかわからん。こっちの技術部の連中が『魔法は科学的または技術的に証明、研究ができないものだ。よって魔法ではない』と譲らなくてな。公安ではそういった名前がついているが、向こうでは違う単語がでてくるかもしれん。それをも恐れないのなら行ってみるといい。場所は後程お前のデバイスに送っておく」
「はぁ、わかりました」
「では任務の成功を祈っている」
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