第13話 崩壊ー1ー
「来たか。では早速FAASの使用実験に入るぞ」
「わかりました」
「さて、須藤。隼人に使い方を教えてやれ」
「了解です。では早速、これが君のFAAS」
須藤さんから葦名から執行者(エンフォーサー)デバイスをもらった時と同じような箱をもらった。
中には例のごとく執行者(エンフォーサー)デバイスと瓜二つの端末が出てきた。
「前の実験のとき使ったプロトタイプFAASのデータはこのFAASのデータを入れたときに削除されるようになってるから。気にせずデータを入れていいよ」
「わかりました」
「・・・FAAS起動」
―――――フォース・アシスト・アジャストメント・システム FAAS 起動―――――
「データ通信開始」
―――――データを通信――――既存の同系統データを発見――――上書きします――――
―――――完了―――――
「終わったみたいですね」
「では、早速実験を始めようか」
FAASのデータ転送が終わると、俺は研究室の実験ブースに入り、エージェンシーを構え、準備を整えた。
「戦闘を開始」
俺の掛け声にFAASが反応した。
―――――フォースのアシストおよびアジャストメントを開始します―――――プリセットロード―――――全フォースの基礎数値をゼロにセット―――――
「行くぞ」
俺は葦名との戦闘、景子先生を暴走するロボットから守ったときの感覚を呼び覚まし、銃弾の創造にすべての力を注ぎこむようにした。
「倒れろ」
リボルバーの照準を目の前にある的に合わせる。
「発射」
リボルバーの引き金を引くと同時にけたたましい音が研究室内に響きわたり的には向こうを見透かせるような穴が開いた。
「・・・成功なのか・・・」
「うん。うまくいったみたいだね」
ついに、自分のフォースをコントロールできるようになったのか。そう思うと感動とは違う、特殊な感覚が自分を支配した。
「メディカル面も安定してるわね。とりあえず開発はこれで終了ってことかしら、司令?」
「あぁ、よくやってくれた」
司令もどこか満足したような表情を浮かべた。
「じゃぁ・・・せっかく隼人君のフォースが完成したことなんだから、隼人君のフォースに名前を付けようかしら」
確かに、自分のフォースの説明をするとき、名前がないまま説明するのは少し決まらない感じがするからいい提案かもしれない。
「・・・非制限創造(アンリミテッド・ブレット)・・・とか・・・?」
「・・・いいんじゃないか」
「私も!それでいいと思うわ」
司令も、景子先生も納得している。
(司令はめんどくさいから適当にしている気もするが・・・)
「じゃぁ、決定でいいかい、隼人君」
「は、はい・・・。じゃぁそれで」
「・・・なら、君のデータにもその名前で登録しておく」
と言い残し司令は研究室から去る準備をした。
「司令は忙しいからねぇ。今日も資料整理に追われるのかしら」
「いや、今日は任務の内容確認だ。今回の任務は隼人、お前に任せるつもりだ」
「りょ、了解しました」
「うむ。皆の努力を無下にしないように頼んだぞ」
景子先生や須藤さんの自分のFAAS研究のためにかけたリソースを無駄にするということだろう。司令からも期待されている。それを含め、裏切らないことを誓い敬礼した。
「・・・敬礼はしなくていいぞ。ん、まぁやりたいならやってくれていい。では私はこれで」
司令は研究室から去っていった。
「では、先生、須藤さん。自分も帰ります。ありがとうございました」
「あら、お礼されたのは初めてだわ。どういたしまして」
「まったく・・・かしこまられるのは苦手だって言ったのに・・・まぁ、どういたしまして」
須藤さんは少し恥ずかしそうに返してくれた。
「でも、隼人君。フォースが完全に完成したとは言えないからね。あんまり自分の力を過信し過ぎないこと。わかったわね?」
「はい。了解です」
「今回の実験はこれで終了だけど、今後も力の成長に貢献してあげられると思うから、いつでも頼ってね。この技術職人にもね」
「その呼び方は・・・もう直らないから無駄か。まぁ技術面ではサポートできるから、いつでも頼ってね」
「ありがとうございます。では自分はこれで」
その言い残し研究室を去り自分の家に帰った。
「あの時は言わなかったけど・・・なんか違うんだよな」
実はあの実験の際、葦名とともに戦った時、景子先生をロボットの攻撃から守ったときとは感覚が違うような感じがした。確かに成功は成功なのだし、実戦に十分通用するものとなったが、違和感というか、何かが引っかかる感じがした。それについて考えながら風呂に入ったり夕食と食べたりしていたらもう寝る時間になっていた。寝る時間になっても考えていると、任務の情報が届いた。
―――――新着の任務があります 確認をお願いします―――――
「レクイエムとは違う組織の弾圧、って任務ランクⅥ!?」
おいおいまて、任務ランクってⅦまでだったよな?葦名と挑んだ任務がランクⅤだったってことはそれよりも上の難易度ってことだよな・・・。なんかの間違いか・・・。
あのランクⅤのときの敵は強かった。いや異常だったといったほうがしっくりくる。おそらくこのフォースを授かってなかったら勝てなかった。もし授けられた力が違ったら、俺も葦名も屍になる以外、選択肢がなかっただろう。
「さすがに明日、確認に行くか・・・」
幸い、任務日まで時間はある。さすがにミスじゃないかと思った俺は明日、司令に直接聞くことにした。
「あぁ、任務ランクⅥで間違いない」
本部に出向き、司令に本当に任務ランクがあっているか聞いたところだ。
「ちょっと待ってください。まだ自分の力を完全に把握したわけではないですし、コントロールも自分の意志通り完璧にこなせるわけではないんですよ」
「非制限創造(アンリミテッド・ブレット)」という名だが、完全に自由な銃弾創造ができるわけではない。あくまで「非制限」というだけで今の俺の状態だと「自由」に創造できるわけではない。おそらく司令が言っていた真のエクシード・フォースの完成領域に達することができれば、非制限から自由に近づくのではないのかと思っている。
「・・・なぜこんな難易度の任務を俺に・・・?」
「それは君の成長のためだ。現に君は覚醒状態だったとはいえ、ランクⅤの任務をクリアしている。葦名が言っていた通り、上級超越者(エクシード)でようやく適正ランクの任務だ。それをクリアしたんだ。できるだろう」
「そりゃ、あの時は・・・」
「まぁ、安心しろ。今回の任務は私も同行する。加えて、私の命令によりもう一人の執行者(エンフォーサー)もこの任務にあたる。お前は特別だから除外するとして、現執行者(エンフォーサー)の中でも最強だ」
「最強・・・誰なんですか」
「祇園寺(ぎおんじ) 焉(えん)修(しゅう) という者だ。フォースの固有名称は『崩壊(ディケイ)』。エージェンシーは法器となっている」
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