第4話 疑問-2-

いろいろ話をしていたら学校が閉まる時間になった。

「そろそろ帰りますか。もう遅いですし」

「そうだね。じゃあ、また明日、葦名さん」

「その呼び方はやめてください。学校内ではそれでお願いしますが、一応私はあなたの補佐です。

それなのにさん付けは・・・」

「そうか、なら葦名でどうだ」

「・・・それでお願いします」


下校し、家について暇だったので漫画を読んでいると放課後、葦名にもらった通信機器から音が聞こえた。

「もう来たか」

――――――こちらは防衛省軍部戦略課特別国家反逆行為対策公安委員会司令部 エージェンシーを携帯し、その場で待機せよーーーーーーーーー

言われた通りリボルバーを携帯し待機した。

 ――――――これよりエクシード・フォースによるエリアジャンプを行う。――――――

エリアジャンプ、つまりワープということか。エクシード・フォースを身をもって体験するのは初めてだ。緊張していると、目の前が急に明るくなり真っ白になった。あまりのまぶしさに目を閉じた。目を閉じているというのに明るさが瞼を貫通してくる。しかし、その明るさは数秒でなくなった。おそるおそる目を開けるとするとそこは見たこともない空間だった。そして目の前には一人の女性がいた。その女性からはものすごい気迫のある気配を感じ取れた。

「来たな。七人目の執行者」

「私は防衛省軍部戦略課特別国家反逆行為対策公安委員会総司令の波零だ。私がゼロということになっている。普段は司令とでも呼んでくれ。君の名を述べよ」

「俺、いえ自分の名は和中隼人です。」

「隼人・・・わかった。まぁ、かけてくれ」

「しっ、失礼します」

緊張しながらも席に着く。

「早速だが、君のエージェンシーを見せてくれ」

と言われたので俺のエージェンシー、リボルバーを差し出す。すると司令の表情が変わった。

「銃か・・・しかもリボルバー型・・・」

「珍しいんですか」

「あぁ、銃はあまり見かけない、リボルバー型の銃なんて記憶が正しければ見たことはない」

「・・・とりあえず詳しいことをお伺いしても・・・?」

「そうだな」


「まずエクシード・フォースとエージェンシーについてだが、これはそれぞれ超越者に与えられし力、媒介者という意味だ。超越者に与えられし力。漫画やアニメの世界でしかないと思われている「魔法」に近しいものだ。媒介者、エクシード・フォースを行使する際の力の供給源から現実世界へエネルギーを転移させるものとされている」

早速意味不明だぞ・・・と思いながらも無理やり飲み込んでいる。

「超越者 何をもって超越者と呼ぶのかについては、本人にエクシード・フォースを使いこなせる素質があるかによって決まる。超越者はもとより持っている才能のようなもので・・・」

「うーん」

限界だった。意味が分からなすぎる。すると察してくれたのか、

「・・・さて、君はおそらく自分のエクシード・フォースとエージェンシーについて全く知らないだろう」

「はい」

「小難しい話はまた今度でいい。君の能力、私が見てやる」

「見る・・・ですか。でも何を見るのですか」

「私も一応超越者だ。私に与えられた力はオブザーバー、観測する力だ。この眼鏡が私のエージェンシーだ」

「それで何が見えるのですか」

「色だ」

「色・・・?」

「エクシード・フォース これを最初に使いこなした七人組がいた。初代執行者たちだ。初代執行者たちは襲い来る戦火から国民を守るためその力を行使し、人々を守った。かといって全員が攻撃的な力を有していたわけではなく、怪我をした人の治療のための力、未来予測をし避難させるために使った力、防御するための力など、いろいろな力を合わせて一つの組織として動いていた。その時初代執行者総代によって力に色が割り振られた」

「攻撃性の力 赤 治療系の力 緑 防御系の力 黄 予知系の力 紫 補助系の力 青とな」

「この色は『五原色』とよばれており、今存在するエクシード・フォースのもととなっている」

「なるほど、司令はその色で力の種類や特性を読み取るのですか」

「まぁ、そんな感じだ。とりあえず色を読み取るには『共鳴』という現象を引き起こさないといけない。君の中にあるエクシード・フォースをエージェンシーに流し込まないといけない」

「えぇっと、どうやって?」

「・・・ただ簡単に握ればいい」

「・・・あぁ、なるほど」

すごく単純すぎて呆気に取られていたがすぐにリボルバーを握った。

「さて・・・見るとするか」

司令が眼鏡をかけこちらを凝視する。しばらくして司令が小言のようにつぶやく。

「透明・・・」

「透明・・・もしかして自分には素質がないとか・・・?」

「いやそんなことはない。確かに『色』の実態はある」

「色の実態・・・?」

「色がある状態を絵具で染められた水だとすると、君の状態は何にも染められていない無色透明の水ということだ。素質がないものは水がないように見える」

「それって、どういう?」

「私にもわからない。色がないことはこれが初めてだ」

「わからない・・・。えぇっと、つまり自分がどういった力を持ってるかわからない状態で実戦に挑め、という解釈でよろしいでしょうか」

「・・・そうなるな。理解が早くて助かる」

「えぇ」

「でも安心しろ。君に素質がないということはない。それは私が保証する」

「それで、君の能力開放についてだが・・・能力開放について説明してなかったか」

「能力開放、超越者に与えられるエクシード・フォースは初めから使用可能な状態ではない。

力がいくつにも別れ体中に存在している。その断片に力の情報が入っていて、欠片が集まり一つになることですべての情報がそろい真のエクシード・フォースが完成し、開放できる状態になる」

「能力開放はどのように行うのですか」

「実戦に挑み、その経験で欠片がつながっていく。それがセオリーだな」

「・・・死ねと」

「そんなことはない。言いそびれたが一つの欠片と一つの欠片がつながるだけでも能力開放といえる。それらを重ねに重ねてすべての欠片が一緒になったときとてつもなく大きな力が完成するというだけだ」

「いやだから死ねと」

「なぜそうなる。はぁ、何のために補佐を送ったと思ってる」

「補佐はすでに能力を開放している人物から選んでいる。君の能力が開放できるまで彼女をたよるといい」

「ちなみに、能力の開放進捗状況とかはわかるんですか」

「あぁ、だが私にはわからない。だからほかの超越者に頼む必要がある。知りたくなったらこの公安委員会の医療部にいる景子先生に尋ねるといい」

「そろそろ時間だな。君を元の場所に戻す」

「ちょっと待ってください。再度ここに来たい場合、どうすればいいんですか」

「その耳についているものは飾りか。それにここにワープしたい旨を伝えろ。そうしたらこちら側の承認制ではあるがここに来れる」

「わかりました」

「詳しいことは補佐に聞いてくれ。では戻すぞ」

その声が終わると同時に来た時と同じ光に包まれ目を開けるころには自分の家にいた。


「無色透明・・・まさかな」

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