第3話 疑問-1-

「防衛省軍部戦略課特別・・・え?」

「簡単に説明すると、私は防衛省の人間で、国家に反逆する行為の中でも特別なものに関して対策を講じる組織の補佐として今動いています」

「でも公安って言ったよね。公安は内閣府の直轄だったと思うんだけど」

「そうですね。しかし私たちは防衛省が所轄する組織に属します。さてそれはなぜか。理由は単純です。国外からの攻撃もあるからです。国外からも含め国家を揺るがす大事に対して弾圧を行い、その際、必要であれば違法行為も平然と行うため公安と呼ばれています」

「補佐・・・ということは俺を手伝ってくれるということか」

「執行に関することだけですがね」

「執行・・・あぁっもうっ。まだ聞きたいことが山ほどあるけど、もう夜も遅いし明日にしよう。それじゃぁまた明日」

「一つだけ、この話は絶対口外しないでください。国家機密以上の話ですから」

「あぁ、分かった」

とだけ返して家に入った。

「あら、隼人、どこか行ってたの?」

「ううん、何でもない。ちょっと涼んでただけ」

あぁ言われたばかりだから少しばかりビビってしまったのは内緒だ。

布団に入ってずっと考えていた。

「執行」・・・おそらくこれはあの男の言ってた「使命」に関係がある。加えてエージェンシー、武器の「見た目」と言っていたくらいだから、おそらくあのリボルバーはただのリボルバーではないのだろう。

といろいろなことを考えていたらいつの間にか寝落ちしてしまっていた。


 翌日、いつものように学校に行って、いつものように学校生活を乗り切った。いつもと違うことといえば放課後だろう。俺は屋上に葦名さんを呼び出している。用件はもちろん昨日の続きだ。

 下校前のホームルームが終わった後、俺は人目を気にしながら屋上へ向かった。すでにそこには葦名がいた。

「用、ということですが、昨日の続きですかね」

「察しがよくて助かる」

聞きたいことが山ほどあるが、まずは・・・

「執行ってのはテロリストを弾圧することを指すんだろうが、執行の命令は誰がするんだ」

「基本的に公安委員会のトップ、ゼロです。ですがゼロからの命令で動くだけではありません。執行者独断で動くこともある、というかほとんどはそうです」

「執行に伴って必要であれば違法行為も平然と行う、と言っていたが違法行為はどこまで許されてるんだ」

「必要であれば、ですから状況にもよりますが生かしておいたら危険と判断できる場合は殺人も許可されています。どこまでという質問に関してはどこまでもという返しが一番正しいですね。ただ、過剰違法行為は裁判の対象となる可能性があるのでお気をつけて」

「なるほど」

続けて質問をぶつける。

「昨日エージェンシーについて、いろいろあると言っていたが、それってつまり執行者は俺だけじゃないということか」

「そうです。執行者は同時に七人存在します。執行者の中には序列が存在し、序列は執行の内容や実力によってきまり、序列最高位は総執行の際の司令塔となります」

「総執行?」

「執行は基本的に執行者全員集まって行うことはありません。しかし敵組織の規模などによってはゼロが執行者を招集し、全員で任務にあたる総執行が行われることがあります」

納得して数秒黙っていると葦名さんから話を切り出された。

「・・・もうじき招集がかかると思います。その時は必ず行ってください。おそらくそこであなたのエクシード・フォースとエージェンシーについての説明があると思います」

「ちなみに、招集ってどうやってかかるんだ?」

「招集はこちらの通信機器より行われます。耳につけておいてください」

「えぇ、でもこんな大きなものつけてたら一瞬でばれそうなんだが」

「それについては安心してください。この通信機器にはトランスパレンシー機能が搭載されています。防衛省の技術部の最新技術で、いわゆる透明化ですね。透明になったといっても実体はあるのでどこかに引っ掛けたりしないでください」

言われた通り耳につけた。すると葦名さんから手鏡を差し出された。

「しっかり透明になっていますね。見ますか?」

手鏡を受け取り見てみる。

「本当に透明になってる。すごいな」

「これで安心でしょう」

「そうだな」

と安心し、葦名さんに手鏡を返す。

「ちなみに俺に授けられたエージェンシーについてなんだけど・・・一度見てほしいから・・・」

とつぶやきながらリュックの中からリボルバーを取り出す。

「ちょっと・・・!なに学校に持ってきてるんですが!」

「そんなに驚くな。安心しろ。この学校に手荷物検査はないし、だれにも見せてない」

「まったく、ばれたらどうするつもりだったんですか」

と怒られた。まぁ当たり前か。

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