第2話 補佐着任
学校も終わり、家に帰った。相変わらず、自分の部屋の机の引き出しには昨日からリボルバーがある。
[リボルバー]、日本の警察が使用しているのでドラマや漫画、アニメで一度は見たことあるとおもう。アメリカの警察が使ってるようなカートリッジ式のオートマチックとは違い、自分で一発一発、銃弾を装填するタイプで、最大五発しか同時に装填できない。日本のリボルバーのほうが操作は簡単らしいが、銃を扱ったことがない素人にとってはどうでもいいことだ。
「弾がない以上、撃てないと思うんだが」
そう、この銃には初めて握った時から銃弾は装填されておらず、自分の手元にも銃弾はなかった。
一体何なんだ、と思いながら途方に暮れながら、様々な仮説を考えた。
一つ目、自分の役目が来たときあの時会った男が出てきて自分に銃弾を授ける。
我ながらいろんなことにおいて合理的な仮説だと思ったが、なぜ自分に銃だけを預けて消えたのか、という点において疑問が生じる。自分に役目が生じたときに銃と一緒に自分に授ければいいだろう。ということでこれは違う、と考えた。
二つ目、気づいたときに自分が銃弾を持っている。
気づいたときにはリボルバーを握っていた自分のことだ、あり得ないことはない。と思ったがなんか違うな、と感じてしまった。
途方に暮れながら引き出しから出したリボルバーをボーッと見ていると、急に変な感覚が襲ってきた。
「これは・・・今日の朝のホームルームの時の感覚と同じ・・・!」
と感じた瞬間察した。今、自分の近くに葦名さんがいる、と。そう思った時にはすでに体が動いていた。部屋の窓を開け外を見る。案の定というべきだろうか、家の玄関前に一人の女の子がいた。暗くて顔は視認できないが、葦名さんだ、ということは感覚でわかる。
「やっぱり、葦名さんだったのか」
不意に言葉が漏れてしまった。葦名さんは自分の漏らした言葉に反応する。
「やっぱり・・・ですか・・・。やはりあなたが執行者なのですね」
葦名さんが何かを確信したのと同時に、自分も確信したことがある。間違いなくこの少女はリボルバーと関係がある、と。それはそうとして「執行者」ってなんだ、なぜ葦名さんはここにいたのか、と数々の疑問が浮上した。
「えぇっと、執行者って何?」
一応、何も知らない感じを装って話す。
「執行者とは、ですか。こんなことを言っても信じていただけないかもしれませんが聞いていただけますか?」
信じるも何も、今の時点で信じられないことが起きている状態なのだから信じる以外選択肢がない。
「あぁ、信じる」
葦名さんは数秒間沈黙した後、口を動かした。
「今、この世界は非常に安定していて、平和のように見えます。しかし裏では今の社会状況に不満を抱く者達が結成した組織が世界各所で暴動を起こそうと動いています」
「いわゆる、テロリストっていうやつか?」
「厳密にいえば違うのですが、そういった認識で結構です」
と返された。厳密にいえば、の言葉の意味がよくわからなかったが、今は聞かないことにする。
「ほとんどの組織は国家が有する警察や対抗組織によって弾圧され、その活動を停止します。しかし、ごく少数ですが、そういった国家組織すらも弾圧できない組織があります」
「国家ですら勝てない組織ということは、相当な軍事力を有している、ということですかね」
「おそらくあなたが思ってる『軍事力』で考えると、あなたの見解は間違っています」
「どういうこと?」
「私の想像ですが、あなたは『軍事力』のことを兵器の数や軍に属する人間の数ととらえているでしょう」
「まぁ、そうだが、普通そうだろう」
「確かに軍事力とは、と聞いたらあなたのような考えを持つ人が大多数だと思います。そのような軍事力で測ってみると、国家ですら勝てない組織の軍事力というのはとても小さいです」
「つまり、ただの軍事力で考えてはいけないと」
「そうです。」
「だったら、どのように考えたらいいんだ?」
「そうですね・・・、エクシード・フォース(超越した力)をどのくらい持つか、と捉えていただいたら結構です」
「エクシード・フォース?なんだよそれ」
「知らないのですか?あなたにも授けられたはずですが。エージェンシーとともに」
「エージェンシー、何それ」
「それすらも知らないのですか。うーん、授けられるエージェンシーには様々ありますが、どれにも共通して武器の見た目をしている、という特徴があります」
と言われて真っ先に思い浮かんだのは当然だが、「リボルバー」だった。この少女がここまで知っているのなら、何も知らない感じに装う必要はないと感じた。
「確かに授かった」
「あなたに授けられたエクシード・フォースは少なくともそのエージェンシーに関係があるものです。話が逸れましたが、執行者とはそういった悪行をしでかすであろう組織を弾圧する者のことです」
はぁ、なるほど、と思いながらとある一つの疑問が浮かんできた。逆にこれまでなんでわかなかったのかが不思議なくらいだ。
「ところで、君の正体は?」
「あぁ、そうですね。申し遅れました。私は防衛省軍部戦略課特別国家反逆行為対策公安委員会所属の葦名芽衣です。これよりあなたの執行の補佐に着任いたしました」
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