18・さぁ、働け
先程、昨日の投稿分と同じ内容の話が投稿をしておりました。ご指摘頂いた方、ありがとうございます。
改めて本日分を投稿致します。失礼致しました。
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皆が朝食を摂り終えた辺りで声を掛ける(チビ達は流石にまだ起きて来ない。)。菊婆は早々に見張りに向かってくれ、祥猛と弥彦達は既に山に入った。こちらも動き始めよう。
「八郎。」
「はい。」
まずは八郎を呼ぶ。
「昨日言った通り、満助を連れて飼葉の刈り取りを頼む。」
「分かりました。」
「それと馬借では馬の交配も行っているのか?」
先程気になった事を聞く。
「あぁ、子馬を育てて駄馬を村に売るのは馬借の結構大きな儲けですから。」
これは期待大か?
「お主も出来るのか?」
「繁殖用の馬は俺達が荷を積む馬とは分けられているんです。仕事もそれ専門の奴が居るんです。だけど種付けの時期とか子馬が生まれそうな時期は忙しいから手伝いに借り出されるんで、凡その所は分かってると思いますけど。」
「胎に仔の居る牝馬は仕事はさせられるのか?」
「人と同じですね。無茶させなければ大丈夫でしょう。」
「そうか、それも頭に置いて西の草原を見て来てくれ。」
「分かりました。おい、行こう。」
八郎は満助に声を掛けると草刈り鎌と縄を持って出かけて行く。
「あ、馬は荷運びに使うから連れて行かないでくれよ!」
「分かりましたー!」
さっさと進んで行ってしまった八郎にそう声を掛ける。
「茂平、千次郎。」
「…はい。」「はい!」
次は工作班だ。
「取り敢えず腰掛けの部分だけでも早めに御婆の所に届けてやってくれ。」
「分かりました。」
「それから、二人は三和土は出来るか?」
「三和土ですか?まぁ、一応一通り仕込まれてますけど…この辺と遠濱の方じゃ土が違うかもしれないからなんとも…」
千次郎がそう自信無さそうに答える。茂平は黙って首を振っている。
「そうか…合間に近場の土を見ておいてくれ。それから三和土は水に濡れても大丈夫なのか?」
「濡れて崩れちゃわないかって事ですか?」
「そうだ。濡れるって言うか水の中に沈めたらどうなる?」
「それは…どうだろう…濡れると多少水は吸うんですけど崩れたりはしませんね。流石に水に沈めた事は無いんでちょっと…」
「そうか…それから…」
その後、いくつか思いついた事を相談するが、結論として石灰が手元に無いので用意出来てから検証すると言う事になった。そりゃそうだ…ちょっと先走り過ぎた様だ。
「宗太郎。」
「は、はい!」
気負った感じで宗太郎が飛んでくる。
「お前は子供達を纏めて団栗や栗を拾って来てくれ。」
「は、はい…」
悔しそうな表情でそう答える宗太郎。大人に混じって仕事がしたいのだろう。
「どこに採りに行くつもりだ?」
「子供だけなら、西の川の上流がいいと思います…」
「よし。では、チビ達の支度が済んだら一人一つ背負籠を背負って行ってくれ。良いか、昨日まで大人も一緒にやっていた仕事を子供だけでやるんだ。村の食料が掛かっている、お前の責任は重大だぞ。それから、チビ達に決して怪我をさせるな。それから無理もさせるなよ。」
立て続けに注意点を宗太郎に伝え過ぎたか目を白黒させている。
「大丈夫です。私がちゃんと宗太郎の面倒も見ます。」
そう答えたのは宗太郎ではなく、後ろで様子を伺って居た春だった。
「春か。よし、頼んだぞ。チビ達の籠には団栗や栗を入れると重すぎるだろうから、代わりに落ち葉を詰め込んで持って来てくれ。」
「落ち葉ですか?
すぐさまこちらの意図を察してそう聞いて来る。あれ?宗太郎より…いやいや、この年代は女の子の方が成長が早いだけだきっと。
「そうだ。ここと田畑の間辺りに竹で囲いを作っておくからそこへ放り込んでくれ。」
「分かりました。」
春は素直に頷いた。
「御坊。月が子供達を連れに戻ったら今行った場所へ案内して下さい。」
「畏まりました。」
「それと万が一鐘が鳴ったら竹林まで知らせに来て下され。」
「はい、そちらも畏まりました。」
「よし、残りの者は道具を持って出発だ。鋸、鉈、斧は有るだけ持って行ってくれ。それと縄も頼むぞ。利吉、先導してくれ。」
利吉の先導で竹林に着く。かなり日が入る疎らな竹林だ。かなり伐採されている感じだ。切り過ぎるといざと言う時に切り出せなくなるな。ここで採れる筍も重要な食料になるだろうし。取り敢えず三年目の竹を中心に切り出して貰う。
「切り出した竹は枝を払って節六つで切ってくれ。」
一節大体一尺なので、約一間の竹が揃うはずだ。
一間の竹が十本程揃った所で数人でお堂から田畑に斜面を下った辺りまで運ぶ。ここに一間四方の囲いを作り堆肥を作ろうと思う。
十本ずつ互い違いに端が少し飛び出すように平らに束ね壁とする。これを四つ組み合わせて端を縛り合わせる。それで箱型は組めたが一応角の内側に残った竹で杭を打ちしっかり地面に固定する。
そこへ富丸を抱いた春が稲と糸を連れてやってくる。チビ二人は大人用の背負籠を背負ってヨロヨロと歩いている。
「早速、落ち葉を運んで来てくれたのか。」
「うん♪」
ニコニコと答える稲に対して糸は稲の影に隠れてしまう。
「よしよし、大助かりだ。この中にざばーっと入れておくれ。」
「はーい♪ねぇねおろして。」
稲はそう言うと春に籠を降ろして貰う。それを今度は抱えて囲いの中に入れようとしたのだが…
「とどかない!!」
なんと、囲いの高さが稲の背丈程になっており持ち上げた籠が囲いを越せない事が発覚した。一つ年下の糸は考えるまでもないだろう。
大急ぎで竹を短く切って縄で束ねて階段状の踏み台を用意する。二人はヨタヨタと籠を抱えて台に登ると籠をひっくり返す。
「ちょびっとだ…」
囲いの底に小さな山を作る落ち葉を見て呆然とする二人。
「少しずつで良いから運んでおくれ。」
そう言って、俺は二人の頭を撫でてそう伝えた。
「春、もし月が戻って来て移動する先がチビ達には厳しそうならここの近場から落ち葉を運んでくれるか。」
「分かりました。」
そう言うと四人は森へ戻って行った。
そう言えば、婆ちゃんは腐葉土作る時ブルーシートを掛けてたんだよなぁ…囲いの底にちょびっと溜まった落ち葉を見ながらそう思い出す。
あれは、保温の為だろうか。それとも雨除けか。両方かな…蓋は考えないといけないな。布は論外だし、最悪蓋も竹で作る事になるな。これは工作班に相談だな。
切り出す竹の数が少なかったので囲いを二つ作ったところで竹が尽きてしまった。まだ昼前だ。
仕方無いので馬を連れて川向うの大きな竹林へ向かう事にする。柳泉に伝えてから門を潜る。
「御婆、向こうの竹林に行ってくる。鐘の音が届くかどうか試したいから竹林の前で俺達が手を振ったら鐘を力一杯叩いてみてくれ。」
「はいはい、行ってらっしゃい。」
結果的に鐘の音はしっかりと竹林の手前までは届く事が分かった。
但し、中に入ると竹のさざめきや作業の音で掻き消されそうなので外に一人、馬の見張りを兼ねて人を残す事にした。
「確かに大きな竹林だ。これならいくら切っても大丈夫だな。切ったらさっきと同じで節六つで切る物と十二で切る物に分けてくれ。六つの物は束ねて馬に積む。十二の物は切った端から担いで運んでくれ。運んだ竹は門の脇に積んでくれれば良い。」
そう伝えると作業に掛かる。
俺は、竹を縛っては馬に積む作業をしながら全体を見る。日暮れまで作業を続けてかなりの量の竹を切り出す事が出来た。
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