第2話 また二人がいいの
香織と知り合う前、私は自覚していなかった姉への恋に、失恋することで気づいてしまったことで狼狽えた日々をしばらく過ごした。
姉が高校を卒業し、私が高校2年生になったあたりから、私が姉といる時間はだんだんと少なくなった。家で一緒にいる時間、私はずっと恋慕の目で顔で姉を見ていた気がする。それに気づかれんとするから、一時期姉に甘えることも素直に笑うこともできなくなっていた。ま、それもほんの一時期だけど。
そろそろ大学進学を考えないといけなくて、叶わない恋と相まって私を憂鬱にさせた。だから、あんまり良い性格をしていなかったと思う。他人に対して愛想が欠けていた。
「今の私、本気でブスじゃん。顔だけじゃなくて心までブスだ。。」
ある日、鏡を見てそう気づいた。親からもらった表面だけで評価され続けた反面、私は素直でもなく愛想が良いわけでもなく、ただのシスコンでしょと。
そんな時、ふと姉に聞いてみた。
「ねぇ、あの子とはうまくいってるの?」
私の知っているあの子と。彼女と。私の特別なお姉ちゃんは幸せに付き合っているのだろうかと思ったまま聞いてみた。
「あ、ちょっと前に別れたんだ。」
え、 え? そうなの?
単純に、嬉しかった。それが私とお姉ちゃんの関係をなにか進めることにつながるワケでもなかったのに。
「また、私がお姉ちゃんの特別に戻れる。」
そう思うと、特別な子に戻らなくては。お姉ちゃんが好きになる私に、、、
短絡的だったけれど、私は元のベースは悪くないから、磨けば良いんでしょって。まず美容室に行って髪を伸ばす予定でカットとカラーをしてもらった。
その後は服、アクセ、化粧品、、と形から入った。自分でも分かりきっていたことだけど、変化はすごかった。私は卒業したお姉ちゃんの代わりに学校の華として一躍トップに躍り出た。
「雑誌モデルやりませんか?」
大通りで声をかけられて、自分磨きにテンションが上がりまくっていた私は、警戒心もなく二つ返事でその誘いに乗ったんだ。
その頃から私はまた、お姉ちゃんに甘えるようになった。前より過剰に。
「お姉ちゃん、今日一緒に寝ようね?」
「お姉ちゃん、良い匂い。。なんの香水?」
そんなふうに言って、後ろから抱きついては、髪や首筋に顔を埋めて匂いを嗅いだり唇を押しつけていたんだ。
そんなことしてたら、どうなると思う?
本気で止まらないくらい好きになっちゃってた。
だから、私は2つ、勢いづいて失敗してしまった。
一つ目は、お姉ちゃんと寝ているときに、横向きに反対を向いて寝ているお姉ちゃんの脇から両手を回して抱きしめた。そこまでなら良かった。だけど私はお姉ちゃんの着ているTシャツの下から手を入れて、柔らかい胸に手を伸ばしてしまった。
「ちょっと!ダメ!」
驚いた姉に怒られたけど、そのときはまだ妹の度を超したいたずら程度の怒られ方だった。だから私は姉の注意を本気で受け止めていなかったと思う。
そして、あの両胸の柔らかさと、温かさ、、、。ああ、今思い出すだけでも胸が締め付けられる。あのときほど強く姉と癒着してしまいたいと感じたことはない。
そしてある日、いつものように優しい姉に高揚した私は、正面から飛びついて姉の首に手を回して抱きついた。またこうしていられることに興奮していたんだと思う。
「お姉ちゃん・・・。」
私は姉の目を見つめて顔を斜めに傾けると、断りのいらない恋人のような気分で。 ちゅっと口づけをしてしまった。ほっぺとかじゃなく。唇にだ。
「ダメ!本当にダメ。」
それはいけないと。今度は本当に怒られてしまった。それからしばらく、姉は私が距離を超えすぎないようにとても警戒していた気がする。いや、明らかにしていた。
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