第4話 良かったんだ
あれから私は、あの子が勤めていると言っていたホームセンターには一度も行かなかった。こどもの頃にあんなに好きだった人。失恋で泣いた顔を見られて、独りになった弱り切った私が、またあの子を好きになるなど勘弁して欲しかった。
だって、あの子はもう別の人のものだし。
別れたあの人とは、どちらからも連絡しなかった。
いつか連絡が来るかも知れないと、数ヶ月は連絡先を消せなかった。でも私から連絡することはなかった。そして彼女からもなかった。本当に終わったんだと思えるまで時間がかかったけれど、連絡先を消すことで自分の中では終わらせた。
3年後。
私は別の誰かを見つけられていた。
今、私の隣に居て、機嫌の良さそうな可愛い顔をして、、笑って話している彼女だ。今日は二人で都心に出て買い物に出かける予定だ。二人で住む部屋の必要な物を買い揃えに。
今の私は、とても幸せだ。
二人で駅まで歩く途中、あの公園の前を通った。今はもう、あの泣いたベンチは撤去されていて、なんだかホッとした。
歩いていると、あの子が居た。あそこの家だったんだ、、。
旦那さんかな。ちょっと大柄な優しそうな笑顔の人。そしてあの女の子。大きくなったな。二人目のこどもが生まれたようだ。あの子が抱っこしている。4人は車に乗り込んでこれからどこかへ行くようだ。
あの子も幸せそうだな。ああ、気づかれなくて良かった。
「なに?どこみてるの?」
「ううん?ぼーっとしてただけだよ。」
「えー。ちゃんと二人で使うもの選んでね?」
「もちろん。楽しみだね。」
そして、4つ離れた都心の駅へと電車に乗った。今日はきっと、3,4つくらいの大きなデパートをまわるだろう。疲れそうだけど構わない。
駅について、まずは食事をしようとキョロキョロしながら歩いていると、
あの人が居た。
なんて日だろう・・・。別れたあの人がいた。
あの隣に居る女性は友達だろうか、それとも新しい恋人だろうか。ほんの少しだけ胸が痛んだ。
笑っている。ちょっと距離が近い気がする。彼女なのかも。
すぐに彼女たちは角を曲がり、私はその後ろ姿を数妙だけ見送ると、隣に居る彼女の手を取って握りしめた。
「? 珍しいね、外で手を繋ぐの。」
「うん。今日は楽しみがいっぱいで嬉しくて。」
「えー、かわいいこと言うんだね。」
そう言って、ギュッと手を握り返して、大好きな彼女が笑っている。
うん。笑っている。
私も笑っている。
あの子も笑ってた。
あの人も笑っていた。
良かったね。
良かったね。
本当に良かったね。
私も良かった。
「ね、私と出会って良かった?」
「どうしたのぉ?もちろんよ。あなたは?」
「うん。良かった。ありがとう出会ってくれて。」
「なによぉ。笑 あなたも出会ってくれてありがとうね!」
そう、そうだな。
あれで全て、良かったんだ。
【GL】二人がいいの4 私といつか出会う誰か 葉っぱ @gibeon
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