第3話 消しちゃった
ああ、今度こそやってしまった。
好きすぎてわがままばかりをぶつけた。いつしか引っ込みがつかなくなって、自分自身が麻痺してしまっていた。いつからだろう。まるで私が被害者で、あの人が加害者のような気持ちになっていた。
あの人がわからないせいで、なにもしてくれないせいで、私がこんなに愛しているに・・・と思っていた。
何度別れを切り出しても、あの人は理解を示そうと、やり直そうとしてくれたのに、私は別れを切り出すことがなにかあの人の気持ちを確かめる手段のようになってしまっていた。
「もう無理。」と私が泣きじゃくったとき、彼女は差し出した手を下におろして、諦めたように言った。「そうだね、もう無理だね。」
どこかまたやり直せると思っていたけれど、荷物は送ると言われた。鍵もお互いに返し合った。今日が最後だと確認するように、あの人は今のうちに話し合っておくべきことを考え込んでいた。
「じゃあ。ごめんね、なにも出来なくて。ありがとう。」と言って、彼女は本当に去ってしまった。
もう、取り返しがつかないと1時間、2時間と経っていくうちに嫌でも気づいた。
「あ、ああ、あああっ・・・!どうしよう・・・うっ、どうしようっ!!!」
どうしよう。動けない。追いかけることも、電話をかけることも出来ずに嗚咽した。
だって、3年も付き合ったのに!一緒に住むこともあの人は慎重にと言って・・・。私たちは結婚とかそういう形としての守りがないのに!一緒に居ないと!と・・・
責めすぎた。
「ごめんんっっ!!ごめん、なさいっ!ひぃ、くっ・・・」
後悔しても遅いと、誰かが言うように外が暗くなった。
あの人はもう本当に、私と二人でいることを諦めてしまった。
私が彼女の献身を、1つ残らず、消してしまった。
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