第4夢 死の魔眼

帰ってからは2人でオムライスを食べて、ふかふかの布団で眠りに堕ちていった。



***



起きてから朝食を作ろうとしたら、卵をきらしていたので、最寄りの村へ貰いに行くことにした。

最寄りの村には魔女嫌いな人はいるが、優しくしてくれる人の方が多い。

特に私には何故か、親切なのだ。

そして、その親切には憐れみの視線もある。

憐れみだろうが貰えるものは貰う!

それが1番、良いのだ。

湊華を起こさないように家を出る。

最寄りの村には、仲の良い同い年くらいの男の子がいるのだ。

その子は人間をじゃなくて魔族とかいう種族らしい。

内緒だって言いながら、そう教えてくれた。

よくお使いのついでに遊んで帰った。


「今日はどうやって遊ぶのかな♪」


胸を弾ませながら村への道を歩いて行く。

でも進みながら見えてきたのは、燃えている村だった。

息をきらせながら、ひた走る。

なんで、なんで、なんで?!

なんで村が赤に染まっているの、なんで村が燃えているの。

村の上にはドラゴンが2匹。


「とうよ、冬よ……冬宵!!」


たった1人だけの友達のためだけに走る。

やだ、やだ、やだよ……!

あの時みたいに失うのはやだよ!!

あの時?

ふと歩みを止める。


「あの時って何……?」


私は本当の親を知らない。

気付いた時には叔母さんに引き取られてて、その後に捨てられてから湊華に拾われた。

ふと我に返る。

そんなことを考えている場合じゃない。

早く、みんなを助けないと!



***



村の入り口に着くと、そこは……。


「助けて、やだ!」

「嫌だぁ、死にたくない!助け……」


地獄と化していた。

誰かの断末魔。

誰かの潰れる音。

ここから逃げたい、帰りたい。

今なら見なかったことに出来る。

本能が引き返せと警告をしている。

でも戻ったら……


「後悔、したくない……」


勇気を振り絞って、炎の中に入っていく。

木と肉の焦げる匂いと、血の匂い。

ドラゴンが人間を貪っている。

そんな五感からの情報に嘔吐しそうになる。

ドラゴンに見付からないように、村の中央部の噴水広場に向かう。

いつも冬宵とはそこで遊んでいた。


「……冬宵」


靴が脱げようと、いくら転ぼうと前へ進む。

私には、それくらいしか出来ないから。

嘔吐しそうなのを堪えて、ひたすら走る。

噴水広場に着くと、見知らぬ大人の魔族に冬宵が抵抗していた。


「冬宵を離せー!!」


そう言って、冬宵の近くにいた1人に飛び掛かる。

が、抵抗も虚しく地面に叩きつけられる。


「奏!!」


どうやら頭を打ったようで、意識が朦朧とする。

でも……


「冬、宵を……かえし、て」


そう言うと片目に傷を負った魔族の1人が剣を抜き、私に近寄ってきた。


「やめろ、やめてくれ!」


冬宵が私に手を伸ばしてきて、私も冬宵に手を伸ばす。

片目に傷を負った魔族は伸ばした手に剣を突き刺す。


「あ、ああぁぁぁぁ!!」


痛い、痛い痛い。

誰か、助けて。

そんな思いも虚しく、手に突き刺さった剣はどんどん傷を広げていく。


「いやああぁぁぁぁ、やめてえぇ!」


片目に傷を負った魔族は何も話さず、ただ私を見下ろして顔に笑みを浮かべながら傷を広げていく。

痛い、やめて、苦しい、嫌い……助けて。


「奏ぇー!!!」


冬宵の声が聞こえる。

やだ、死にたくない。

まだ、生きていたい。

これは言って良いのか分からない。

でも毎回、夢に出てくる呪いの言葉。


「……っ桜の前で、散っちゃえ!!」

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