第10話

様々な人が国会議事堂周辺で倒れている


多くのタッグだった者達が亡くなってしまった


俺は立ち尽くしながら残酷な現場を眺める


ーーそうだ、弟は?


「悪い龍鬼‥弟を探しに行ってくる」


「ああ‥この状況だしな‥」


龍鬼と別れて俺は国会議事堂周辺を散策する


何処だ‥隼人‥


ふと泣き叫ぶ聴き慣れた声が遠くから聞こえた


「隼人の声?」


思わず声の方向に向かった


そこで見たのは泣きながら

[神官クレリック]を天宮に使っている


ーーけれど


「隼人‥天宮は‥もう無理だ」


俺の見た天宮は血が溢れ過ぎていた


「隼人‥使わない方が‥」


そう隼人に向かい告げる俺の声に


「‥本当に、そう思ってるんだ?」


何処からか聴き覚えのある声が聞こえた


死んだ‥と思っていた


見覚えのある‥見知った顔が俺の前に現れた


「どうして‥」


声にならない声が思わず出てしまった


「死んだと思ってたのか?

‥悪かったな生きていて」


笑いかける懐かしい友の姿


‥そう俺達の目の前に現れたのは


死んだとして国が管理するリストからは消され


俺達が行方不明として認識していた誠の姿だった‥

「誠‥どうして‥」


現れた親友の姿に思わず驚いてしまった


「‥死んでなくて悪かったな

俺も‥そして‥そいつも生きてる

なのに‥どうして殺そうとするんだ優」


そう悲しそうな顔で俺に問いかける


ー一良かった‥と思った


けれど


ーーだけどな


「‥ふふっ‥あはははっ

そうだな‥もう良いぞ隼人」


「え〜もう終わり?なんだ‥つまらない

君もに騙されていたんでしょ?」


そう微笑みながら俺達は誠に言葉を返した


「‥やっと本性を出したか

今まで騙していた癖にっ!」


「悪いな‥騙すのがの役目だしな

あ〜瀕死状態の彼天宮 武蔵タッグだった彼新堂 龍鬼には悪いけどな

‥お前も俺の考えたシナリオ通りに

騙されているんだよ誠」


「‥嘘だろう‥そんな筈は‥」


「ふふっ‥良い情報を1つ教えてやるよ

天宮武蔵、新堂龍鬼の2人だった

生き残るのは4人の方が都合が良かったからさ‥

誰にするかは仲間でも揉めた」


「兄さんが君と月城先輩を生かしたいって

言ったから本当に困ったよ

侵略者にも神にも死なせない程度に

生かして殺すのは難しいから

僕や周りのスキルで支援してた訳」


「‥で、お前は裏切っていたつもりだが

俺のシナリオ通りに正義者ヒーローだったって事だ

ヒール正義ヒーローになる事もあるし正義ヒーローヒールにもなる

つまり英雄なき場に悪もなしってな

俺が書いたシナリオで‥お前の役は

俺達の情報を本当の英雄ヒーロー

武蔵と龍鬼に伝える事だな」


「俺と一緒に裏切っていた筈の律や凛と司は?

彼らにも騙されていたのか!?」


「ああ‥気になるのソコかよ‥

教えてやらねぇよ‥お前にはな

じゃあ‥で正義側で頑張れよ」


そう吐き捨て俺は隼人と共に

国会前から立ち去るのであった‥


正義と真実は常に英雄側に


悪と嘘は常に影の悪役側に


神は彼らの選択を、どう思うのだろうか?


ーー神のみぞ知る


彼が[詐欺師フェイカー]に

選ばれるに相応しい人だという事を

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