第41話 レイカとビャクヤ
「ふうん、ヨバラズには商売で行くんですね?」
「はい、私は炎の魔法を使う
タクミはビャクヤと楽しそうに話している。
と、レイカの目にはそう映る。実際は単に世間話をしているだけだ。タクミは単に人助けをしたとしか認識していない。時折りビャクヤの露わになった白い肩や首すじに目がいってしまうけれども、深い意味のある訳もなく——。
「えっ、炎の魔法? すごいな見てみたい」
驚くタクミにビャクヤは柔らかく微笑んだ。
「魔法が珍しいですか?」
「はい。僕のいた所には無い現象ですから」
「まあ、魔法の無い所からいらしたんですか?」
驚きつつもビャクヤはちらっと後ろを歩くレイカに目をやる。その目は魔法も無い田舎から来たのかと言っていた。
「おい、お前! うちの村を馬鹿にする気か?」
さすがにレイカも怒りを口にした。
「あら、嫌ですわ。私何も言ってませんわよ」
「レイカ、彼女は僕の事を言ってるんだよ。僕は魔法の無い所から来たから——」
タクミがビャクヤを
なんでタクミはこの女の心根に気が付かないのか——!
「炎の御力を開いてもらったと言うなら、それは始まりの村のエナ婆の御力だろう? 私の村はその始まりの村だぞ!」
「ああら、あの村の方ですの?
どうも女性二人の雲行きが怪しい。
お互いにつんけんしてぶつかり合うのだから始末に追えない。
「この——!」
レイカが長槍を握る手に力を込めた瞬間、ビャクヤは急に足元をふらつかせてタクミに寄りかかった。
「……すみません。やはりどこか蛇に咬まれたのかも……」
「大丈夫ですか?」
ビャクヤを支えながらタクミは心配そうに彼女を見た。
「タクミ! あそこにいた緑の蛇は毒は持ってない!」
「でも」
「でも、じゃない! タクミはなぜわからないんだ。この女は何か企んでいる」
レイカはとうとうビャクヤを指差しながら思っていた事を吐き出してしまった。タクミはレイカの剣幕に驚いて目をぱちくりさせる。
「あの……レイカ? どうしたんだ?」
「ど、どうもしてない! ただこの女は——」
そう言ってビャクヤを見れば、レイカの怒鳴り声に怯えたようにタクミの陰に隠れている。そればかりかタクミの腕に縋り付いている。
その弱々しい演技にレイカは驚いて口をぱくぱくさせた。
「ビャクヤさんがなんだっていうんだ? この人は蛇に襲われて倒れていたんだ。それに初対面の僕らに何を企むんだ?」
つづく
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