第37話 遠い悲鳴が

 タクミは道の両脇から大きな黒蛇マンバが飛び出て来るのではないけかと、警戒しながら歩く。


 ところがこれがひどく疲れるのである。


「黒蛇はな、自分より大きな獲物も丸呑みするんだ。私達を食べることは流石にないだろうけどな、厄介なのは毒を持っていることだ」


 レイカは先に立って歩きながら、そう説明する。すたすたと歩いて行くので、タクミは不審に思う。


 黒蛇を警戒しなくても大丈夫なのだろうか?


「レイカ、蛇が怖くないの?」


 するとレイカは不思議そうな表情を浮かべた。そしてすぐに合点がいったように頷く。


 レイカ自分の特徴のある耳を指差した。


「私は蛇の気配を察知できる。タクミは安心してついてこい」


「頼もしいなぁ」


 頼られた嬉しさからか、レイカはタクミに見えないように口元を緩めて前を向く。ふわふわとしたこの気持ちをなんと言おう。


 その少し浮ついた心持ちに水を差す、甲高い悲鳴が空気を震わせた。二人とも反射的に声が聞こえた方角に顔を向ける。


 少し離れた場所に少しだけ緑が盛り上がって見える。草原の中に青々とした樹々が密集していて小さな森と言ってもいい場所だ。


 その森の中からその危機迫る悲鳴は聞こえてきた。






 つづく

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