第31話 鉱石の方舟


「さっき……ああ、これか」


 そう言うとタクミはポーチからそれを取り出した。手のひらに収まるくらいの大きさのそれは『本』に似ていた。


「本じゃないよ。手帳——の書いたこの世界に関するメモだね」


 父親の事を『あいつ』と呼ぶのは何かわだかまりがあるのだろうか。レイカはそこには触れず、タクミが差し出した手帳を見た。


「読めない」


「そうだよね。図ならわかるかな」


 ページをめくると、円形の地図が出て来た。


「これは……! この地の地図ではないか?」


「僕も村長の家で地図を見た時驚いたよ。あの地図を見たから、この手帳の事を信じてみようかと思ったんだ」


 そこまで父親の手記を信じていないのもどうかと思うが、その中の何がタクミの気を引いたのかレイカは気になった。


「僕が気になった事? うーん、もしもこの手帳に書いてあることが本当なら、『神の塔』に入るには鍵が必要になるって点かな」


「あの虹色の鍵ではないのか?」


 レイカはビスマスの鍵を思い出していた。しかしタクミは首を振って否定する。それからおもむろにページをくってレイカに差し出した。


「確かにビスマスの鍵ではあるんだけど……」


 それはタクミの持つビスマスの鍵が描かれていて、さらに円環状の物体の絵も描かれている。彼によると、この円環状の鍵がどこかにあると注釈が付いているらしい。


 レイカは首を捻った。


 この円環状の物体のはこの世界の地図に似ている。もしかしてこの世界を立体化した物なのではないかと述べると、タクミは軽く頷いた。


「僕もそう思う。この世界のミニチュアだね」


「みにちゅあ?」


「小さくした模型、かな」


 地図と鍵——。


 そしてビスマス結晶や鉱石の数々。


鉱石世界ミネラレ・アルカだな」





 つづく


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