第25話 白い影
レイカの祈りが届いたのか、白い一陣の風が沼地を走って来る。長いそれは『沈みの沼』まで来ると、その白い身体をうねらせて沼の上を泳ぎ始めた。
「あっ、あっ?」
腰まで沈みながら、レイカは小さな悲鳴をあげる。近づいて来る白い影が、異様な雰囲気を発しているからだ。
——あれは……?
白い何かはレイカに威圧感を覚えさせた。それでもそれがこの状況を打開できる何かであるならば、レイカはそのわずかな希望に縋ろうと叫んだ。
「助けてくれ!」
その声に応える様に、白い影は速度を増し、『沈みの沼』を沈むことなく渡って来る。
「あ、あなた様は——」
レイカが驚きの声を上げる。同時に白い巨大な影はその顎を開いて少女の襟首を咥えると軽々とその身体を持ち上げる。
いや、レイカだけではなく、彼女がつかむ重い泥を纏ったタクミまでをも引き抜いた。
そのまま、それは二人を泥のない乾いた場所まであっという間に運んでしまった——。
つづく
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