第19話 巨獣の足音


「お前の世界は争いは無いのか?」


「……残念ながらあるよ。それも同じ『人』同士のね」


 それに比べたらこの世界はわかりやすいかもしれない。種族が違うから争いが起きる。レイカも思うところがあるのか、眉をひそめた。


「我々は人同士ではあまり争わない。協力しなければ生きて行けないからだ」


「そうだろうね。なんというか、この世界ってすぐそばに大型の獣が生きているというか——」


 そこまで言ってタクミは言葉を切った。重い雷のような地響きが聞こえてきたからだ。


 ——言ったそばからこれだ。


 レイカと目配めくばせすると、二人ははすぐそばの大木の陰に身を隠した。地響きはもつれるような足音であると気がついた。


「二匹、いる」


 レイカは手にしていた長槍の柄をギュッと握り締めた。タクミも無言のまま鉱石銃に蛍石を詰める。ゴロリとした飴玉くらいの大きさの物を五つ入れた。始めに複数個入れておけば、連射が出来るからだ。


 ——大蝦蟇おおがまの時は試し撃ちのつもりで一粒しか入れてなかったからな。


 前回の戦いで、どのくらいの大きさの蛍石がどのくらいの威力を持つのかがわかっていた。


 二人は息をつめて足音を轟かせる何かがやって来るのを待った。






つづく

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