第15話 少女との契約


「村にとって君が必要なら、僕は一人で行くからいいんだよ」


 タクミはレイカにそう言ったが、少女は即座に首を振る。普段遠くに行くことのない彼女はむしろ村から出たいようであった。


「別に一生村を出て行くわけじゃない。往復で四十日ほど、冒険したいだけだ」


 それに、とレイカは付け足した。村には他にも戦ったり狩りをしたりする男達もいるからいいのだと言う。


 それを聞いてタクミの方も腹をきめた。レイカを水先案内人ガイドにして旅をするのだ。


 タクミはおもむろに腰のポーチから小箱を取り出した。蓋を開けると細かな仕切りで仕分けられた鉱石の入れ物になっている。


 中には蛍石の他にも綺麗な石が入っていた。


 その中の一つを摘むと、手のひらに乗せてレイカに差し出す。手のひらに乗せられたのは、淡い紫色に少しの黄色が入った石であった。


 透明度が高く、小指の爪ほどの小さい物だが、綺麗にカットされていて思わずレイカはため息をついた。


 ——こんな宝石、見たことない。


「宝石ではなくて、貴石かな。紫水晶に黄水晶が混じった石なんだけど、これを報酬に『神の塔』まで案内して欲しい。……お願いできるかな?」


 そう頼まれてレイカは目を輝かせた。


「ああ、任せておけ!」






つづく

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