第12話 知られぬ方が良い能力



 エナ婆の家を出ると、タクミは外の明るさに目を瞬かせた。改めて空を見上げると、薄曇りの白い空が広がっている。


 ——聞いていた通りの空だな。


 自分に与えられた——いや、解放された力を聞いた今では、抜けるような青空か、吸い込まれるような無限の星空を眺めたいところであったが、彼に与えられたのは真白い空だけだった。


 少し遅れて出てきたレイカが神妙な顔をしている。少し眉を寄せた顔も整っていて精巧な彫刻のようだ。


「すまない、タクミ」


「どうして?」


 なぜか急に謝られて、タクミは驚いた。


「本当ならお前一人で聞くべき話であった。好奇心からつい、そのままお前の御力おちからについて聞いてしまった」


「でも、僕は君の能力を知っているよ。それとも御力は隠す事なの?」


「タクミのは特別すぎる! 普通は——早く走れるとか、身軽になるとか……身体能力が上がるのが多い。他には使える魔法が増えるとか、そんなものだ」


「レイカなら知っててもらっていいよ」


 タクミはそう言ったが、確かにこの力を利用しようとする者もいるだろう。知られないことが重要だ。


「目の前で転んだ子どもがいたとして、僕はその『転んだ』という結果を変えて『転ばなかった』とする。そういう事だろう?」


 タクミはだいぶぼやかして聞いてみた。


「簡単に言えばそうだろう。だが、対象の事例が『死』であった場合、結果は恐ろしいほど変わるのではないか?」


 ——やっぱり、レイカは気がついていたか。


 タクミはやはり自分の能力を口外しないように心に誓った。それからレイカにもそう告げた。


「父と同じ力だったらよかったな」


鉱石いしを造る力か。その銃には相応ふさわしいな」


 レイカはタクミの腰の銃を見ながらそう言った。そしてふと気がついたように「あ」と呟く。


「お前の父親が不思議な物を残して行ったぞ」






つづく

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