第10話 血族で似る御力

「僕の父親の能力って、どんなものでしたか?」


 タクミはごくりと喉を鳴らしながら尋ねた。興味と恐れとをない混ぜにした興奮が溢れてくる。


「そなたの父親——ツカサは、生命いのちを使って物質ものを造る御力おちからであった」


 聞いた事のない御力に、レイカはギョッとしてその大きな瞳を更に見開いた。タクミもまた、予想外の能力に口をつぐむ。あの男の事だから、せいぜい逃げ足が速くなるとか、なんなら異性にモテるとかそんなものだろうと思っていた。


 そんな大仰な能力、何に使うんだ?


「補足するなら、造れる物質ものは鉱石や鉱物といったものに限られる。生命という限られたものを削ってまで使う御力であるかどうかはわからぬな」


 エナ婆はため息ともつかぬ長い息を吐きながらそう呟いた。タクミはふと疑問を口にする。


「この世界で鉱石ってどんな価値があるの?」


「金になる。物資と交換できるし、それこそ魔力の媒体になる」


 そうだった。

 この世界には『魔法』がある。


 タクミは改めてこちらの世界を認識し直す。


 ——僕が持って来た蛍石ほたるいしは魔力を放出して、敵を倒す為の攻撃に使えた。いわば衝撃か斬撃を与えたのだと理解しよう。


「そなたは知らぬな。ここではどのような石でも魔力を宿す。もちろん砂粒ほどであれば、砂粒ほどの魔力しかないがの」


 なるほど、とタクミは頷いた。この父親から送られて来た『銃』はそこら辺に落ちている小石を入れたとしても起動するのだ。


 ただし、出力は弱い、という事だろう。


 さて、そうなると自分にはどのような能力が開眼するのか、予想がつかない。同じ系統なら、この武器に相応しい。生命を削ってでも大きな鉱石を生み出せば、それなりの破壊力を持つ一撃を放つ事が出来そうだ。


 ——悪くない。


 強者になる事に、少年は抵抗はなかった。





つづく

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