第6話 旅人の理由
「そう、その通りだよ。人探しに来たんだ。この人、知らないかな?」
タクミは同世代の銀髪の少女レイカに気安く話しかける。それから胸のポケットから取り出したプリントされた写真を見せた。
「なぁに、コレ?」
チャベスが興味津々の声を上げる。
「精密な絵だな。こんな技術を持つのは『街』の人ぐらいだろう。タクミは『街』の人か?」
レイカの問いに、何か思うところがあるのかタクミは曖昧に笑った。
「僕はもっと遠くから来たんだ。行方不明になった……父さんを探しに来た」
そう言われてレイカとチャベスは渡された写真を見た。彼らには精巧な絵のようなものと認識されているが、そこにはどことなく抜けたようなにやけた顔の男性が一人写っている。
腕組みをして、立っているその脇には幼いタクミがいた。少し拗ねたようなその顔はどのような感情なのか、測りかねるところはあった。
「この人か?」
「ははっ、知らないよね、そりゃ」
タクミが自嘲気味に笑うと、意外な答えが返って来た。
「知っている。ひと月近く前にうちの村に来た」
「ええっ!?」
写真を返しながら、レイカは少し眉根を寄せる。父親が何かしでかしたな、とタクミはすぐに思い当たった。
「この男は村中の女達に挨拶して回ってな。嫁でも探しに来たのかと思ったぞ」
レイカは穢れでも触るように写真を突き返して来る。慌ててそれをしまいながら、
——あのセクハラ野郎!
と胸の中で毒づくと、タクミは深々と頭を下げた。
「ごめん、うちの父が迷惑をかけてしまって。……まだ君の村にいるだろうか?」
「いや、二、三日してから旅立った。彼も人を探していると言っていた」
——やはり、か。
そもそも置き手紙にそう書いてあったのだ。出かけた場所が場所だけに、一族全員が慌てたのだったが。
「僕は父を追わなくてはならない。どちらへ向かったのか、教えてくれないか?」
レイカは詳しい事は村長が知っているからとタクミを自分の村へと招いてくれた。
「お前はアイツとは違うようだな。歓迎する」
レイカはようやくタクミに向かって微笑んでくれた。
つづく
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