歪と規律 (紅葉、元日、サイコロ)

 紅葉を眺めていた。もう直ぐ落ちそうな葉を見つめていた。多くの人が集まっていた。

 そこは、まるで元日の実家の様な、そんな気配すら感じさせる。死を見つめる人間の目は温かく輝いている。

 死に際に値がつくこの世の中で、

 死んだら値がつかない世の中で、

 悲劇が売れる世の中で、

 喜劇は売れぬ世の中で。

 道を辿る歪んだ世界。それは極めて美しいらしい。

 ベンチに座る男がいた。男は視線を下に向け、お椀の中にサイコロを三つ落としている。

 綺麗な音が止んだ後、男は一つベンチを移した。そして、再度、サイコロを落とす。

 男は、紅葉には目もくれずにサイコロを楽しんでいた。

 運任せの規律正しい世界。それは極めて孤立している。

 

 ある秋の嵐の日、不眠で寝れない年頃にいる私。

 こんな日は無いと思い、サイコロを三つお椀に落とした。一つがお椀から弾かれる。

 私は花を摘みに行った。

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