違いを履き違う (狼、大きい、系図)

 家系図を見た。そこには、狼男が混じっていた。

 それで、なんとなく納得がいった。こんなに爪が長いのも、牙が大きいのも。どこか、皆と違うのも。

 だが、立派と言えば、そうではない。長い爪は割れてるし、大きい牙は折れている。こんなもの無い方がマシだ。

 ある日、人魚に遭った。その子も、皆と違っていて、僕と同じように立派じゃない。尾ひれなんて、破けている。鱗も剥がれてる。

 だけど、その子は、ひたすら泳いでた。破かれても、剥がされても、ひたすら泳いでた。

 その姿はただただ、美しかった。それは、皆と違う事が美しいんだと叫んでいるようだった。その光景がいつまでも忘れられなかった。

 数年後にテレビで彼女を見た。立派になっていた。違いを認められていた。それが僕には嬉しかった。

 僕も、そうなりたい。そう思って、僕は人を食べた。

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