長針の動く間に

ななし

枯れ野にカレー (香辛料、髭、枯れ野)

 「物見遊山って知ってるかい?」

 髭面のおじさんが僕に聞いてきたが、僕は知らないと答えた。すると、母は何を言っているの。と、冗談っぽく僕に向けて言う。

 「この時期は、枯野見って言ってね、」

 おじさんは、めげずに、懇切丁寧に、説明をしてくれるが、それは既に一度、耳に入れたことがあった。

 それも母は承知であんな事を僕に言ったのだろう。

一昔前はよく家族でやっていたのだから。だから、僕はあんまり乗り気ではないのだ。

 しかし、ここで駄々を捏ねるほど子供ではなくなっていた僕は、大人しく車へと乗り込む。

 昔なら車酔いをしていたであろう。しかし、今はしない。その理由が内的要因でない事は確かだ。

 目的地へ着くと、早速、シートを広げてランチの準備。

 数年ぶりに見る景色は全くもって変わらない。

なのに、父が毎回作ってくれていた甘ったるいカレーは香辛料が効いた味に変わっていた。

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