沙漠に焦がれる
十余一
沙漠に焦がれる
満天の星が霞んでしまうほどの月が、夜空にぽっかりと浮かんでいる。映した
淡く輝く月の沙漠を、二頭の
駱駝に揺られ旅する王子様とお姫様の心は、ぴったりと寄り添っている。
わたしの大きな黒い目は、二人の旅路をくっきりと捉えている。波に
暗い海の底から上ってきては、
愛しい人と駱駝にまたがり乾いた大地を旅することができたなら、どんなに喜ばしいことでしょう。
海を離れた生き物は、その目に海を宿しているらしい。驚きで引き、笑みで満ち、悲しみで潤み、喜びで溢れ出る。広大な海を泳ぐよりも、私だけの小さな海を愛したい。
空が白み始めた頃、ふわりと不意に訪れる浮遊感。
「やっと迎えにきてくれたのね、わたしの王子様!」
――魚を山ほど積み込んだ船は、大漁旗を掲げて帰港する。
沙漠に焦がれる 十余一 @0hm1t0y01
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