第55話 西王寺がやって来た理由
「ふぅ・・・・・・やはり晶はいい仕事をするわね」
コポコポと家庭用のコーヒーメーカーから抽出された出来立てのコーヒーをカップに淹れて、香りを楽しみながらそう感想を述べたのは、リラックスした様子の西王寺だった。
なんとなくだが、何時ものピンと張り詰めたような雰囲気が緩んでいる気がする。
まだ家具を全部は用意しきれていない、まだ閑散とした内装の買ったばかりの自宅の一室には、西王寺が指定して晶さんに用意させたサイズの大きなコーヒーメーカーに、そのコーヒーメーカーを動かすための巨大なポータブル電源が鎮座していた。
他にも俺が知らない様なメーカーから取り寄せた椅子やらテーブルやらが西王寺グループを通じて爆速で用意され、複数ある部屋の一室がまるで西王寺に占拠されたかのようだった。
「落ち着いているところ悪いんだが、何だこれは?」
西王寺からの直接の依頼、ということもあって元々西王寺の使用人であった晶さんを含め、日本で色々と関係のある人達の目の色が変わった。
ただ勘違いして欲しくないのは、晶さんも普段から懇意にしてもらっている関係者の人達も俺の相談は真剣に聞いてくれるし、依頼も最優先でやってくれるいい人達だ。
ただ依頼主が西王寺雫という事もあって、誰がその依頼を受けるのかでまず最初に争いが起きた。
西王寺の依頼は複数あり、1つ目が今彼女が使用している椅子やテーブル、コップといったブランド物の家具、これは一般販売されていない類の物であり、その家具販売の会社が投資家や株主向けに用意された特別なものだった。
それを用意するだけでも結構な時間と労力が掛るのだが、依頼達成チームはあろうことかその依頼を即日で達成させて、俺の家には巨大な家具達がムーンゲートの置いてある空き部屋に置かれていた。
あまりの巨大さに通常のムーンゲートでは運ぶことが出来ず、一回り大きなムーンゲートを作り出して運ぶはめになってしまったものの、その協力費としてかなりの額が俺の口座に振り込まれていた。
この件に関してはある意味仕事として処理出来るが、俺の自宅に優雅にコーヒーを堪能している西王寺はどう反応すればいいのか対処に困っていた。
「まだベッドとか用意していないのでしょう?オススメよ、この寝具」
「そりゃ見た目からして気持ちよさそうだけどさ・・・・・・」
ポータブル電源やコーヒーメーカー、これらは西王寺が持ち帰るとしても、今回他にも運び込んだのは寝具などもある。
もしやこの家に住むとか言わないよな?
「流石に押しかけ女房みたいにこの家に住もうとは思わないわよ・・・・・・新築、ではないにしろ私からの新居祝いね」
「それならいいが・・・・・・」
一方、西王寺は別で用意していた布団を持って変えるそうだ。流石に巨大なベッドをチームハウスから入れるのは不可能なので、他で用意した小物系を中心に持っていくという。
つまり、今回用意したコーヒーメーカーや巨大なポータブル電源も俺の新居祝いに置いていくという。
「でも俺はコーヒー飲めんぞ?」
「飲み慣れる必要はあるかもね?でもお勧めよ?飲み過ぎは良くないけど」
慣れた手つきでコーヒーメーカーを操作して俺の分のコーヒーも淹れてくれる西王寺。
最近では少しずつ寒くなってきたこともあって、温かい飲み物は嬉しい。
「あ、意外と旨いな」
「でしょ?物が良いというのもあるでしょうけど、大人になってからいざ飲んでみると意外と美味しい、なんてことはよくある事だわ・・・・・・味覚の変化ね」
子供舌とまではいかないものの、苦いものはあまり好きではない。
一方でアルコール類は好きだったので、ただ単純にコーヒー独特の香りが苦手だと思いこんでいたのだが、意外と飲んでみると美味しい。
もしかしたら前世の新条雅人ではなく、アレンという別の身体だから飲めるのかもしれない。
そう考えながらホッと息をついた時、コーヒーメーカーを片付けていた西王寺が突然口を開いた。
「そういえば王都闇市で売られていた例のエルフ、もしかして貴方が買った?」
まるで他愛のない話の続きを話すかのように、西王寺は切れ味の鋭い言葉を放った。
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