第27話 エンファイブ魔法学園
「凄いな、ここがエンファイブ魔法学園か」
「学生の頃何回か遠目から見たことあるけど、やっぱり凄いねー」
キャミルの学生時代の話を聞きながら学区の整備された歩道を歩き、目的地であるエンファイブ魔法学園までやってきた。
巨大な門の前には、守衛の建物が存在し分厚い鉄製の扉で厳重に守られている。
しかし、学園の外から見るエンファイブ魔法学園の学び舎はなんというか・・・・・・先程見かけたサンドリーク大聖堂よりも更にスケールアップした感じの建物だった。
元々、アスフィアル世界に存在する建造物は科学技術の発達具合に反して、巨大な建造物が多い、それは王都を代表する王城がその代表格でまさにファンタジー世界だからこそ為せる様な建造物だ。
エンファイブ魔法学園の構造は、一言で表すなら東京都庁に近い、長方形の大きな建物に二対の塔のような建物が伸びている。ただ近代的な建物という意味ではなく、形が似ているというだけだ。
「なんとか入れたな・・・・・・」
「まさか私も入れるとは思わなかった。凄いね、エンファイブのプロミカ」
2階建ての立派な守衛所で荷物検査をした後、そのまま敷地内に入れる・・・・・・というわけではなく、右手首にブレスレットの様な魔法具を装着して入ることになる。
もし、学園の敷地内で事件を起こせば、この右手首に装着した魔法具が反応して守衛の兵士たちが飛んでくるという仕様だそうだ。
発信機みたいな役割を持っているらしい。
「それにしても凄いですねー、ライオサールとは大違いです」
「そんなに違うのか?」
「えぇ、ライオサールでも一番大きな建物がエンファイブの学生寮より小さいですからね、全然違いますよ」
そこまでか、とキャミルの言葉に疑いを浮かべるものの、都庁の様な巨大建造物を囲うようにエンファイブ魔法学園の敷地には関連施設が他にも幾つも存在する。
「あれは獅子寮ですね、学区の出身者ならエンファイブの獅子寮は有名なんですよ」
キャミルが指を差した先には、暁月の旅団よりも大きな屋敷が存在した。
立派な造りの家には、赤い旗が掲げられており、旗には獅子の横顔を模したマークが施されている。
「・・・・・・ここが学生寮かよ」
最初にキャミルの話を聞かなければ、貴人が泊まるような迎賓館か何かと思っていたかもしれない。
「獅子寮はカインリーゼ現国王も生活していたと言われる学生寮なんです。しかも今現在でも第一王女が獅子寮に居ると言われています」
「キャミルってそこら辺の話に詳しいね」
「そりゃ冒険者をやるなら情報は命ですし、世情には詳しくないと死んじゃいますよ」
キャミル曰く、冒険者はまず世の中の流れを察知する能力が必要だと言う。
まず第一に、冒険者が知って置かなければ行けないのは拠点とする都市の政情や周辺地域を治める領主の性格など様々だ。
「都市によっては、魔法使いが同じ場所に複数人集まると罪に問われたりします。カインリーゼの国内ではありませんが、場所によっては魔法使いってだけで罪人にされちゃいますし」
(魔女狩りみたいなもんなのか?)
魔法使いによっては、他人を洗脳する魔法や感染型の毒を発生させるという恐ろしい魔法が存在するようだ。
これらは勿論、国によって規制されているものの、隠れてそれら禁止魔法を覚えている魔法使いは稀に居るらしい。
だからこそ、土地を治める領主の中には魔法使いを恐れる人も多いそうで、場所によっては魔法使いと言うだけで都市への入場を断られたり、罪に問われたりするんだという。
少々暗い話をしたせいで、俺とキャミルとの間に気まずい空気が流れていた。
それでも足はちゃんと動いていたので、着々と目的地へは地がづいていた。
そんな時、気まずい空気を変えようとキャミルが話しかけてきた。
「それで、今日会う人はどんな方なんです?」
「カスティアーノ侯爵家のレイ・カスティアーノっていう人、前の露店祭で客としてやってきてから招待を受けたんだよ」
同じ歩調で獅子寮を通り過ぎ、今回エンファイブ魔法学園までやって来た目的を、キャミルは俺に聞いてきた。
ここまでくれば問題ないだろう、俺はそう思い何気なしに答えるように今日会う人物を教える。
細かい日時は決めていないものの、しっかりと相手側にも手紙を送っているのでちゃんと会えるはずだ。
「え」
「ん?どうした?」
同じ歩幅で歩いていた中、キャミルが急に足を止めた。
キャミルより少し前を歩いたところで振り向いて彼女の顔を見てみると、まるで能面を貼り付けた様な無表情な表情をしていた。
「もう一度言ってくれる?」
「レイ・カスティアーノっていう人だよ、カスティアーノ侯爵家の嫡子」
「・・・・・・」
俺とキャミルとの間に、少し静寂の時が流れる。
アスフィアルの世界も一番暑い時期を越えて、心地よい風が肌を撫でる中、その心地よい風が一瞬止まった瞬間にキャミルは脱兎の如くその身を翻して逃亡を図った。
ガシリ!!
「離して!!なんでアレンが大貴族の嫡子と関係があるのよ!!!」
「だから、この前の露店祭の時に会ったって言っただろ!」
キャミルの脚力は身体能力に乏しい魔法使いとは思えない程、彼女は素晴らしい瞬発力を発揮したものの、こちらは転生者チートでこの世界でも上位の身体能力を持っている。
一瞬にして数メートルを移動したキャミルを的確に捉えて、彼女の細い腕をがっしりと握り、逃亡を阻止した。
「カスティアーノって、魔法貴族御三家の一角じゃん!!そんな家の嫡子にただの平民魔法使いが会いに言ったら不敬で殺されちゃう!!」
「考えすぎだキャミル!!」
キャーキャー言い合う様は、まるでカップルの痴話喧嘩ではあるが、彼女を逃すと俺が一人で貴族に面会しなければならないので、ここで彼女を逃す事は出来なかった。
「騙された!!絶対行かないもんね!!!」
「キャミルはエンファイブのプロミカ持ってないだろ、一人で学園内に居たら捕まるぞ!!」
俺とキャミルの喧嘩は、学園の周囲の生徒がなんだなんだ?と見に来るまで続いた。
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