第24話 金と銀のプロミカメダル
王国貴族のお坊っちゃんであるレイ・カスティアーノが露店に襲来し、店の商品は根こそぎ買い漁られた結果、人生初の商売は完売御礼という形で幕を下ろした。
「・・・・・・念のため、書籍関係は隠しておいて正解だったな」
露店正面の商品を置く台の下、前からは布で隠れている見えない場所にキャミルやリュカ達の為に用意してあった漫画類関係の商品が置いてある。
買う人も居ないだろう・・・・・・そう思い並べていなかったのが幸いした形だ。
しかし、それ以外の商品―――――チョコレートを初めとしたお菓子からトレカといった今回用意した商品全てが一人の少年によって買い占められ、店は随分と寂しいことになっている。
「しかも変なメダルも貰っちゃったし、どうすんだこれ?」
ピーンと親指で弾けば、金色に輝く五百円玉ぐらいのサイズのメダルが太陽の光を反射して輝く。
これはレイが帰り際に俺に渡してきた物・・・・・・この金色のメダルと一緒に、同じサイズの銀色のメダルも貰っている。
『これがあれば何時でも僕のところに来れるから、時間を見つけたら来てね』
随分と満足した様子のレイは、俺が出品していた商品を全て買い漁ると、帰り際に二枚のメダルを取り出して店に置いていった。
そしてレイは次の露店を見ること無く、13番エリアから姿を消し、それを確認した周囲の野次馬たちはこぞって俺の店までやってきた。
「まぁ、野次馬達の反応からしたら多分すげー物なんだろうけどさ・・・・・・このメダル」
生憎、レイが全部の商品を買い占めてしまったため、後にやってきた客や同業者に売れる物は既に無かったが、店にやってきた人達全員が、俺が手に持っている二種類の金と銀のメダルをみて息を飲んでいた。
話を聞こうにもメダルに近づこうとしないし、聞いても露骨に話題を変えようとする事からして、まず間違いなく厄介な代物だというのは分かっていた。
金のメダルには、天秤のようなマーク が描かれており、俺の記憶が正しければこの天秤のマークはカインリーゼの国旗に描かれているシンボルのハズだ。
そして天秤のマークの下には、縁を沿うようにカスティアーノと文字が彫られている。
銀のメダルの方には、まるでトラ◯フォースを逆さまにしたようなマークが描かれている。コレに関しては記憶が無いので何を示しているかは不明だが、レイが合わせて渡してきたことからして、似たような用途で使う物だと思う。
「あっ!!全部売れちゃってる―!?」
渡された二種類のメダルの使い道について考えていたら、周囲の喧騒をかき消すように若い女性の声が周囲に響く。
「キャミルにリュカじゃないか、いらっしゃい」
「いらっしゃいって、全部売れてるじゃん!!」
完売御礼、商品の置いてある棚が全て空いている状態を見てリュカを置いて小走りに店までやってきたキャミルが店を隈なく観察する。
「大丈夫大丈夫、ちゃんと約束の物はとってあるよ」
最初は単純に気がついてなかっただけなのだが、キャミルは店に商品が置かれていないので、今日買う予定だったゆめ恋の続刊も売れてしまったのだと勘違いしているみたいだった。
折角店に来てもらったのに、意地悪するのも可哀想なので素直にゆめ恋の続刊を取り出す。
「はいよ、これがゆめ恋の3巻」
「やった!!」
もちろん、キャミルだけでなくリュカの分も用意してあることを忘れずに伝えておく。
「これってプロミカメダルじゃない?」
「プロミカ?」
本の受け渡しが終わったところで、今回の露店祭で用意した品物は全て売れてしまった。
なので、夜になる前に露店を閉めることにする。本当であれば露店祭が一番騒がしくなるのがこれからではあるものの、売れるものも無いのでこのままキャミルたちと一緒に散策することになった。
設営した露店を片付けている間、キャミルもリュカも一緒に手伝ってくれた。
まだまだ設営が不慣れな俺と違って、冒険者として経験の長い2人はテキパキと解体して資材を種類ごとにしっかりと纏めてくれており、返却も楽になる。
そんな中で、先程渡された謎のメダルを見てキャミルが意外そうな表情でこの謎のメダルについて教えてくれた。
「うん、プロミカメダルは街や都市の制限された場所に入場するために必要なメダルだよ、冒険者でも似たような物があるんだ~」
プロミカメダルは、この世界において許可証に似た物らしい。現代で言えばチケットや免許証に近いようで、これを持っていると普通では入れない場所に入る事が出来るそうだ。
「冒険者だと、制限されているダンジョンに入るためにギルドから配布されたりするね、もちろん、制限されているようなダンジョンは危険だからギルドから認められた人しか持っていないんだよ」
キャミルはそう言うと、ほらといって冒険者ギルドで使われているプロミカメダルを取り出して見せてくれた。
キャミルが持っているプロミカメダルは、俺が持っている物と違って随分と小さい、大きさで言えばコインサイズであり随分と使い古された感じがする。
「これはⅡ級ダンジョンまで挑戦できるプロミカメダルだね、旅団の皆ならアレン以外は全員持っているんじゃないかな?」
Ⅱ級ダンジョンがどの程度の物なのかは分からないが、少なくとも許可が必要な程危険なダンジョンなのは間違いないだろう。
それにしてもしかし・・・・・・
「じゃあ、これがプロミカメダルとして何に許可が貰えたんだ?」
「金のプロミカにはカスティアーノの侯爵家の名前が彫られているし、中央区の物じゃないかな?銀のプロミカは学区の物だよ、これはエインファブ魔法学園のやつだね」
「なるほど」
金のプロミカメダルには、カスティアーノという文字が彫られているのでなんとなく意味は分かる気がする。しかし、銀のプロミカメダルは王都の学区に存在する学園の校章だという。
「そういえば、キャミルは王都の学校に通っていたんだっけ?」
「うん、私は魔法使いだから当然通っていたよー、マークは違うけどアレンと同じように学区のプロミカも持ってるよ、ほら」
キャミルはそう言うと、胸ポケットから一つのプロミカメダルを取り出した。
取り出したプロミカメダルは、先程の冒険者ギルドが発行しているプロミカメダルと違い、俺が貰った銀のプロミカメダルと色も形もほぼ同じで、校章のマークだけが違うものだった。
「学区のプロミカは、持っているだけで王都北地区に入れるよ、後は持っているプロミカに描かれた校章の学園に入れたりするけど、他の学園は入れないから注意してねー」
「そうなのか、分かった」
銀のプロミカメダルを持っていれば、王都北にある学区へ無条件で入れるそうだ。しかし、学区内でも様々存在する学園にはそれぞれ対応したプロミカメダルが必要らしい。
つまり、俺は学区内を自由に行き来することが出来、その中でもエインファイブ魔法学園なる場所には入れるみたいだ。
「それにしても凄いね、私は学園の卒業生だから持っているけど、普通の人は金のプロミカも銀のプロミカも手に入れられないよ、それこそ王都の有力者でも持ってない人も多いんだから」
驚いた様子で俺の方を見てくるキャミルは、どうやってコレを手に入れたの?と聞いてくるものの、今日やってきた客が勝手に渡してきた。と説明しても全然信じてもらえなかった。
「アレン、ゆめ恋の続きって何時ごろ用意できそう?」
俺とキャミルがプロミカメダルについて話し合っていた中、作業を終わらせたリュカはただ一人で購入したばかりのゆめ恋を読んでいた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます