ショート劇場「あと30秒」

タヌキング

終わる世界

いつもの登校中、交差点を渡ろうとする私の目の前にカウントダウンタイマーの様なモノが現れた。

そのカウントダウンタイマーというものは、宙に数字が浮いており、30という数字から1秒ずつ数字が1減っている。

これは世界が終わるカウントダウンタイマーだと私はピーンと閃いた。

だが、ただの明るいだけが取り柄の女子高生の私に何が出来るだろう?

隕石や核ミサイルが落ちてきても止められない。

そもそも30秒じゃ、何の対策も取れやしない。

そうこう考えている間に残り時間は15秒を切っていた。


"ブゥオオオオオオン!!"


「へっ?」


突然、歩道にいる私の方に車が突っ込んできた。

考え事をしていたこともあり、私は避けようとする間もなく。


"ドガーーーン!!"


私は車に轢かれて10メートルぐらいふっ飛ばされた。

めちゃめちゃ痛い、体の自由も効かない、意識も薄れてきた。あぁ、私死ぬんだ。

薄らぐ視界に見えるカウントダウンタイマーは残り5秒、世界の終わりと同時に私も死ぬのかな?

と、ここで私は勘違いをしていたことに気がついた。カウントダウンタイマーは世界の終わりを告げるものではなく、私の命の終わりを告げるものだったということに。

その事実に気づいたとき私は自然と笑顔になった。


「良かった、世界は今日もここにあるんだ。」


カウントダウンタイマーはもうすぐ0になるけれど、こんな晴れた日に死ねるのだから私は幸せです。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ショート劇場「あと30秒」 タヌキング @kibamusi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ