第3話 小指の秘密



 珪と章夫人の間に生まれた亮少年は、好奇心が人一倍強く、気になるものは徹底的に、自分が納得するまでとことん追求する素質を幼いながらに育んでいた。


 この日も、いつものように裏山へ探検に出掛けた亮少年は、一面に咲き乱れる花畑・・・・・・の中を自由に飛び回っている「蜂」を生まれて初めて目にした。

「どんな作りになっているんだろう」

 亮少年は蜂の体の仕組みを調べようと、何の用心もせずに、素手でムンズと掴んでしまったから、さぁ、大変。

「痛い!」

 蜂に針がある事を知らなかった亮少年は、小指をチクッと刺されてしまい、瞬間的な鋭く重い痛みは、少年の手から蜂を解放したが、小指の痛みは増すばかり。


 泣きながら帰ると、直ちに治療が施され、何とか痛みは治まったものの、かゆみだけは、なかなか治まらなかった。

 仕方がないので亮少年は、親指で小指をいて、気分を紛らわせたが、いつしかそれは習慣化し「癖」になり、大きくなってからも、軍師になってからも、丞相になってからも、つい「癖」で親指で小指を掻いていた。


 しかし、そんな「癖」の由来を知らない人々は、親指で小指を掻くと頭がよくなると信じて真似ていたとか。


 もっとも、癖の一つさえ真似られるような才智を、天下を舞台に開花させるようになるのは、まだまだ、先の話なのだが・・・・・・。


 当時の孔明先生ファンが、親指で小指を掻くことで少しでも孔明先生に近づきたい、と願ったように、現代でも彼を敬慕する人が、一度は手にしたいと望むのは「羽毛扇」だろう。

 

 次回予告:孔明先生と羽毛扇の運命の出会いエピソード。

 孔明先生のトレードマークとなる羽毛扇との出会いは諸葛家の寛大さが導いたものだったが、その経緯とは? 


次回も、気が向いた時に更新しますので、気が向いたら、引き続きよろしくお願いします。

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