エピローグ 姉妹の本性 *緑雨*
*緑雨*
私たちはカフェを出た後、近くの公園の公衆トイレで黒い服に着替えた。
今日珍しく姉さんがリュックだったのは着替えを入れていたせい。
朝日さんが珍しそうに見つめてたけど、聞いてこなかったね。
あそこで聞かれてたら、私たちは行動を起こさなかったかもしれないし、朝日さんは生きていたかもしれない。
そんな仮定、今更考えたって意味ないんだけどね。
朝日さんの死体は私たちの実家に運び込んだ。
え? 目立ったんじゃないかって?
私がそんなヘマするわけないじゃない。
この辺りの監視カメラの場所は把握しているし、人通りが少ない場所で犯行に及んだんだから大丈夫。
唯一の不安要素だった姉さんだって、珍しく落ち着いて行動してくれた。
泣いたり動けなくなったりするんじゃないかって思ってたんだけどね。
私が朝日の頭を鈍器で殴った後、優しくカラダを支えていたし、彼女を背負って裏道を黙々と歩いてくれた。
ベッドに横たえるときだって、まるで繊細なモノを扱うかのように、丁寧だった。
流石だね。3年間朝日さんを愛していたことはある。
私だって負けてないけど。
彼女に会ったその瞬間から、私は片想いしてたんだよ。報われないと知っていても、想いは募っていくばかり。
もう一生我慢するしかないのかなあって思っていたらさ、姉さん、馬鹿だよね。勝手に不安になって別れを告げちゃった。
そこにつけ込んだら私に勝ち目があるかなって思ったら、なんとまあ……姉さんってば往生際が悪い。
また告白しやがった。
最悪。
でも、私を選んでくれればどうでも良かったのに。
朝日さんは私たちをフった。
まぁ予想はしてましたよ。優しい彼女はきっと、二人とも選ばないって。
でもねえ……諦められるほど私たちはいい子じゃないの。
姉さんと話し合った。
万が一二人ともフラれたらどうするか。
そしたらさあ、姉さんの方から提案してきたんだよ。
「永遠に私たちのモノにしたい」
拒否するわけないじゃない。
即乗っかって、計画を練った。
幸いなことにさ、私たちのお母さんとお父さん、今世界一周旅行してるんだよね。だから実家に置いておくことにした。当分は。
帰って来るときのことはそのとき考えるとして、腐敗臭のことも今は置いておくことにして。
今日ぐらいは、温もりを失った朝日さんの傍に、ただいさせてよ。
漸く彼女を手に入れられたんだから。
**
美人姉妹は手に負えない 佐久間清美 @kiyomi_sakuma
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