第2話 現実は小説よりも奇なり1/3
私はまたしても、例のカフェにいた。
今回は彼女に会うためじゃない。友だちとお茶をするためでもない。
まさかまさかの展開。
あれからすれ違っても授業で見かけても、一言も喋っていないのに。
一体どうしたんだろう。
まだ緑雨ちゃんの告白への返事をしていないというのに、元恋人と会うことになるなんて。
どんな人生を歩んでるんだ。
はあ……。
最近悩んでばっかりだなあ。
気が重くなるのを感じながらカフェのドアを開けると、この間緑雨ちゃんが座っていた席に春雨が座っていた。
いや、あんたら選ぶ席も一緒なんかい。怖いわ。
入り口からじーっと見つめる視線に気がついたのか、
「あっ、朝日! ここだよー」
別れたのが嘘のように、元気に元恋人は手を振ってきた。
そんなに大きな声を出さなくてもわかってるって。
他のお客さんの迷惑になっちゃうでしょ。
まぁ、そんなところも好きなんだけど。
「お待たせ」
「私も今来たとこだよー」
姉妹で言うことも同じなんだね。うん、同じ過ぎて怖いです。
私が席に着いたところで、店員さんが2人分のウインナーコーヒーを運んできた。
「えっ」
「朝日、ここに来たら毎回これ頼むからさ、勝手に注文しちゃった……あれ、ごめん。今日は他の気分だった?」
「……ううん。今日も頼もうと思ってた」
私の好みを覚えていてくれたことが嬉しいだなんて、言えない。
「それなら良かった」
春雨はスプーンでホイップをすくい、「美味しいねえ」とほっぺたが零れ落ちそうなほど甘い顔をしている。
私の気持ちなんて知らずに。
ここに来るのにどれだけ勇気が必要だったか知らずに。
ねぇ春雨。
友だちに戻れず、ただの赤の他人に成り下がったはずなのに、どうして今日私を呼び出したの。
要件を詳しく書かず、【明日の11時、いつものカフェで待ってるね】って送ってきたのはどうして。
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