第2話 現実は小説よりも奇なり1/3

 緑雨りょくうちゃんに告白されて1週間。


 私はまたしても、例のカフェにいた。

 今回は彼女に会うためじゃない。友だちとお茶をするためでもない。


 春雨はるさめに呼び出されたのだ。


 まさかまさかの展開。


 あれからすれ違っても授業で見かけても、一言も喋っていないのに。

 一体どうしたんだろう。


 まだ緑雨ちゃんの告白への返事をしていないというのに、元恋人と会うことになるなんて。


 どんな人生を歩んでるんだ。


 はあ……。


 最近悩んでばっかりだなあ。

 気が重くなるのを感じながらカフェのドアを開けると、この間緑雨ちゃんが座っていた席に春雨が座っていた。


 いや、あんたら選ぶ席も一緒なんかい。怖いわ。


 入り口からじーっと見つめる視線に気がついたのか、

「あっ、朝日! ここだよー」

 別れたのが嘘のように、元気に元恋人は手を振ってきた。


 そんなに大きな声を出さなくてもわかってるって。

 他のお客さんの迷惑になっちゃうでしょ。


 まぁ、そんなところも好きなんだけど。


「お待たせ」


「私も今来たとこだよー」


 姉妹で言うことも同じなんだね。うん、同じ過ぎて怖いです。


 私が席に着いたところで、店員さんが2人分のウインナーコーヒーを運んできた。


「えっ」


「朝日、ここに来たら毎回これ頼むからさ、勝手に注文しちゃった……あれ、ごめん。今日は他の気分だった?」


「……ううん。今日も頼もうと思ってた」


 私の好みを覚えていてくれたことが嬉しいだなんて、言えない。


「それなら良かった」


 春雨はスプーンでホイップをすくい、「美味しいねえ」とほっぺたが零れ落ちそうなほど甘い顔をしている。


 私の気持ちなんて知らずに。


 ここに来るのにどれだけ勇気が必要だったか知らずに。


 ねぇ春雨。

 友だちに戻れず、ただの赤の他人に成り下がったはずなのに、どうして今日私を呼び出したの。


 要件を詳しく書かず、【明日の11時、いつものカフェで待ってるね】って送ってきたのはどうして。


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