第1話 こんな展開あり?3/4

 傷ついた心が癒えていない私は、きっと緑雨ちゃんと会うべきじゃなかった。


 それでも来てしまったのは、私が弱いから。

 春雨への想いを断ち切れていないから。


 いつまで経っても埋まらない心の穴を、彼女と会うことで埋めようとしている、最低な女だ。


「それで、『話がある』って……どうしたの。なにかあった?」


 自分の気持ちが表に出ないように押し込めて尋ねた。

 昨日の夜、緑雨ちゃんからSNSにメッセージがあったのだ。【お話ししたいことがあります。明日会えませんか】って。


 一体なんだろう。もしかして、春雨絡み?


 注文した飲み物が届いて、

「ごちゃごちゃした前置きを話すのは好きじゃないので、単刀直入に言いますね」

 緑雨ちゃんは珍しく緊張した様子で口を開いた。


「うん」


「あの、私と付き合ってもらえませんか」


「……はい?」


 今なんて言った?


「ごめん、もう一回言ってくれる?」


 聞き間違いだよね。流石に。


「私と、付き合ってください」


「……嘘でしょ」


 聞き間違いじゃなかった。彼女は私に告白してきた。


 待った。言葉が足りていないだけで、

「買い物に付き合ってください、とか、そんな話じゃないですよ。私は朝日さんのことが好きだから、告白したんです。嘘でもないです」

「……」


 私の考えはお見通しってわけね。


 いやいやいや。


「私が春雨と付き合ってたの知ってるよね? 別れたことも知ってるよね?」


 どうして私なんか……あっ、この姉妹、趣味趣向が同じなんだった。


「初めてお姉ちゃんが朝日さんを家に連れて来たとき、一目惚れしちゃったんです」


 坦々と語る緑雨ちゃんに、私の脳みそがついていかない。


「一目惚れ? マジか」

「はい。3年間ずっと片想いしてました」


 現実は小説よりも奇なり。

 昔の人が生み出してくれた言葉を思い浮かべながら、パニックになっている思考を落ち着かせるためにコーヒーを飲んだ。


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