第1話 こんな展開あり?2/4
「ごめん、待った?」
「いいえ。今来たところです」
大学近くのカフェ。
絶対に私よりも早く来ていたはずなのに、今来たばかりのような顔をして、わざわざ立ち会って微笑んでくれたのは、
「
「はい、お久しぶりです」
この間まで付き合っていた春雨の妹――緑雨ちゃん。
私たちが座るのと同時に来てくれた店員さんにウインナーコーヒーを注文して、改めて目の前の少女と向き合う。
まぁ、そんなに年は変わらないんだけど、やっぱり今年大学生になったばりの彼女とは年齢の差を感じてしまう。
「元気にしてた?」
「はい、おかげさまで。朝日さんは」
「私も元気だったよ」
嘘。
春雨と別れてからの私の元気のなさは、友だちから心配されている。
少し痩せてしまったみたいだし。
「嘘つかないでくださいよ。姉さんと別れてから、元気がないって知り合いから聞きました」
「知り合い?」
誰よ。私の個人情報を漏らしたのは。
「はい」
向日葵みたいに明るく笑う春雨とは対照的に、いつだって柔らかく優しく笑う彼女は口を割らなかった。
でも、予想はつくよ。
知り合いなんかじゃなく、春雨から聞いたんでしょ。あの子、私の家を出てから実家に戻ったみたいだし。
春雨も緑雨ちゃんも実家から通ってるんだから、毎日顔を合わせる。
いつだって姉の変化に気がつく聡明な彼女のことだから、聞かなくても察したに決まってる。
「そっか」
別に深く追求しない。できれば春雨の話はしたくないもん。
今日だって、本当は来るか迷った。
それは、緑雨ちゃんが春雨と瓜二つだから。
目が大きくて、睫毛は爪楊枝が乗せられそうなほど長くて、小顔で。
双子でもないのに顔も仕草もそっくり。趣味趣向も。
ただ唯一異なるのは性格。
おてんばで無邪気な春雨とは対照的に、目の前の少女は大人びている。いつだって冷静沈着。
けれど、こうやって向かいあっていると、春雨と会ってるんじゃないかって錯覚しそうになる。
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