第9話:ご飯大事。何より大事🍙🍚🍱🍜
皆様、ご飯は美味しいですか?
きちんと三食食べていますか?
目の前のオートミールとかいう西洋風オカユに牛乳をかける贅沢な誘惑に負けそうなユーリア七歳です。
カロリー少な目、ヘルシーすぎて涙が出ます。
昨年は女神、え~とスシルー? 何だっけ。
ああ、スウシール様の遠視(老眼? と聞いたら101回お仕置きだべアタックを受けました)で教えてもらった通り、アイツランドのロキ火山が大噴火。
おもにイングレッド連合王国で火山灰が降り、収穫前の作物に大打撃。国民が飢えることを恐れた王家が、各国から穀物を緊急輸入。
各国の商会にボラれながらも、なんとかその冬はしのげましたよ。
で、この世界の皆さんは科学的知見がないからさ。
『大気圏を覆いつくした火山灰のおかげで来年、再来年。さらには10年近く不作が続く』とか、思いもよらないよね。
21世紀の一般人も『地球は温暖化するんだぁ!』という嘘つき学者が改ざんデータをもとに発表、その背後の暴利をむさぼる連中に踊らされて大騒ぎ。
途中から連中、『気候変動』と名前変えてほっかむりする。
この世界のこと笑えないね。
で、なんだっけ。
ああそう、オートミールのことだ。
オーツ麦のひきわりオカユ。
オーツ麦がなぜ、この比較的温暖な、といっても山地だから牧畜中心だけどね、地域で食べられているか?
現在ラインシュタイン大公国の主食となっております。
今までの主要産業だった牧畜で作られる、肉類と乳製品、皮革類に加えて、家畜の飼料以外にも大量のオーツ麦を栽培しています。
え?
そんなに耕地があるのか、だって?
ないよ?
牧草地にオーツ麦の種もみ撒きました。
オーツ麦なら、冷涼な土地、やせた土地でも作れるから。
あとライ麦とか、ライ麦とか、ライ麦。
たまにジャガイモ。寒冷地でも作れる作物ばっか。
現在そこら中に穀類倉庫を建築しています。
で、貴重な現金収入は、全て小麦に。
その小麦で『乾パン』焼いています。
これはこの大公国だけでなく、フラマンのバロネーズ商会の取引先の貴族領地でもやっている。
イングレッド連合王国は、この冬の凶作のために資金がなく、あらゆる手段で今年の生産を上げようと躍起で。
でもね、今年も小麦じゃ不作なんですよ。
日照不足で。
ローゼンフルト帝国では、フッガールのアントンおじさまが一世一代の賭けに出ている。
安全をかなぐり捨てての商売。というか投機ですね。
商人としては失格?
でもそのくらいしないとローゼンフルト帝国は持たないと見ている。
あの国は三か国のうち、一番寒い。
主食はジャガイモ。
そのジャガイモですら、今回の冷害は耐えられないと見ているんだ。
アントンさんは小麦の先物投機でレバレッジをかけて買いつつ、現物小麦を大量に買っている。
つまり自分で価格を上げて、後で買い戻す。
他の商人が対抗し始め『当てが外れた場合』大損害どころか、商会解散、アントンさんは首くくらなくちゃなんない。
でもやっている。
それは女神の予言らしき何か、「今年の小麦は火山墳火のせいで不作により値上がりしま~す」というものが見事に当たり、小麦価格が暴騰。
もし信じていれば先物相場で相当稼げたと知った時。
たまたまバロネーズ商会が試しに小麦の先物買いをしていて、大はしゃぎしたこともあるね。
あのぽわぽわスウシール様に傾倒し始めちゃったんだよ。
可哀そうに。
それでばんばん小麦価格が上昇中。
あわててバロネーズ商会やロスチャールズ商会が小麦を買い始めたけど、すでに遅し。
もう一般庶民の手の届かぬものとなっています。
でもこれじゃあ、フランス革命じゃなくてフラマン革命が起きちゃうじゃない。
なので、私が貧乏くじを引いております。
銀兌換紙幣を発行。それで小麦を買って少しだけど安く流通させています。特に下町のパン屋さんに。
で、今。
「じっとおててを見るパート2」をしているわけです。
おてて見ながら昨年末の脳内作戦会議を思い出した。
◇ ◇ ◇ ◇
「では第1回外交戦略会議を開催しま~す」
私の前には、4名のブレインが集まっています。
脳内だからホントのブレインだね。
まずは、私の経済学部での指導教官。
国際政治学者の小栗教授。
次に、陸上自衛隊で私が十一戦車隊の90式戦車を運転をしていた時の上官。
沖田三尉どの。
3人目はどうでもいい、私が大好きなWeb小説を書いている天野氏。
4人目は、天使スマイルの本物ユーリアちゃん。
「では今回の
『日本人だったらさ。豊穣の女神、豊受の大神さま、でよくね?』
いつものごとく、どうでもいいとこにこだわる天野氏。
だからいつまでたっても書籍化作家様になれないんです。
『由利君。君の最終目標は理想の教育、学校を作る事でよいのかね? だったらまずはマズローの五段階欲求説ではないが、生存を第一に考えねばならんな』
いつもながら的を射ている小栗教授。
心強いです!
『ということはだよ。今回の未曽有の冷害を乗り切るために必要なものは、
そうですね。
先立つものは金。
そしてそれを稼ぐための人材。
このうち人脈だけは化粧品販売である程度確保できている。
三大国の商業にがっちりと食い込んでいます。
まだまだ化粧品部門だけだけど、それを元にして様々な貴族人脈も広がっている。
自分が大人だったら、今頃世界中を飛び回っている所だね。
代わりにアントンさんやカメリアさん、アムシールさん達が商売を手伝ってくれる。
大分儲けさせてあげたからね。
『今はお金を借金してでも使わないといけない。まずは当面の食糧確保だが、食料高騰は民衆の不安と不満をあおる。
それを押さえるために政府は不満のはけ口として戦争を起こすことが多い。
よって誰かがこれを押さえねばならん』
「それを私がやれと?」
無言の圧力が怖いんですが。
「仕方ないですね。戦争が起きれば飢餓で餓死者どころではないです。スウシール札を刷り始めますか」
そのための銀はアントンさんが用意してくれた。少しの間は持つでしょ。
『由利陸士。忘れてはいけないことがある。対外戦争よりも悲惨なものは何か?』
沖田三尉殿がいつもの凛々しい口調で質問してくる。
「はいッ! 内戦であります!」
『よろしい。だがもっと大量の死者が出ることがある』
なんだろ?
疫病かな。
『革命だ。ポル=ポトは数百万。スターリン・毛沢東は数千万の死者を出す革命を起こした。革命に伴う粛清だがな』
そうだ。
忘れていた。
現在の王政を一気に転覆させると気が遠くなる人死にが出る!
何とかしなくちゃ。
そうでないと学校どころじゃない。
何とか、何とかしなくちゃ。
『使用可能チートを多連装発射するしかないんじゃね?』
気の抜けた声で重要なことを提案してくる天野氏。
そうだよね。
それしかないよね。
全チート砲発射!
出力120%、いや200%で全方位攻撃だぁ!
『由利ちゃん、由利ちゃん。顔が劇画タッチになっているよ』
ユーリアちゃんの優しい声は私には届かない。
死なせないよ。
苦しめないと誓ったんだ。
自分の教え子だけは。
先生はやるよ。
大飢饉を乗り切ってやる。手が届く範囲の人類を飢えさせない手を考えてやる!
戦争などさせない。
全ての持ち駒を手放して未来をつかむんだ。
それにはアントンさんの元で作られている、あの新技術がいつつくられるかにかかっている。
頑張れアントン!
君は異世界救世主伝説のヒーローだ!
あのデカっ腹おじさん。
うまく行ったら写真機作って世界中にブロマイドを輸出しよう。
聖アントン。セイントアントン。
なんかアニメっチックな名前だねぇ。
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