第7話:〇〇との遭遇




 唐揚げを全種類買って、スキップしたい気持ちを抑えてテーブル席へと向かいます。

 カリナン様がポテトフライを買っていたけれど、それも沢山たくさんの味があったみたいでオススメの3種類を買っていました。

 私は唐揚げが気になり過ぎて、カリナン様には注意を払っていなかったので、実はよく判っていないのです。


「本当は冷えたスプリッツァーが欲しいところなのだけど」

 空いている席を見付けて座り、買った唐揚げとポテトフライ、鳥串やサラダを並べていきます。

 一人で食べるつもりだったのに、なぜかカリナン様と一緒に食べる事になっていました。

 今もパンとおにぎりを買いに行っているのです。


 見た目に依らず、かなりな大食いのようですわね。

 私?普通ですよ、普通。

 成人男子と同じくらいしか食べません。



 蓋付きの物はそのままで、蓋の無い物はなるべく外気に触れないようにして、カリナン様を待ちます。

 テーブルに影が出来たので、誰かが立ち止まったのだと判りました。

 カリナン様だと思って振り返ると、そこには出来れば会いたくない二人が居ました。


 元婚約者と、自称親友の……誰さんだったかしら?

 相変わらず露出の多い服ですね。

 その服はもうひとつ上のサイズにして、胸元のボタンを開けるのは、せめて2つ迄にした方が上品ですよ?

 お腹が見えているのは、胸に服が取られているという巨乳主張なのでしょうか?


 元婚約者は今まで腑抜けてたくせに、私と目が合った途端に元気になりました。

「ペレーザ!何だ、一人で淋しいな!しょうがないから俺が一緒に居てやろう!」

 気持ち悪っ!

 なぜそんな結論に至ったのか、頭の中に詰まっているのは納豆ですか?

 いえ。納豆は私も好きなので、違いますね。



「誰の許可を得てそこに居る?」

 恐ろしく冷たい声が聞こえました。

 決して大きくは無い、どちらかと言うと静かな声です。

 それなのに、体が震えるほどの怒りを感じました。

 私でそうなのですから、声を掛けられた元婚約者はもっと感じた事でしょう。


 顔色を悪くして振り返った元婚約者は、面白いくらいに毛を逆立てました。

 尻尾がブワリと太くなり、髪が膨らみました。

「おぉ……!」

 思わず声が出てしまう程の光景です。

 裏のお家の茶トラ猫が喧嘩してる時みたいだわ!



 蓋の空いた瓶を2本と、紙袋を1つ。

 そしておにぎりの載った皿を持っているカリナン様が、招かれざる客の後ろに立っていました。

 肉巻きおにぎりに天むすが見えます。

 やったぁ!好物です!

 それから頼んだ梅干と昆布もあるはず。


「どけ」

 何も言えなくなっている元婚約者を押し退け、カリナン様がテーブルに買って来た物を並べました。

 これ、二人で食べる量には見えませんね。

 同じ事を感じたのか、カリナン様が私の横の席に座りながら苦笑しています。

「買い過ぎたな」

 カリナン様が持っていた瓶を自分と私の前に置きました。

 瓶の中身は炭酸でした。

 ちょっとエールビールを期待していたのは内緒です。


 あら?でも、瓶に直接口をつけて飲むのでしょうか?

 それもちょっと格好良いのでやってみたいですが、一応は年頃の女の子です。

 唐揚げにかぶりつきながら、瓶をあおってる女子は有りでしょうか?


 瓶を無言で見つめていたからか、隣のカリナン様がクスリと笑いました。

「大丈夫、それは割り物だ」

 割り物?

 意味が解らずカリナン様へと視線を向けると、すぐに答えが来ました。

「はいよ、お待たせ。ワイン全種ね!」

 お盆にグラスワインを載せた人がテーブル前に来ました。

 その後ろには、炭酸の瓶を持った人も居ます。


「グラスと瓶は置きっばで良いよ!後で回収するからね!」

 どこかの店員さんなのでしょう。

 愛想良く笑ってそう言うと、元来た方向へと帰って行きました。

 サービスでゴミも片付けてくれるそうです。


 テーブルの上が、まるで小パーティーのようですね!



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