第6話:勝ち負け sideルーフリア
入学式で、先祖返りした豹の獣人が番を見付けて騒いでいた。
他の人達より体格が良く、獣人らしい耳と尻尾がある、今どき珍しい見るからに獣人といった姿に皆が注目していた。
その中での「番宣言」である。
選ばれたのは、普通の女だった。
少なくともルーフリアにはそう見えた。
「あれなら、私の方がお似合いじゃない?」
ルーフリアは獣人にモテた。
特に肉食系獣人の血が入ってる獣人に、とても好かれていた。
その時はそれで終わったのだが、運命の悪戯か、女の方がルーフリアと同じクラスだった。
入学式当日は、軽い自己紹介と学園の説明だけで終わる。
豹の獣人の番とされた女生徒は、ペレーザ・イラディエルという名前で、美人の部類に入るだろうが、体型は平凡だった。
「ペレの親友のルーフリアって言います」
番に会いに来た豹の獣人に、ルーフリアは近付いた。
親友などと、無論、嘘である。
豹の獣人が自分の好みど真ん中だったので、横取りする気満々だった。
肉食系獣人には過去に付き纏われた事も有り、その時に「お前には、肉食系の本能を刺激するフェロモンが有る」と言われたのだ。
その男の言った通り、ルーフリアは肉食系獣人にはよくモテた。
但し、人間の男には軽い女だと見られたし、同性には人間獣人関係無く嫌われた。
もっとも、同性に嫌われた原因は、ルーフリアが相手を下に見て馬鹿にしていたからである。
好みの男、しかも最近では珍しい肉食系獣人の男を横に連れて歩く優越感。
番だけは特別だという獣人らしく、ソーベルビアもルーフリアをとことん甘やかした。
休み明けなどには、何となく態度が素っ気なかったりしたが、ペレーザの視線がソーベルビアへ向くと、ルーフリアを甘やかすのだ。
その違和感を感じつつ、ルーフリアはそれを優越感へと変換した。
結論から言うと、ルーフリアは勝った。
番から豹の獣人を奪い取る事に成功したのだ。
今時の獣人は血が薄く、番認識機能というか本能的な物が昔より劣っているので、番を勘違いする者も多い。
豹の獣人であり、先祖返りしたソーベルビアも例外では無かった。
ルーフリアに言葉巧みに騙され、本当の番であるペレーザを捨て、ルーフリアを選んでしまったのだ。
「お前との婚約を破棄する!」
その一言から運命が変わっていった。
教会で婚約の解消の手続きをして、さあ!薔薇色の未来が待っている……はずだった。
『番の婚約』が解消され、ペレーザとは絶対に結婚出来なくなった瞬間に、ソーベルビアは呆けて動かなくなった。
それが番の消失現象であるなどと、ルーフリアが知るはずも無く……。
試合に勝って勝負に負ける。
すぐ近くに番が居るのに、魔法契約により結婚する事が出来無い。
地獄のような日々に、ソーベルビアは活力を失っていく。
「ねぇ、街に買い物に行こう?」
「……あぁ」
反応はするが、常にルーフリアが引っ張り回しているだけで、二人は学生時代のような楽しい時間は過ごせなくなっていった。
「公園に話題の屋台があるの」
ルーフリアはソーベルビアを公園へと誘った。
話題の屋台が有るのは嘘では無い。
ただし、その屋台にこの世のものとは思えぬほど美しい天人が買いに来ると話題になっていたのだ。
人が大勢いる場所、特にデートスポットに一人で行くのはモテない女だけだと思い込んでいるルーフリアは、無理矢理ソーベルビアを公園へと連れ出した。
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