第5話:素敵な出会い?




 私の横に立つ天使のような天人カリナン様は、見た目に反してとても豪快な方でした。

 まさか初対面でホットドッグを差し出されるとは思わなかったわ。

 丁度お腹が空いてきたので何か買おうと思っていたので、有難く頂戴する事にしました。


 ウインナーと一緒に挟まっていた野菜が、甘酢に漬けてあるキャベツの千切りで、ケチャップやマスタードと絶妙なバランスの味!

 いつものホットドッグよりも、数倍美味しいと感じるほどです。

「美味しい!」

 私が言うと、カリナン様は満足そうに「そうだろう」と笑いました。



「あの揚げ物屋台もオススメだぞ」

 カリナン様が言うのに「行きましょう!」と、その手を取り立ち上がりました。

 あ、しまった。

 初対面の異性に対してして良い行動ではありません。

 そっと手を離して無かった事にしようとしましたが、カリナン様は私の手を握り返し、笑顔で立ち上がりました。


「唐揚げがニンニク塩とレモン塩とか、他にも醤油ベースの味とか色々有るぞ!」

 カリナン様は私の手を引き、揚げ物の屋台の列に並びました。

 その時に手を離されて、ちょっと残念に思ったのは内緒です。


 でも、それはしょうがないですよね?

 だってカリナン様は、周りの人全てが見蕩れるほどの美貌の持ち主なのですから。

 背が高くて体つきもしっかりしているし、到底女性には見えません。

 それでも形容詞は『美人』が1番しっくりくる気がします。

 そのような方が自分と親しく接してくれるんですよ!

 その優越感ったらもう、わかりますよね?ね?



「ん?どうした?」

 あまりにも見つめ過ぎたのか、カリナン様がこちらを向いて目を細めて聞いてきました。

 作り物のように綺麗な顔なのに、カリナン様は表情豊かです。

 その意外性がまた魅力を増しています。

「お顔があまりにも綺麗なので、見惚みとれていました」

 私が素直に答えると、一瞬目を大きくした後に、豪快に声を出して笑い出しました。


「そうか、綺麗か。そうか!俺は人生で初めて、この顔に感謝したぞ!」

 言われ慣れていると思う賛辞を、カリナン様はなぜか喜んでいます。

 照れ臭くなり、私は揚げ物屋のメニューへと意識を向けました。


 そこでふと先程の話を思い出し、番の話をします。

 カリナン様は天人なので、番衝動が有るのだろうと思ったからです。

 そこで番が同じ寿命になる仕組みの話をして、その流れで私に番が居た話もしました。

 そう。居た、です。過去形です。



「その……番と結婚出来なくても良いのか?」

 カリナン様が聞いてきました。

 何となくですが、周りの方々も会話を聞いている気配がします。

 見た目では判断出来ないのですが、獣人の方も居るのでしょう。


「私は人間ですから、番というよりも、その人本人の資質を大切にします。婚約翌日から私と正反対の女子をはべらせる婚約者など、愛せると思います?」

 思わず力が入ってしまいました。


「正反対?」

 カリナン様の問いに、私は身振り手振りであの浮気相手の体を表現します。

 巨乳で、お尻が大きい、あの肉感的な体つきを。

「ブフッ」

 カリナン様が吹き出しました。

 思わず睨みつけると、笑いを堪えながら「ゴメン」と言いますが……視線は私の胸です。

 すみませんね、ささやかな膨らみで。

 これでも貧乳では無く、平均的な大きさですからね?



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