第16話 冒険者。
「で、ヴェネいや姫様はどうなされるんです?。」
グランデッシュ大使は王国では伯爵にしか過ぎないが、大使として外国にいる間は
侯爵としての地位と俸禄が与えられる。
ちなみに彼の妻は私の母の幼少期からの友人であるのでまぁ味方と思われる。
そんなわけで今のポストなのかもしれないけど。
「小父様はどうしたら良いと思われますか?。」
「ふむ、私はねヴェネいや姫様が女王になったほうがいいと思うけどね。」
「で、戻ったらなれそう?。」
「いや、王宮内では死んだことになってますからねぇ・・・。」
「う~ん、まぁいいか。やっぱ冒険者でもやるわ。」
「「「「えっ?。」」」
「「「いやいやいやいや。」」」
ギルドの受付嬢に護衛や他の冒険者(野次馬)達の目が集まる。
仕方なくという感じで受付嬢は話しかける。
「あ・あの姫様でしょう?。国民のために女王になる義務とかあるのでは?。」
「あっ、でもそれ第二王女がやりたいって言ってるんだし、やればいいんじゃ
ないかな。」
「しかし、それでは今の女王様とか王様とかが・・・。」
「えっ、私死んでるらしいし、好きでもない男と結婚するなんて~あなたできる
の?。」
「そ・それは・・・。」
と周りに助けを求めて口ごもる受付嬢 ラメリア22歳。
彼女は自分の器量と才能に群がる主に冒険者の男どもを選り好みし、
結婚できないので適齢期を逃したことに最近気づいた女であった。
それもこれも彼女の想いに気づかない朴念仁なギルドのサブマスターが悪いのだが、
それはともかく話は進む。
「さて、方針も決まったし冒険者でガンガン稼ぎましょうか。」
「いや、お嬢さん冒険者と言うのはそんなに甘い商売じゃないんですが・・・。」
「でも、ギルドにいた人たちでもできる仕事でしょう?。」
俺はギルドで飛ばした3人組のことを思い出しながら話したのだが、若干自分たちの
ことだと思った人たちもいたらしい。少しその場の空気が悪くなる・・・
「もっとも、私は初心者ですから簡単なものからでしょうけど。
小父様しばらくこの町でお世話になりますわ。」
グランデッシュ大使はやれやれといった感じで席を立ち、窓際まで進んで外の街並み
を見ながら俺に話しかけてくる。
「姫様・・・とはもう呼ばない方がよろしいのでしょうな。」
「そうですね、私は幽霊ですし別の名前の方が、」
その時、部屋のドアがノックされメイドが入ってくる。
素早く大使に近づくと何事かを伝えて部屋を出た後入れ替わるように、
ブロンドの髪を結い上げた妙齢のグラマラスな女性が入ってくる。
「ヴェネ!まぁまぁ大きくなって。」
あっという間に近づいてくると抱き上げられて抱擁される。
彼女が大使の妻であり、私の母の幼馴染であり大親友のバーバラ・ラド・グランデッ
シュであった。
「小母様、お久しぶりです。でもあの他の人の目もありますし・・・」
「あらあら、少しはしゃぎすぎたかしらね。」
彼女にとってはその部屋にいる有象無象はどうでもよい背景にしか過ぎなかった
ようだ。
そのあとは、彼女と共に亡き母の思い出話を聴かせてもらいながら数日を過ごしたと
思う。
ギルドからついてきた面々がどうなったのかは分からない、気が付いた時には大使館
から連れ出されて大使邸に行ったからな。
数日後の早朝、眼が覚めたときは珍しく小母様はいなかった。
連日、目覚めたときから眠りに落ちるまで、そばには彼女がいたのだ。
デリンもどこかに行ってしまったのか、気が付いたときは傍にいなかった。
「やれやれ解放されたか、とりあえずはこの街から出た方がいいだろうな。」
いつまた小母様に捕まるかもわからんし、何より本国に漏れる可能性が高い。
そうなると厄介だしな。
「よし逃げよう。」
そう思って周りを見渡すと、この部屋の中は壁から床、天井に家具に至るまで
ーピンクーだ。
ベッドの天蓋からシーツに布団すらピンクだ。なんだこのバービーちっくな空間は
〇テルの社内か?。というか誰のための部屋だここ・・・。
とはいうものの、この数日はここで寝起きしてるんだけどな。今朝は小母様がいない
お付きのメイドもいない、あの二人が飛び込んでくるその前に逃げ出さないと。
【通話】【デリン】
「聞こえるか?どこにいる。」
「すぐおそばに。」
そういうと壁の一部が膨らんでそこからメイドが湧き出てきた。
「デリンか?。」
「はい、この姿の方が違和感が少ないかと。」
確かに今ここに小母様が入ってきても問題はないだろうが、その恰好なら壁から
じゃなくて、ドアから入ってきた方がよくないか?。
「まぁいい、逃げるぞ準備をしろ。」
「なぜです?。」
なぜって、お前ここに居ればいるほど本国の第二王女派に嗅ぎつけられるかも
しれないからに決まってるじゃないか。
第二王女派の手先のものが大使館員にいるかもしれないし。
「それはないです。」
「大使も夫人もしたたかな人物のようですよ。」
「どういうことだ?。」
「いえ、大使夫人がマスターを引き留めている理由を知ってますか?。」
「引き留めている?。」
確かにそういえなくもないが、なぜそんなことをする必要がある?。
ただの親友の子だぞ、下手すれば自分たちの身が危ないかもしれないのに。
「でも、大使夫人はそう考えてはないようですよ。夫人はマスターのことを
親友の忘れ形見として、本国から離れてしまって一番大事な時に支えに
なれなかったこと。
そして、今回の事故に見せかけた暗殺事件を仕掛けた相手から守れなかったことを
後悔しているようです。」
しかし、それは彼女にはどうにもできなかったことだろうに。
「彼女は母親を失ったマスターのことを自分の娘のように思ってるようですよ?。
親友が亡くなった時から自分がその代わりを務めていれば、こうはしなかったもの
をと考えているようです。」
ありがたいことだよな。でも記憶を、前世の記憶を取り戻して、いささかチートな力
を持った俺にはひつよう・・・
「必要ないですか?人間とくに寿命の短い人族には縋れるもの、寄り添えるものの
存在が必要だったと記憶してます。精神(こころ)が帰る場所がいるでしょう?。」
デリン、痛いとこをつくなぁ確かに独りでは立ち行かないときがあるよな。
味方が、いるよな。
「友達が・・・必要だと考えているみたいですよ、できればマスターの母上と自分の
ような関係の友達や恋人が。」
いや、しかしそれは弱点にもなる危ういものに。
「親友の一人や二人まして、恋人くらい守れるでしょうマスターなら。」
まぁ不可能ではないか、いざとなったらあの大陸に逃げ込めばいいし。
「そうです、三つのしもべにご命令を!。」
そうそうって、お前あと1体隠してるのか「アーパス」はしもべなのかなぁ?。
「・・・残してきたゴーレムを合体させれば巨大ロボットくらいはできますよ?。」
む、確かに軽く十数体は作れそうな気がする、そうなれば後は怪鳥を何とかすれ
ば・・・って、デリンも「アーパス」はいない前提らしい。
「古代種ドラゴンでも探しますか?」
いるのかドラゴン?、まぁいるかもしれないなファンタジーな世界だし。
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仕事が始まるので、更新が開くかもです。
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