第15話  帰ってきたのかな。

「と、いうわけで帰ってきたの。」



戻ってくるまでの行程を大幅に省いての報告であった。



「「「そこからどうやって???。」」」


「「「端折りすぎだろう・・・。」」」



その場に居合わせた全員の声だった。



ここは、アズラール王国に隣接する港湾都市国家ポルダムにある王国の大使館


である。大使館ではあるが、なぜか冒険者ギルドの面々もいる。


一応この世界でも大使館の敷地内は治外法権になっている。


ここまで安全に連れて行ってもらえるように依頼したからだ。


あれから「アーパス」は10日間、テリトリー《縄張り》を巡回してから


北大陸の端っこに接岸してくれた。そこで「アーパス」とは分かれて


近くの街へ向かい、そこの冒険者ギルドで護衛依頼を出してここまで


連れてきてもらった。


幸いお金は沈没船の中にあった、アズラール王国の貨幣が使えた。


まっすぐに国元に帰らなかったのは情報が少なかったからだ。


遭難した自分がどういう扱いになっているのか?


その確認もなく戻ったのではどうなるかわかったものではないからだ。


王女が単独で奇跡の帰還?。誰が信じるというのか。偽物扱いされてことの真犯人に


よって処理されてしまうかもしれないではないか。


ちなみに、途中でアズラール王国の捜索隊との戦闘もあった。


極めて友好的に合流したあと、俺が依頼した冒険者たちを邪険に扱い出したので警戒


していたところ寝込みを襲われそうになったので、返り討ちにしてやった。彼らは


確かに王国の正規の騎士団ではあったが、第二王女派を標榜する貴族の息がかかった


ものだった。というか捜索隊に出ているものはその全てが第二王女派だそうだ。


口を割った彼らの馬や糧食、資金を回収してそれを存分に使ってここまで


やってきた。捜索隊の方々は首だけ出して埋めてきたから、そのうち魔獣か普通の獣


の腹に収まると思うー知らんけど。


で、とりあえず国元に帰る前に冒険者やるのもいいかなぁと思ったんだけど、


冒険者ギルドで手続きをしなければ冒険者にはなれないというので、


まずギルドに来たわけで。


そこで手続き中に経緯を簡単に話したら、お約束どおりに絡んでくる輩が居た。



「「・・・人と言わず近づくものを惑わして飲み込む山ねぇ?。」」



ギルドの受付嬢と護衛のベテランハンターがハモるように言ったときに、


聞き耳を立てていただろう冒険者のグループが絡んできたのだ。



「がっははははっ。」


「山が人を食らうだと法螺も大概にしやがれ。」


「いや、兄貴餓鬼が見た夢の話ですぜ。」



いかにもな連中が、ギルドの酒場の方からアルコールの匂いとともに近づいてくる。


護衛のハンターが守ろうとするが、それを押しのけるようにして俺に顔を


近づけてくる。


こいつロリコンじゃないだろうな、などと考えながら無詠唱で転移魔法を


発動させる。



「いや~口臭い。」



と言って消し飛ばすと、二人目が「何しやがる。」とよってきたので



「あ~酒臭い。」



といってタッチして転移させる、ついでに残った三人目が喋る前に



「体臭~い。」



で転移させると、護衛のベテランハンターが信じられないものを見る目でこっちを


見てるし、酒場はもちろん喧騒で溢れてたギルド内がし~んとしている。


そして、受付嬢が恐る恐るという感じで、口を開いた。



「あの~彼らはどこへ?。」


「えっ?あの人達が信じられるように、その山に。」


「「「「ひ、ひでぇえええ。」」」」



我に返った護衛の一人がつぶやくのは、あとで誰もが疑問に思うことだった。



「・・・って、海の彼方まで飛ばす魔力って、それS級の冒険者でも


無理なんじゃ?。」



ただ、彼は護衛であり前金でかなりの金額を手にしていたし、いらないことを言って


彼らの後を追うことはしたくなかったので、つぶやくにとどめたのだった。


それでも彼の雇主に、ちらっと見られたのだが。


受付嬢はそれでも怯まず俺に聞いてきた、プロだねぇ。



「あっ・・・と、送ったってことは戻せるんですよねぇ?。」



だから俺も答えてあげたよ、当たり前じゃない見た目はともかく中身は大人だし。



「無理。」


「えっ?」


「今のレベルだと、触ってないと無理。」


「「「「えええええっ~。」」」



そんな驚かなくてもいいじゃん、ってかそんな簡単に移動できたら色々問題が


出るじゃないのかなぁ?ほら流通とか軍事的にとかさ。


そのあと手続きが完了したので、護衛と何故かそれ以外の冒険者やギルドの


受付嬢とかをぞろぞろと引き連れて、やってきましたアズラール王国の大使館。


ここで冒頭に話が戻るわけなんだよ。


で、俺が回想してる間にも話は進んでたりする。


やはり国元では俺が死んだことになっていて、近々国葬を出すようで各国に触れが


回っている。


同時にその席で次期女王候補に第2王女が指名される準備が進んでいるのだとか。


う~ん、そんなに欲しいかそんな地位というか国が、今となってはさして広いとも


資源が豊かでもない土地だぞって思うのは、あの広大な多分無人の大陸を見たから


だろうなぁ。


広大な国土も資源も人がいればこそかなぁ~わからんけど。




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