第11話 山に落ちる
山上に近づくに連れてガスが出てきた。
さらにそのガスに紛れて幻影が見えるようになる。
「これお前のピラミッドと似てるな?。」
「真似されたかな。」
デリンがボソッと呟いた、ゴーレム達は進むよどこまでも・・・って山なんだから
頂上を過ぎれば下って降りることになるんだろうけども、それではなぜ山を登ってる
ということを知られないような事をしてるのか?という疑問が残る。
「マスター!。」
突然デリンから声を掛けられ、更に襟首のところを持って一気に後方に引かれる。
「ちょっと、首が閉まる。」
「前を見て!。」
振り返って前を見ると、ゴーレム達が見えない。いや落ちて行ってるのだと気が付く
のには少し時間がかかった。
「幻影か・・・。」
デリンは俺を抱えて後続のゴーレムを足場にして後ろへ後ろへと飛んでいく。
「マスターゴーレム達を止めて。」
【全体停止】【止まれ】
「だめ、止めれない。」
「たぶん、魔法が使えない。デリン、私がイメージするのに変身して。」
そういうと強く頭の中で空を飛ぶ動物をイメージする。
「羽ばたいて、飛んで!。」
デリンがイメージに従って変身していく、可変種であるが故の特長である。
俺は当然のようにその体内に取り込まれている。
選んだのは「ガルダ」インド神話に登場する神鳥で、鳥の頭部に人間の体で、
両腕があり足は鳥で、背中に猛禽類の羽をもつんだが、俺を取り込んだためになんか
妊婦のようなお腹になっている。
ゴーレムと地面が遠ざかっていく、物理的には飛べるようだな。
魔力的には無理のようだが、地面から離れ高くそびえる木々から空中に飛び出す。
「デリン、気をつけろあの甲虫が来るかもしれない。」
遠ざかるにつれて山の山頂付近がどうなってるのかが気になる。
ガスの中から出てから少しづつ魔力が回復してきている。
ここからなら魔法が使えそうだ。
【グレート・トルネード】
風系統で今解放されている最強の魔法を使ってガスを吹き飛ばして山頂を見てやろう
という目論見である。
「マスター、甲虫来ます。」
「距離をとれ。」
【インフェルノ・フレア】
「だめか、あのガスが魔力を吸収するのか、ならば。」
「デリン、少し時間がかかるので甲虫はまかせた。」
(イメージはレンズだな、収束させる高度は・・・。)
使う魔法は【熱】系統、この
時空魔法で大気中の水分を転移させて、氷の凸レンズを作る。
「照準合わせ~よし。」
太陽の光を凸レンズを使って一点に集めて火をつける、小学校の理科の実験で
やったことがあるやつだが規模は桁違いにでかい。
そして集めた光は目標の山頂付近の木々を薙ぎ払うがごとくにあたり、
一瞬で燃え上がる。
炎を魔法で起こすことはできなかったが、物理的には燃やすことができるようだ。
あの森林の木々が出すガスは魔法とそれに伴う現象は吸収するか、中和してるようだ
が物理的なものはそうではないようなので、物理的な力で燃やしてやったのだ。
山肌が震えたように見えた、その後に燃え上がった炎は鎮火していた。
「消えましたね、マスター。」
「ああ、消えたな。」
「もう一回点けます?。」
「いや、レンズに使った氷が溶けたし もういいかな。」
山のような大きさの何か(たぶん魔物)から距離をとり、デリンの記憶から人里を
目指すことにする。ただし再び引き込まれないように少し加工したゴーレムを山の
裾野から誘導されるぎりぎりの距離に打ち込んでいく。
その間隔は2キロごとで全周に二度と惑わされないように。
「マスター、ふと思ったのですがこの見渡す限りの大森林。今はどこの国のものでも
なさそうですよね。」
「ん、たぶんそうだな。」
「帰っても国に居場所があるとは限りませんから、ここ制圧してマスターの国に
しませんか?。」
「それもありかもしれないが、ここなんもないじゃん。」
「かっては、ここも大帝国の版図だったので、そのときは人や物が溢れた良い所で
したよ。」
まったく何年前の話やら、百年とか千年単位の昔かな大帝国?。
この身体が覚えている歴史上の大帝国といえば、そう・・・(古代) 「 ルーザリアム
帝国」とか言ったか?。
1万5千年以上前に栄えた国で、南北両大陸を支配下に置いていた人類最強国家に
して現代よりも優れた科学技術、魔法工学を持ちドラゴンと交戦し勝利できる力を
有していた。
エルフ、オーク、ドワーフ、ゴブリン、を支配下に置き、空と海の底深くはもちろん
宇宙にも進出しようとしていた矢先神の怒りにふれ、後に「真の7日間の闇夜」の
と呼ばれる惨劇があり。全大陸からすべてのルーザニアン(帝国人)が消え去り、
エルフとオークは青の月へ、ドワーフとゴブリンは赤の月に移住させられた。
大地には10歳以下の人類しか残らず、大陸全土の文明は崩壊し技術も知恵も
廃れることとなった。
南北大陸の間には、「絶望の裂け目」と呼ばれる深さ10キロ以上幅は平均で5.6キロ
その長さは135キロにも及ぶ深い亀裂があり、伝承が作り物ではないことを
示していた。そして、不思議なことにこの亀裂には海の水が落ちていかないのだ。
「もしかして、その帝国ってルーザリアム帝国とか?。」
「まぁそんな名前だったような気がします。自分たちの科学力に溺れてた固定種です
が、詳しい滅亡の過程でも聞きますか?。」
「それはまた別の機会に・・・それよりもさっきこの辺りも帝国の版図とか言ってた
けどこの大森林の下に、おまえのような別世界から来たものが眠っているということ
はないのかな、例えば~。」
「巨大な鳥とか、とてつもなく巨大な金属のゴーレムとか?。」
「そうそう3つのしもべに・・・て何を言わせる。」
「残念ですね、ここには砂の嵐もありませんのでマスターには私だけです。」
「でもこの惑星にはどうやって来たんだ、宇宙船は使わなかったのか?。」
「・・・私達の船はこの惑星の衛星軌道上にありました。今もあるでしょうか?、
あれはこの惑星にあってはならない物です。」
「その力は大地を切り裂く?。」
返答はなかった、ということは肯定であるとみる。やはりなという思いがある。
「真の7日間の闇夜」によってできた「絶望の裂け目」これは前世の記憶を持つ
俺なら推測できる。
衛星軌道上からのビーム攻撃による大地の分割、まるでSF小説のような話だが
軌道上からの攻撃。混乱するさなかでの種族ごとに選別し、衛星とはいえ長距離の
大量移送も、恒星間航行を可能とする種族が行ったとすればそれは神の御業に
みえただろう。
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