第10話 横に落ちる

壺から出てきた魔神ならぬ可変種のデリンの道案内で見事に道に迷った。


不毛な会話に疲れた俺は見通しの悪い密林の中では埒が明かないので、


空から確認することにした。



「もういい、少し待て。」



そうデリンに言い残し、俺は仕方なく浮遊の魔法を使って木々の上に出て方向を


確認する。


ピラミッドと山と海の位置を確認して、目標を再設定するつもりだった。


だが木々の上に出て周りを見回して驚いた。



「じ・・・地面が右下にある?」「お・・・落ちる?。」



【重力】【グラビティ・コントロール】



重力を制御することで落下を防ぎ、空中にとどまって周りを見回す。


先程までの大地が自分の右側、山の勾配面に見える。


本当の大地ははるか下にある。どうなっているのかわからないが、


俺は迷いながら遠方に見えていた山を登っていたらしい。


まったく流石魔法が使える世界だぜ、常識がぶっ飛んでる。


俺は風をスラスターのように使って、ゆっくりと先程までのジャングルの木々の方に


身体を寄せていきデリンを呼んだ。


木を素早く登ってきたデリンをひっ捕まえて、木から離れて周りをよく見せ、


進むべき方向を決めさせることにした。



「ほーなんか不思議な光景ですねマスター。全然登ってる感覚はありませんでした


が。」


「ふむ、ビックリ生物のお前が言うのだから深刻だな。」


「ビックリ・・・酷いですね、そも我ら可変種はこの次元宙域に固形種の観察と調査


という崇高な使命のために訪れ、野蛮な原住民であるルーザリアンと交流を


図ろうと・・・。」


「るーざりあん?」



デリンの言うには、この惑星は大きな大陸が2つあり当時は一つの国が統治していた


という。その国の名は、「ルーザリアム帝国」魔法と科学が調和し発展した珍しい


文明の進展形態に興味を惹かれて、平和的(デリルなりに)に接触を図ったところ


捕縛されて研究対象にされた。


かなり、その扱いは酷いもので最終的に帝国を殲滅する切っ掛けになった。


最初に聞いた時よりも詳しい内容は人型になって話をつづけたから、


人の言葉を思い出したらしい。



「で、ここら付近はわかるのか?。」


「正直言うと、周りの地形が記憶と会いません。どうもこの山が怪しいんですよね、


いっそのこと頂上まで行ってみませんか?。」


「~まぁいいか、急いでるけどそれ程でもないから、それで方向が分かるのなら


そうしようか。」



但し、さっきまでの地面を歩くのは危険かもしれないので、歩いて頂上まで行くのは


ゴーレム達だけだ。俺とデリンはこのまま空を行くことに・・・。


決めた途端、何かが高速で飛来して体に当たった。その衝撃はデリンによって方向を


変えて逸らされてしまったが、数百メートルは弾き飛ばされた。バランスを戻しつつ


身体の周囲に対物理障壁を張っていく。もう一度来るかもしれない、そう用心しての


対策だった。


この世界、魔法が普通にあるのだから、当たり前のように魔物も存在する。


そして多くの魔物は人族を嫌悪しているなぜだかわからないが。


高度を戻しつつ迎撃のための魔法を準備しているときにそれが戻ってきた。


今度は障壁にぶつかった、思いっきりガツンと音がしたのは障壁が


壊れてからだった。


何かが落ちていく、なんだろう?そう思ってるとそばで声がした。



「マスター、こんな形でしたよ。」



前世で見たカブトムシを掃除機ぐらいの大きさに引き伸ばしたデリンがいた。


昆虫か・・・魔虫になるのかなぁ~とか考えて降下していく。


形状は分かったが昆虫だと、もしかしたら生きてるかもしれない。


昔公園で遊んでるときに、蟻を捕まえて滑り台の上から落としても、


ジャングルジムの上から落としても平気で歩いて行かなかったか?。


あいつらしぶといからね特に黒いGは、と思い出したので魔法で準備をする。


熱湯を球体状に保持しておく、いつでも体全体にかけれるように。


果たして地面に近づくとすでに虫はいなかった、逃げたのかとも考えたが近くに他の


魔物の反応があったので、地面を見ると何か大きいものを引きずっていったあとが


残っていたので、恐らくはその者たちの餌か何かになるのだろう。


また別のが襲ってくるかもしれないと思い、高度を木々の少し上に抑えて残してきた


ゴーレムの方に向かう。木々の間を飛ぶのもありかなとも思ったが、


ふとカブトムシぽいのがいるなら、蜘蛛がいてもおかしくないともって


やめておいた。


ゴーレム達が行軍を止めている場所に戻り、えっ引かれるなんで?。



「おっ、落ちる??。」



重力制御で飛行中に横に落ちるとは、なんたる理不尽なんたる不条理、非常識~と


言いながら引き付けられる方に落ちていく方向に浮遊の魔法で速度を制御して向きを


変えて木々の間を降りていき、大地に立つ。


指揮ゴーレムに新たな指示を与えて山上を目指すことにした、飛行していくことも


考えたが山肌へのバカげた吸引力と通常の重力とのバランスを取りながら、


先程のような飛行系の魔物と戦闘はかなり難しい。地上を行けば魔物はゴーレムで


駆逐できるしそろそろ日が暮れる空中で野営はできないしな。


山上に近づくに連れてガスが出てきた。


さらにそのガスに紛れて幻影が見えるようになる。


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