第5話 眼の前には木々の間から空がみえる。

 目覚めたときは、少し日が傾きかけていた。


腹減ったな・・・お昼寝前にたらふく食べたはずだけど。


先程の浜辺に戻るべく樹から降りて歩き出す。


そうして、砂浜とジャングルの境界線まで来た時に違和感を感じ、


マップの右上にあるレーダーサークルを見ると赤い点が迫ってきている。


ジャングル奥の方からと海の方からの2つ、二つの光点はそのまま行けば接触する。


えっとこれは、なんかやばそうだなと砂浜の方に少し下がり、


先程のように魔法を使えばいいものを、視界の中にある本のアイコンが点滅するのに


つられて、本のアイコンに意識を集中するとでた【土】の後ろの(T)に意識を


集中すると、視界にツリーが表示される。


ハイライトされてるものとそうでないものがある中から


一つを選び、それに意識を集中する。【土】【ガード】【ドーム】


イメージするのは、半球形のドーム。シェルターの魔法です。



身体の中から何かが抜けていき周辺の砂に作用するのを感じる。


あと大気中の水分を集める感じもあるそして、


光点の注意を思いっきり引いてしまった気もする。


ジャングルの方からは、額から角をはやした虎もどきが現れた。


体格は地球の虎よりも大きいのかな、黄色と黒の縞模様は同じにみえるけど。


但しこっちが小さくなってるので確証はないけれど、まぁ同じ大きさでも


やばそうなのは変わらない、ヘイトも集めまくってるみたいだし


ーなんでだろう?わからん。


出来ればこっちに来るまでにシェルターが完成して欲しい。



一方、海の方からはトドいや、セイウチかな?。


確か牙がある方がセイウチで、ないのがトドだったと習った気がするけど


なんて、前世の無駄な知識を思い出しながら相手を見るが、


変な禍々しさがあるし、牙に螺旋もあり体色も鮮やかな赤が基調で、


黄色いぶちが体中にある。


しかし、お前も速いなぁ基本前足というかヒレで体を引きずってるように


見えるんだけど、これが鬼みたいに速い。


二匹はお互いの姿を認めたのにもかかわらず、こっちに向かって来る。



「ズワァア」という感じで俺の周辺の砂が持ち上がっていく。


俺の周辺に高さ10メートル、幅10メートル、厚さはわからないが、砂でできた壁が


立ち上がった。でも前が見えないなっと、考えただけで目の前の壁に幅20センチ、


高さ10センチの穴が開いて向こうが見えた。魔法便利だな。



虎の方が早いか、視野の中央でとらえていると名前が出た 【ホーンタイガー】。


額の角の周りに赤い靄のようなものが纏わりついてるのが見えるな、


そのまま突進してくる。今のうちに他の魔法を考えないと、


本のアイコンの中の【風】の後ろのTに意識を向けてツリーを展開する。


その中でハイライトしている中から一つを選び、それに意識を集中する。



【風】【裂く】【ホーンタイガー】発動しない。



正面の壁に重い何かがぶつかった様な音と衝撃が、壁を揺らしたあとにも再び衝撃


が、先程の倍程で走る。



「ズウ~ン。」「ドシ~ン!!。」というように。



砂で固めた壁が揺らぐような衝撃が数度繰り返される中、焦りながら先程のワードを


検討する。何かが違う、イメージが足りないのか?。


もう一度、【風】【切り裂く】【ホーンタイガー】


イメージは虎の胴体を、切り裂く風の力。



壁が邪魔でその結果が見えないが、壁に当たる衝撃が止まった。



先程開いた窓?から外を見ようとしたとき、天蓋の部分にひびが入った。


外れたのかもしれない、さらにひびが広がろうとしている。


不味い、何か考えないと崩れてくる。


とりあえず外を覗く、何も見えない・・・見えないけど気配は感じる上にいる。




あえて、外へ出て天井を崩して砂の中に埋めるのはどうだろう?。


どっちかが外の地面にいると、守りがなくなるけど。


よし、手順を確認する。


1.外へ素早く出る


2.ドームを一気に崩して、天蓋に乗ってる何かを大量の砂で埋める。


3.表面をガラス状に固める(中から出にくくするため)。



ん、最初でつまずいたな、砂地で足を取られまくる。


飛べたら、天井に穴をあけて飛び出して空中からドームを崩せばいい。


【風】が風系統の魔法なら、飛べるはずなんだけど。


ツリーの中から使える物を・・・おっ、ハイライトされてる部分が少し増えている?。



赤(HP)や青(MP)、黄色(SP)のバーが変わってる。


2,200/2,200HP   2,500/2,500MP 1,800/1,800SP と数字が変わってる。


これは、まさかのレベルアップということは虎もどきは死んだわけで。


ツリー表示を見直すと。


【ジャンプ】【フロート】【フライト】【ダイブ】


使えそうだ、穴をあけて【ジャンプ】して【フロート】すればいい。



天蓋部分のひび割れが更に大きくなってきた。


上にいるのは、セイウチもどき。どうやって10メートルの壁を上ったのかは謎だけど


そろそろ落ちてきそうだし、試してみるか?



ここに穴を掘って隠れるという選択肢もあるんだぞ?


心の中で、誰かが話しかけてくる。元の俺か、この体の記憶を取り戻す前の俺か?。


隠れて、どうなる?。 


相手は前世の俺が知らない未知の海獣、砂の中どこまで潜れば気づかれない?。


打って出る、それしかないじゃないか?。


弱気になってもこの状況は変わらない。



「ドワッ。」という轟音とともに天井が落ちてきた。


それとともに、「ズシシン~ん。」と何か重いものが落ちてきた音がした。



重い物?決まってるじゃん、セイウチもどきじゃないか。


【ジャンプ】【フロート】【自分】 すぐさま魔法のワードを唱える。


・・・あれ?・・・


じゃんぷもしなければ、体も浮かばない。おかしいなと考察する暇もなく


やつが迫ってくる。



セイウチの移動速度は~なんて考えてる場合じゃなかった。


視界にせまる巨大なセイウチ、足はすくんで動けない。


動けないけどなんとかしなくっちゃ。


今使える魔法の種類は【火】【水】【風】【土】


【火】【ボール】イメージするのは巨大な火の玉、前方に向けて弾き出す。


「ずご~ん!」という音を残して、目標に当たった。


えっと・・・イメージはバレーボールくらいだったんだけど、


大きさが3倍位になってるしめっちゃ速い速度で飛んでいった。


当たってから音が聞こえたぐらいだし。



ホコリが舞ってよく見えないが今の所動く気配はない、


けど各種バーが増えてないからまだ死んでいないということになる。


それか、実はめっちゃ弱い魔物で経験値がしょぼかったのかと思ったが


距離を取りながら次の攻撃手段を考える。衝撃だけでダメージが少しだったら


【火】は効かないことになる。


海獣に【水】はないだろうからあとは【風】か【土】だよなぁ。


ホコリが収まる前にホコリの中から何かが飛び出してきた。


頭上を超えて壁にぶつかり穴を開けたら、天井を失って脆くなっていた壁が


崩れていく。子供でよかった、大人の身長があったら当たってた。


目に見えなかったから【風】系の魔法かな?


開いた壁から素早く外へ飛び出す。


砂浜を走る俺の後ろから全身に焦げ焼け爛れた皮膚から、


肉や骨が見えてるセイウチ(あら牙が折れてるから~もうトドかな)が


追いかけて来る。


その凄まじいスピードは、人間の10歳児が逃げ切れる速度ではなく、


追いつかれ踏み潰されて・・・セイウチもどき共々爆散した。


やれやれ、せっかく転生したのにもう死んじゃうとは情けない・・・。



じゃないよ?。爆散したのは【土】【クリエイト】【ゴーレム】で


作り出した替え玉なんだよね、【火】系統の【ボム】を込めてそれを動力源にして


走ってたんだよ。や~中身が無くなる前に追いついてくれてよかった。



ここで、視界の左上のバーを確認する。


2800/2800 HP  3500/3500 MP  2100/2100 SP


増えた、まぁ減ったりしたら驚きだよね。右上のレーダーも確認しておく


連戦は避けたい。


ばらばらになった虎さんや、セイウチの破片を集めて処理しないとなぁ~。


次からは綺麗な処理の仕方を考えないとと反省する。


けっこう酷い現場は、一部原型を留めているもの、体毛が焼け焦げてこびりついた


肉片に剥き出しの内臓や骨の刺さったなにか、大量の血や体液と何か鈍く光るものが


ある。こぶし大のそれを思わず拾って、目の前にかざすとメッセージが出た。



【デウォーレスの魔石】:魔獣の魔力の源 魔力を貯めることもできる。

 


なるほど、お約束の物かとするともう一つもあるはず。



【ホーンティガーの魔石】:魔獣の魔力の源 魔力が少し残ってる。



魔力を貯めることができるのか、これは使えるな。






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