第9話 バロンの噂

「僕の名前はバロンって言います。よろしゅうたのんます」


そう言ってあいさつをしてきたこのバロンと名乗る青年が俺のリスナー第1号だ。

綺麗な白髪の髪に学ラン姿で俺と同じ関西のような方言だ。


「よろしく!バロンさん!君が初めてのリスナーだわ」


俺が彼ににそう言うとバロンはちょっぴり驚いた表情を見せ少し笑う。


「今回は面白い配信ライブになっとるのぉ」


「ん?今回は?」


「あぁ…気にせんといてや〜僕の趣味はこうやって色んなストリーマーの枠にお邪魔することやから、当たりの配信ライブ引いたなって思っただけや」


なるほど…単に俺の配信が気になった訳ではなく、色んな枠を回っていてたまたま俺の枠を引いたということか。


「それじゃあリスナーさんも来たことですし、せっかくなんでなにかやりません?」


赤瀬は俺になにか提案がないか聞いてくる。

初配信で適当にやったなんて言えたもんじゃないし、どうしようか。

そう考えているとバロンが手を挙げた。


「それじゃあ大富豪とかどうですか〜?ゲームしながら雑談、僕結構好きなんですよ」


「いいですね!フミキさんどうしますか?」


いい案も思いつかないしバロンの案に従うことにした。




「いや……バロン、お前強すぎやろ……」


「20回やってまだ私達1回も最初に抜けれてないよ…」


「僕結構ゲーム得意なんよ」


最初は会話が続くか心配だったが、バロンが進んで会話を続けてくれているおかげが俺たちはゲームしながらの雑談を楽しむことが出来た。


しばらく経ち、ゲームを辞め休憩していると、バロンは不意にある事を言い出す。


「そういえばさ、君たちこの仮想世界メタバースに来たのは最近なんやろ?じゃあライフライブにまつわる噂を知らないわけ?」


「ライフライブの噂……?なんなんやそれ?」


俺と赤瀬はバロンの方に視線をあてる。

 

仮想世界メタバース自体にも噂話というのはかなりの数が存在している。

代表的な噂で言うと、

仮想世界メタバースに接続して五感を感じれるのは、実は魂も繋がっているから】とかかな。

まあ画期的なもの程裏があると人は思うのだろう。


バロンは少しニヤリとし、噂話を始めた。

 

「これはライフライブのストリーマーをしている友人から聞いた話なんやけどな…このライフライブの仮想世界メタバースには、あるを持つストリーマー達が存在するらしい」


「特殊能力とは、一体どんな能力ですか?」


「ん〜そこまでは僕もイマイチ理解してないんやけど、友人曰く…その特殊能力を使うとリスナーを一定の間」


らしい。


その言葉に俺と赤瀬は身体が固まる。


「そんな特殊能力がもしあったら、好き放題出来てしまうやんけ……」


「そうですね…私がリスナーなら少し怖いですね。その噂」


「そやな。まあ噂話やし…本間の情報かは分からん。ただ、友人曰くその能力にはちゃんと名前があるらしい」


「能力の名前?それってどんな……」


「精神と書いて」


 


マインド……?どこかで聞いたことのある単語だ。

思い出せ……俺は一体どこでその言葉を……。


俺は必死に思い出そうとする。

あまりに考え込んでいるせいでバロンと赤瀬はこちらの方を覗き込む。


「どしたんやフミキくん?なんか変なことでもあったか?」


「大丈夫?また倒れたりしないでね……?」


倒れたり……?

ハッ!思い出したぞ。

俺はあの時、あの暗闇の中で奴から聞いたんだ。


「お前の精神マインドには頼りすぎるな…」


「え?」


不意に俺は言葉にだして、以前俺があの暗闇の中でもう1人の俺に言われた言葉を言った。


「ほお…フミキくん。精神マインドについてなにか知ってることあるんちゃうか?」


「いや…俺が知っていた訳じゃない。知らされたんだ」


「それは誰なの……?」


俺はバロンと赤瀬に暗闇で、もう1人の自分と出会い…そしてさっきの忠告をされたことを伝えた。


「なるほどな…つまり、その暗闇の中で出会ったもう1人のフミキくんの話からすると、君は精神マインドを使えることになるなぁ」


「いやでも、俺はそんなに特殊能力を使ったこともないし、使う方法も分からない…」


「でも…そのもう1人のフミキくんがそう言ってるなら知らない方がいいのかもね……」


そうして、しばらくその精神マインドについて3人は話し合った。

しかし、しばらくするとまた新しいリスナーが配信部屋ライブハウスにやってきた。


「あかりぃ!!さがしたぞ!!」


「さかき!?なんでここに!」


それは以前の記憶でやたら赤瀬に絡んでいた、派手柄のアロハシャツにいかにもヤンキー感の漂うおっさん

さかきの姿だった。


「あかりが今日の11時から配信ライブするってマイッターで告知してたのに時間になっても始まらないから」


「あー……それはちょっと……この人の初配信にお邪魔してて」


赤瀬がそう言うとさかきは俺の方を向き、睨みつけながらこっちに向かってきた。


「おうおう…ウチのあかりに手出すとは、アンちゃん覚悟は出来てるんだろうなぁ!ウチのあかりにはまだはやっ……!」


さかきは最後まで言えず、赤瀬に蹴飛ばされる。

あれ?ストリーマーってリスナーに触れないんじゃ……?


「もう!さかきは私を子供扱いしすぎ!」


「ぇえ……だって、あかりは……!」


さかきはあかりにポコポコと叩かれている。

それを見てバロンは大笑いだ。


「あはははっ!やっぱりこの枠は当たりだったなぁ」


「お前なぁ……俺はとばっちり食らったぞ……」


「というかさかき!それを言いに来る為にここまで来たの?」


赤瀬がさかきにそう言うと、さかきは何かを思い出したかのようにまじなトーンで喋りだした。


「そうだった!聞いてくれあかり!が!あいつが1位に返り咲いたぞ!」


そう言うと赤瀬はあまりの驚きなのか、尻もちをつく。


「このまま行けば……1位入賞の可能性もあるぞ!」


「そ…そっか……よかったぁ。本当に」


「あの……シュカって誰ですか?」


俺はさかきにシュカと言う奴について聞くと、さかきは嬉しそうな顔で返答をしてきた。


「シュカはなぁ!あかりと同じ時期に始めたストリーマーだ!そしてあかりが今絶賛推している配信者ライバーだよ!」


「赤瀬と同時期ってつい最近じゃんか……。それなのにイベントで今1位だって…?」


「シュカくんならきっと半年後ので……もしかしたら勝てるかもしれない。」


 シュカ……一体どんな凄いストリーマーなんだ……。

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