第17話帰還の扉(前編)
タラスの町で帰還の扉を捜しているぼくたちは、一度情報をまとめることにしたのだけど・・。
「みんな、収穫なしか・・」
「そうだね・・・」
「ムフフ・・」
意味ありげに笑うザリー、さっきまで女性たちにかこまれてデレデレしながらおしゃべりしていたからだ。
「ザリーさん、一体何がそんなにおかしいのですか?」
「ああ、わりぃな。さっきまで町の美人たちと楽しく話していたからな、ついつい浮かれてしまって・・。」
「それで何か帰還の扉について、何か情報を得ることはできたのですか?」
「ああ、一つだけわかったことがある。それは帰還の扉にくわしい人の場所だ。」
「え?帰還の扉にくわしい人・・?」
「そいつに聞けば、帰還の扉についてわかるかもしれない。」
「それで、その人の名前は?」
「ミシャーフーという、偉い魔女だそうだ。丁度この先で魔法の占いをしているらしいから、会いに行こう。」
こうしてぼくたちは、ミシャーフーに会いにいくために町の大通りへと向かった。
大通りの隅にちょっとした行列ができている、モンスターたちがミシャーフーに占いをさせてもらっているようだ。
「まぁまぁ人気なんだね。」
「彼女は捜し物や発見に関係する占いが得意だからね、だから物を失くしたり新しい物を見つけたいモンスターがよくやってくるんだ。」
そしてぼくたちの番になった、黒のスカーフを被ったミシャーフーがぼくの顔を見つめる。
「占ってほしいのは、連れの方も一緒にか?」
「いえ、ぼくだけで大丈夫です。」
「では、何をさがしているのですか?」
「帰還の扉の場所です。」
「なんと・・・、ではあなたはこの世界の者ではないということですか?」
「はい、元の世界へ帰りたいのです。」
「・・・後で話す、申し訳ないが次の方へ変わってくれ。」
突然、ミシャーフーの顔色が変わった。
「えっ・・、占ってもらえないのですか?」
「占う必要がないのだ、早く次の方へ・・」
「何かあるみたいだな、ここは彼女の言うとおりにしよう。」
そしてぼくたちは一度、列から離れてミシャーフーを待つことにした。
そして列がなくなると、ミシャーフーがぼくたちのところへやってきた。
「待たせたな、お前たちがさがしている帰還の扉についてだが・・、本当にそこへ行くのか?」
「はい、何かあるのですか?」
「・・あそこは火山地帯にある危険なところだ、おまけに危険なドラゴンも出るという。あそこを通って帰還の扉にたどり着いたものは、滅多にいないというウワサもある。それでも本当に行くのか?」
「どうする東野くん・・?」
みんなが不安そうな顔でぼくを見つめた。
火山にドラゴン・・、危険な予感しかしないけど、脱出するにはくぐり抜けないといけない。
「行くしかないよ、どんなに危険でもくぐり抜けないとたどり着けないんだ。」
「うん、そうだね・・・」
「今さら、ここに残るなんて言っていられないもんね」
「うん、今までこういうことはなんどもあったけど、乗りこえてきたし。」
ぼくたちの答えは出ていた・・。
「ぼくたちは帰還の扉へと行きます!」
声をそろえてミシャーフーに言うと、ミシャーフーはポケットから何かを取り出した。
「これは魔法のお守りじゃ、窮地になった時に一度だけ助けてくれる。お主たちの幸運を祈っているぞ・・」
「ありがとうございます。」
「帰還の扉があるのは、タラスの東口を出て先にある三つの別れ道の真ん中を進んだところにある『業火の火山』の山頂だ。」
「はい、ありがとうございます!」
「では、さらばだ」
ミシャーフーはどこかへ去っていった。
「では、業火の火山へ行くぞ!」
「でも、今日はもう日が暮れてきたし、明日にしよう。」
気づいた時には、すでに日が沈みはじめていた。
ぼくたちは明日、帰還の扉を目指して歩き出す。
この夜を明かしたら、いよいよ最後の冒険だ。ぼくは身が引き締める気持ちでいた。
そして翌朝、ぼくたちはタラスの東口を抜けて歩きだした。すると三つの別れ道にさしかかった。
別れ道には看板があって、そこにはこう書かれていた。
『真ん中の道、業火の火山へと続く。熟練者の旅人以外、立ち入りを固く禁止する』
「これは・・・、業火の火山ってめっちゃアブナイということじゃない!」
「そうだね・・・、でもぼくたちは進むしか無いんだ。」
ぼくたちは覚悟を決めて、真ん中の道を歩きだした。
歩くにつれて草木の数が減り、周囲が熱くなってきた。
「はぁ、はぁ、はぁ・・・」
北邦くんは暑さのあまり、犬みたいに舌を出した。
「ちょっと北邦くん、ちゃんとしてよ!」
「だって・・、めっちゃ暑いんだもん・・。」
「おっ、ここから山道になるぞ」
山道は今までのとは比べ物にならないほどに厳しい道のりだ。道はかなりでこぼこで、となりには溶岩の小川が流れている。うっかり落ちたら命はない・・。
「ギャーガァーーーッ!」
「グルルル・・・」
あちこちからドラゴンのほえる声やうなり声が聞こえてくる、思わず足がすくみそうだ。いつ襲いかかってくるかわからない怪物がすぐそばにいる恐怖を、全身の肌が感じていた。
ぼくたちはそれでも勇気を出して歩きだした、すると道をふさぐように一頭のドラゴンが眠っていた。
「うわぁ、これじゃあ通れないよ!」
「どうする東野くん?」
「ドラゴンを起こして通りたいけど、下手に刺激したら怒って攻撃してくるかもしれないし・・」
ぼくが首をひねって考えていると、ザリーがピストルを器用に回しながら言った。
「ぐだくだ考えていたってしょうがねぇ、このオレにまかせな!」
ザリーさんはピストルを上にかかげて、空へ向かって発射した。
「うわぁっ!」
「いきなり撃たないでよ、ドラゴンが起きたらどうするの!?」
「だから、ピストルの音でドラゴンをビックリさせてやるんだよ!」
しかしドラゴンはぼくたちの心配とは裏腹に、ぐっすり眠っている。
「起きないね・・」
「こうなったら、直接ドラゴンを撃つしかないな!」
「えーっ!!ダメダメ!そんなことしたら・・・」
ザリーさんはドラゴンへ向かって撃った、しかし不幸中の幸いかドラゴンは起きない。弾丸がドラゴンの鱗によって、小石みたいに弾かれてしまった。
「マジかこいつ・・・」
「もうこうなっなら、サンダー・パチンコしかない!」
ぼくはサンダー・パチンコを構えると、ドラゴンに向かって発射した。強烈な電撃がドラゴンを直撃し、ドラゴンは悲鳴をあげた。
「やったー!ドラゴンを倒した!」
大喜びするみんな、だけど現実はそうはいかない。
「違う、ぼくたちはドラゴンを怒らせたんだ・・。」
ぼくの予想通り、ドラゴンは鋭い眼差しでぼくたちをにらみながらゆっくりと起き上がった。怒りで攻撃しようとしているのは、明らかであった。
「どうしよう!どうしよう!!」
「このままだと、丸焦げにされちゃうよ!」
「みんな、早くこの場から離れるんだ!」
「えっ!?どうしたの東野くん!?」
「いいから急いで!!」
「ああ、わかった!」
みんながぼくから離れた、そしてもう一度サンダー・パチンコをかまえた。
一か八か、ドラゴンの口に雷を落とす・・!
ドラゴンの口が開き炎で赤くなった、その炎を吐き出す直前に・・・。
ぼくはサンダー・パチンコを発射した、ドラゴンの炎が弾に触れ爆発した。
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