第16話モンスターの町へ

ザリーさんのおかげで馬車に乗ることができたぼくたちは、近くにある大きな町『タラス』へ向かった。

「ところでこの馬車はタラスへ何をしに行くの?」

ぼくは馬車を操縦するカーターに質問した。

「この馬車には布や木材や本などが積んである、これらをタラスで売るのさ。」

「そうなんだ、ところでザリーさんはどうしてついてきているの?」

「彼は用心棒として雇ったんだ、この辺りには積み荷や金や女を狙う盗賊がいるからね。」

そして十五分後、曇った空から雨が降りだした。

「ふってきたな・・、近くの休憩所へ向かおう。」

「そうだな、よし急げ!」

馬車は止まることなく走り続け、ナカラにたどり着いた。ナカラは地図にものっている、分かれ道の近くにある休憩所きゅうけいじょだ。

その分かれ道には川沿いを渡る道と山道を進む道がある。

ぼくたちがナカラについた時には、雨はすごく強くなっていた。

「なんとか大事な荷物がぬれずにすんだけど、こりゃ足止めだな。」

「雨、早くあがらないかな・・・?」

そしてその日の夜はナカラで過ごし、翌日晴れたので再出発だ。

ぼくたちがザリーとカーターのところに来ると、二人とも難しい顔をしていた。

「一体どうしたんですか?」

「ああ、実は近道になる川沿いの道を進んでいく予定だったんだけど、進めなくなってしまったんだ。」

「え!?なにかあったのですか?」

「道の途中とちゅうにある川にかかっていた橋が、増水した川に流されてしまったんだ。」

「そんなことがあったんだ・・、それでぼくたちは山道を進むのですか?」

「ああ、そういうことになるな。だけど雨があがったばかりだから道がぬかるんでいるし、あの道は遠回りで元々険しいんだ。だから上手く進めるかどうか・・」

不安げに考え込むザリーとカーターに、ぼくは言った。

「そんなこと気にしないでください、いざとなったらぼくたちが手を貸してあげます!だから馬車を走らせてください!」

ぼくたちは頭を下げてお願いした、ザリーはため息をつくと言った。

「全く、頼もしいやつらだぜ。おれは山道を進んでもいいけど、カーターはどうする?」

「どのみちここで止まったら、約束の日にちに間に合わない。進んでいこう!」

そしてぼくたちはザリーとカーターと一緒に、馬車で山道へ進みだした。別れ道を左に曲がり進むと坂道になった。

「ここから山道に入るぜ、気を引き締めて行くぞ!」

「うん・・」

白馬に乗るザリーを先頭に、坂を上がる馬車。ぬかるんだ坂道を懸命に登っていく。

「やはり、昨日の嵐で地面がぬかるんでいる・・」

「馬車が止まらないといいけど・・」

「それだけじゃない、アイツらと出会わなければいいが・・」

すると馬車が『ガダン!』と大きな音を出して止まった。

「どうした!何かあったのか!?」

ザリーが言うと、カーターが馬車を点検した。

「ありゃま、車輪が外れてる。ぬかるみにはまって抜けたんだな・・」

「どうしよう、先に進めるかな・・?」

「修理すればまた走れる、早速取りかかろう。」

カーターが馬車の修理を始めて、ホットひと安心していた時だった。しげみの小さなゆれにザリーが気づいた。

「チッ・・、アイツら来やがった・・」

「え?何がです?」

「山賊だよ、この山には山賊を生業なりわいとするオークが住んでいるんだ。」

「山賊!?それってヤバイよ!どうしよう!」

ぼくたちが慌て出すのをよそに、山賊たちがわらわらと茂みから出てきた。その数、二十人以上。

『へへへっ・・・、お前ら!今から十数える、それまでに馬車を置いて消えろ。そうすればお前らを攻撃しない。』

「へっ、大切な馬車を置いてけぼりにできるかよ!」

「そうだよ、お前らなんかに渡すもんか!」

『威勢のいい奴らめ・・、こうなりゃ一気につぶしてやる!』

山賊たちが武器を振り上げて、ぼくたちにおそいかかってきた。ぼくはサンダー・パチンコを取り出して、小石を発射させた。

『ギャアアアアアアーーーッ!!』

山賊たちに電撃が直撃した、そして悲鳴をあげて倒れる。

「・・・すごいな。山賊たちを一発で倒すなんて・・」

「へへっ、このサンダー・パチンコのおかげですよ。」

するとサンダー・パチンコを見たザリーがつぶやいた。

「サンダー・パチンコか、懐かしいな・・」

「え?ザリーさん、サンダー・パチンコを知ってるの?」

「ああ、前にも別の世界から来た人間が使ってたんだ。そいつおれとはよく気が合って、一緒に旅したものだ。」

「そうだったんだ。」

すると山賊たちが起き上がり始めた、ザリーとぼくはすかさずピストルの銃口を山賊の額につけた。ザリーが低い声でオークたちに言った。

「今から十かぞえる、それまでに仲間共々ここから消えろ。」

『クソッ、引き上げだ!』

山賊たちは馬車をあきらめ、しげみの奥へと去っていった。

「ふぅ〜、助かった・・」

「よかったぜ、大事な荷物がとられなくて。」

「ところで、サンダー・パチンコを持っていたその人ってだれ?」

「確か、リョシという名前だったな。」

ぼくのおじいちゃんだった、まさかこんなところも冒険していたなんておどろきだ。

その後、カーターさんが馬車の修理を終わらせて、馬車は再び走り出した。







馬車は山道を下り、そしてタラスへとたどり着いた。

「やったー!タラスだ!」

「ついたぞ!!」

ぼくたちは馬車から降りた、そこはモンスターたちが賑やかに暮らしている大きな町だった。

「ザリーさん、カーターさん!ありがとうございました!」

「いいってことよ、それよりおれから少しお願いがあるんだけどいいか?」

「ん?おねがいって何?」

「お前たちが元の世界へ帰れるように、手伝いをしたいんだ。」

「え?協力してくれるの!?一体、どうして?」

「いや、お前たちを見ていたらリョシと旅をしていた時のことを思い出してな。またあの時と同じ旅をしてみたくなったんだ・・」

「ザリーさん・・」

「それにお前が持っているコンパス、リョシが持っていたのと全く同じように見えるが、リョシからもらったのか?」

「はい、リョシはぼくのおじいちゃんです。このコンパスは、おじいちゃんからもらいました。」

「そうだったのか・・、いやぁ通りで懐かしい気がしたわ。それでオレも連れていってもらっていいか?」

ぼくはみんなと話し合った。

「ザリーさん、一緒についていってもいいかな?」

「いいよ」

みんなあっさりと一同に答えた。

「えっ・・いいの?」

「うん、だって頼りになるし。」

「この先、もっと危険なこともあるからついてきてもらった方がいいよ。」

「そうだぜ!前に助けてもらったし、参加させてあげようぜ。」

「わかったよ」

そしてぼくはザリーさんに右手を差しのべた。

「これからよろしく」

「ああ、こちらこそ!」

ぼくとザリーさんは固く握手をした。






町についたぼくたちは、帰還の扉がどこにあるのか聞き込みにいった。ぼくと北邦くん、西野くんと南原ちゃんとザリーの二チームに別れて聞き込みをすることにした。

「帰還の扉・・・聞いたことないな・・?」

「あたしもよく知らないわ、ごめんなさい」

「ああ!存在するとは聞いたけど、どこだったかな・・?」

みんな聞いたことはあっても、どこにあるかはわからないという答えだった。

ぼくは合流地点の中央噴水に来た、そこではすでに西野くんと南原ちゃんがいたのだが、なんだかあきれた表情をしている。

「どうしたの?」

「あれ見てよ・・」

前言撤回ぜんげんてっかい、あいつはただの女たらしだよ・・」

そこには女性たちにかこまれて、楽しげに話をしているザリーさんがいた。

こんなので、本当に大丈夫かな・・?




















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