第13話羽毛の導き
北邦くんが釣り上げた大きな魚をみんなのところへ持って帰ってきたぼくたちは、魚をさばいて焼いて食べた。
「・・・あんまり美味しくないね。」
「身がパサパサしてる・・、脂ものっていないみたい・・。」
「なんか、ごめん・・。美味しい魚を釣り上げられなくて」
「いいよ、北邦くんはがんばったんだから。」
ぼくは最後まで北邦くんが釣り上げた魚を食べたので、南原ちゃんも西野くんも最後まで食べきった。
魚を食べ終えると、ぼくたちは今後のことについて話し合った。
「とにかく、ぼくたちはなんとしてでもここを抜けていかないといけない。」
「でもここはあまり食い物もないし、最悪オレたちが恐竜のための食い物にされてしまうぜ?」
「確かに、それだけは絶対にイヤよ!だけどあたしたち、恐竜に襲われたら一体どうしたらいいの?」
「うーん・・大声を出したり、大きな布を広げていかくする方法もあるけど・・?」
「それクマに効くかもしれないけど、恐竜に通用するかな?あっ、それなら東野くんのサンダー・パチンコは?」
「おお!!それだよ!ていうかなんであの時それを使わなかったんだよ〜」
北邦くんがぼくを指さしながら言った。
「ごめん・・、あの時は恐竜に会ったおどろきで、それどころじゃなかったんだ・・」
「そうだよ北邦くん、みんなビビっていたんだから」
「ごめん・・、でもこれで少しは恐竜も大丈夫になったんじゃないか?」
「いや、油断してはいけない。とにかく慎重に進んでいくんだ、いいね?」
ぼくはみんなに念を押すようにみんなの顔を見回した、みんなは顔を縦にふった。
翌日、ぼくたちは谷間を進みだした。
いつ恐竜が現れてもおかしくない、みんなは緊張感でおしゃべりすることなく歩いていく。
すると谷間から恐竜のような影が見えた、先頭を歩くぼくは立ち止まった。
「ちょっと待って、何かいる・・!?」
「えっ!?もしかして、恐竜・・?」
「かもしれない、ぼくが様子を見てくるから待ってて。」
ぼくは慎重に歩いた、しかし影の正体は偶然にも恐竜に似ていたただの岩だった。
「大丈夫、ただの岩だったよ」
「なーんだ、岩だったのか・・」
「あれ?あそこに何かいるよ」
南原ちゃんが見つけたものは、傷ついて飛べない羽毛の生えた恐竜だった。それを見たとたん、南原ちゃんの声が変わった。
「この子、ケガしてるじゃない!東野くん、あの救急かばんを貸して!」
「わかったよ!!」
ぼくは南原ちゃんにカバンを渡すと、手際よく手当てを始めた。その姿にぼくと北邦くんと西野くんはおどろいた。
「すごい、なんかいつもの南原ちゃんじゃないみたいだ・・」
「そういえば南原ちゃんの家って、獣医だったよな。」
「ああ、友だちの犬やネコがケガしたらよく手当てしていたよね。」
「そうなの!?すごいな・・」
そして南原ちゃんの手当てが終わった、恐竜は南原ちゃんのうでの中でうずくまっている。
「手当てが終わったわ、それにしてもかわいいわね。」
「見たことのない羽毛だ、でも恐竜に羽毛が生えていたなんて知らなかった・・」
「当たり前だよ北邦くん、鳥は恐竜から進化したと言われているんだから。最新の研究では、ティラノサウルスにも羽毛があったと言われている。」
「マジで!?」
するとぼくのコンパスが、恐竜に反応した。
「えっ!?コンパスが反応してる・・!」
「ほんとだ!一体、どうして・・!?」
もしかしてこの恐竜は、この世界と何か関係があるのかな・・?
「ねぇ、この子連れていかないか?」
「この恐竜を・・?」
「うん、コンパスがこの恐竜に反応しているんだ。何か大きな意味を持っている気がするんだよ。」
「うーん、確かにそうだね。」
「それにこの子、ケガしたばかりで心配だしね。あたしはさんせいだよ」
「おれもさんせいだぜ」
「右に同じく」
「よし、決まりだね」
「ねぇ、この子に名前をつけない?」
南原ちゃんが提案した。
「名前か・・・?」
「あたし、シーソくんがいいと思うけどどうかな?」
「ぼくはガオくんがいいと思うけど・・」
「ガオくんじゃ、かわいくないわよ!シーソくんがいいって!」
「じゃあ、シーソくんでいいか・・」
こうしてぼくたちは、シーソくんを連れて旅を再開した。
すると目の前に肉と骨の
「これって・・!!」
「肉食恐竜の食べ残しだよ・・!」
「ヒエッ・・!!もしかして、まだ近くにいるの!?」
ぼくたちは辺りを見回した、だけど肉食恐竜はいないようだ。
こんなところさっさと離れようと歩きだした時だ、向こうの方から小さな恐竜のむれがこちらに向かって走ってくる。
「うわっ、なんだあれは!?」
「たぶん、トロオドンの仲間じゃないかな?死体の肉に連れられてやってきたんだ!」
トロオドンの群れは西野くんの言うとおり、恐竜の死骸へと向かい肉を食べ始めた。
ところが予想外なことに、そのうちの四頭がなんとぼくたちに向かっておそいかかった!
「うわぁ!こっちに来た!」
「一体なんで!?」
「たぶん、その小さな羽毛恐竜が狙いだと思う。」
「東野くん、今こそあれを!!」
「よしっ、今こそ出番だ!」
ぼくはサンダー・パチンコを取り出すと、小石を弾にして一頭のトロオドンに放った。
ピカッ、ゴロゴローーッ!!ギェエエエーーーッ!
電撃をくらったトロオドンは倒れた、残った三頭はぼくを見て後退りしていく。
ぼくは二発目を発射する体勢にはいった、するとトロオドンたちは逃げ出した。肉を食べていたトロオドンたちも、三頭の後を追って逃げ出した。
「よかった・・・助かったよ」
「よし、先を急ごう」
ぼくたちは先へ先へと進んでいった。そしてぼくたちは、とある場所へたどり着いた。
「ここは、遺跡・・・?」
そこには石で作られた神殿があった、門の前には恐竜の石像が一対あって、柱には読めない文字みたいな模様が無数にあった。
「すげぇ、まるでゲームみたいな遺跡だな」
「それよりも、こんな世界に遺跡があるなんてありえないよ・・」
「どういうことだ西野?」
「だってここは恐竜の世界だぜ?もしもジュラ紀や白亜紀にタイムスリップしたとしたら、人間がいないのに遺跡があるなんて変だ!これは巨大なオーパーツかもしれないよ。」
「オーパーツ・・」
確かに西野くんの言うとおりだ、この遺跡はだれが、一体なぜ建てられたのだろう?
すると南原ちゃんのうでの中にいたシーソくんが遺跡の方を見てさわぎだした。
「こらっ、ちょっと!おとなしくしてよ・・」
しかしシーソくんは南原ちゃんのうでから脱出すると、遺跡の中へと歩きだした。そしてぼくたちの方を見ると、ぼくたちを呼ぶように鳴き出した。
「ねぇ、シーソくんがぼくたちを呼んでいるよ」
「本当だ、ついてこいって言っているみたいだ・・」
「たしかに、そんな感じがする・・」
するとぼくが持っていた恐竜の像が目が光だした、どうやら遺跡に反応したようだ。
恐竜の像とシーソと遺跡・・・、この三つにはどんな関係があるのだろう?
「よし・・・、先へ行こう!」
ぼくが言うとみんなはうなづいた。
そしてぼくたちはシーソに導かれるがままに、遺跡の中を探検した。コンパスの灯りを頼りに遺跡の奥へと進む、遺跡の通路は枝分かれしていて意外と長い。
そして通路の壁には貝や古代の魚や三葉虫の化石がいくつもあった。
「すごく長いわね・・・」
「一体どこまで続いているんだろう・・」
するとシーソの歩みが止まった、その先には大きな扉が通路を塞いでいる。
「行き止まりだ、この先には進めないよ」
でもシーソはこの扉にむかってさけんでいる、必ずこの扉の先には何かあることをつげるみたいに・・・。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます