第12話まさかの恐竜世界!?

 コンパスを頼りに道を進んでいたぼくたちは、雄大な谷間があるところへやってきた。

「うわぁ・・すげぇ迫力・・!」

「これはグランドキャニオンみたいだ・・!自然の雄大さが伝わってくるよ!」

 するとここで地図が終わっていたので、ぼくたちは新しい地図を探し始めた。

「えっと・・、地図はどこだ、地図はどこだ・・?」

「あれ?地図が無い!どうしよう・・」

「ええっ!?それじゃ、この先地図なしで進めってこと?」

「いや、どこかにあるはずだ・・!」

 ぼくたちはそれから地図を探し回ってみたが、結局どこにもみつからなかった・・。

「・・ということは、今回は地図なしでの冒険になるな。」

「そんな・・」

 みんなは不安そうにうつむいた顔をした、このままではいけないとぼくはみんなに言った。

「この先の道はどうなっているかわからないけど、ここで止まっていたって何もわからない。それなら進むしかないんだ、だからがんばってこの谷を進んでいこう!」

「・・・そうね、もうここまで来たんだし」

「こうなったら、もう先へ行くしかないわね。」

「よーし、がんばるぞ!!」

 そしてぼくたちは谷の先へと進んでいった。下へと降りて行き、道をよくみながら進んでいく。この谷は真っ直ぐ続いていて、上を見上げるといくつもの地層が歴史の迫力をぼくたちに見せてくれる。

 すると突然、ドスンという音が先の方から聞こえた。

「ねぇ、何この音・・?」

「何か大きな生き物が歩いている・・」

「巨人かな・・・それか恐竜?」

「いやいや、巨人も恐竜もいないよ」

 そんなことを考えながら先へと進むぼくたち、そして進めば進むほどドスンという音は大きくなった。

 そして今まで聞いたことのない叫び声が聞こえた、そしてドスンドスンドスンと巨大な何かは突然走り出す音が聞こえた。

「ねぇ、音が近づいてくるよ・・!」

「うん、いったい何が来るんだ?」

 そしてついにぼくたちはその姿を見た、三本の角のついた頭に首にはエリマキのようなものがついている。そして四足で走る巨大なその姿は、なんとトリケラトプスだった。

 谷の側面に体をつけてやり過ごしたぼくたちは、信じられないものをみた・・!

「あ・・あ・・あぁ・・ありえない!」

「今、見たか?本当に、見たよな!?なっ!?」

「うん、ハッキリ見たよ。あれは恐竜だ!!」

「そう、あれはまちがいなく恐竜だよ・・!」

・・・・・!?

エエーーーーーーーーーーーーーーッ!

ぼくたちはこれまでにないくらいおどろいた、まさか恐竜を見ることになるなんて・・!

「うそ!?なんで恐竜が・・!」

そしてぼくはすぐ近くにせまる巨大な危険に気づいた。

「ねぇ、あれって・・!!」

ガガァーーーッ・・・、とほえるおそろしい肉食の恐竜がいた。

「てぃ・・・ティラノサウルスだー!」

「ウソでしょ!?あれがティラノサウルスなの!?」

「正確にはわからないけど、危険な恐竜だということに間違いない・・!」

「もうおしまいだ・・・、ここで食べられるんだ・・!」

「北邦くん!あきらめちゃだめだよ!」

「だけどこの状況はどうすんだよ!?ティラノサウルスを追い払う方法なんて知らねぇよ!」

確かにおじいちゃんも恐竜の撃退法は知らないだろう、ぼくたちはどうしようもなく地面にへたりこんだ。ティラノサウルスはそれをけげんな表情でのぞきこんだ。

そして食べられると確信して、鋭くならんだ歯を持つ口を開いた。

「よし・・、一か八かだ!」

ぼくは ピストルを取り出すと、空にむかって発砲した。

「東野くん!!何してるの!?」

「大丈夫か?下手に刺激したら、やられるぞ!」

そんなことはわかっている、だけど追い払うためにはなにもしないわけにはいかないんだよ・・。

ぼくは目をつむりながらティラノサウルスがいなくなるのを願った、するとティラノサウルスは音におどろいたのか、後ろを向いて去っていった。

「よかった・・・」

「だけど、この先だいじょうぶかよ・・。」

確かにこの先恐竜に遭遇したら、ぼくたちには対処法がない。

「とにかく、恐竜に細心の注意をもって先へ進もう」

それからぼくたちは谷間をゆっくりと進んでいった。

空の上には翼竜よくりゅう、地面には恐竜の足跡がある。博物館でしかみたことない恐竜たち、それがこの世界では現実の生き物として生きている。図鑑や博物館では太古のロマンを感じる恐竜も、実際に見てみると猛獣のようにおそろしく見える。

谷を進んでしばらくすると、立て札が現れた。

「ん?この立て札、なんか変だぞ?」

その立て札には下向きのやじるしが書かれているだけだった。

「この立て札はなんだ・・?」

「下向きのやじるし・・、ここに通路があるということか?」

「いや、もしかしたら何かあるかもしれない。とりあえず掘ってみよう」

ぼくたちは立て札の下を掘ってみた、数分間掘っていると宝箱が出てきた。四人で持ち上げて、地面の上に置く。

「ねぇ、中には何が入っているかな?」

ぼくたちが中を開けると、新しい地図と緑色の十字のマークがついた白いバッグが出てきた。

「よし、このエリアの地図だ!それと、おじいちゃんの救急かばんもゲットした!」

「これでだれかがケガをしても安心だね」

「あっ、他にもあるよ」

それは水晶でできた、恐竜の仏像だった。

「これはいったい・・?」

「そもそも恐竜がいる場所にこういうのがあるなんて、ありえないよ」

西野くんの言うことに、ぼくは疑問を感じた。

「西野くん、どういうこと?」

「もしかしたら、ぼくたちは恐竜が生きていた時代へ来てしまったのかもしれないということだよ・・」

「え?それって、タイムスリップってやつか?」

「うん、それじゃないと説明できないよ。」

「でもなぁ・・、とくにタイムスリップした感覚がしないんだよな・・」

ぼくたちはこの恐竜の像が一体どんな意味を表しているのか、答えがわからなかった・・。





それからぼくたちは谷のちょっとした横穴を見つけると、そこでキャンプをすることにした。夜に出歩くのは危険と判断し、日がしずむ前にキャンプすることにした。

ぼくは北邦くんと一緒に、近くの川へ向かい食糧をさがした。

「魚がつれるといいな」

「ああ、でもここは恐竜の世界だから気をつけないと・・、もしまた肉食恐竜に襲われたりでもしたら・・!」

「おいおい、怖いこと言うなよ・・!」

ぼくと北邦くんはどうにか川へ到着した。

北邦くんがなれた手つきで釣りを始め、ぼくはあたりを探検し始めた。

しかし食べられそうな果物はなく、捕まえられそうな動物もいない。探検の途中で、おとなしい草食恐竜の群れを見つけた。

「デカいな・・・」

あれを捕まえて肉を食べる・・・、なんてことを考えたが、相手が大きすぎてやめることにした。

「どこにも食べ物がない・・・、一体どうしたらいいんだ?」

そしてぼくは北邦くんのところへもどってきた、北邦くんは大きな魚を一匹釣り上げたようで、ヘトヘトだ。

「おかえり、東野。釣り上げたぞ、大きな魚を・・」

「うわぁ、でっかいな・・」

「めちゃくちゃ引きが強かった・・、もうヘトヘトだよ。そっちは何か食べ物見つかったか?」

「いや、全然みつからない・・」

「そっか、もしかしたらここは本当に恐竜時代かもな・・。オレたちどうなるんだ?」

北邦くんは不安な声で言った、それはぼくだって同じだ。

今までの場所では、おじいちゃんから教わったサバイバル術とみんなで力を合わせれば、食料の確保と危機からの脱出もできた。

だけど恐竜の世界ではそうはいかない、生き残るには水とわずかしかない食べられる何かを見つけなければならない。こんなところ、人間が生きていく環境ではないよ・・。

ぼくたちは、本当にこの世界から出られるのか?ぼくたちは、家に帰れるのか・・?

一度は消えた不安が、また心の中でよみがえったのを感じた。

















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