第10話ジャングルへ
草原を慎重かつ一歩ずつ進んでいくぼくたちは、ついに草原の端の方まで来ていた。
「えっと、地図によるとこの辺りにジャングルへと続く坂道があるみたい。」
「坂道か・・・キツいな」
「それと地図はここで終わってるみたい」
「じゃあ、また新しい地図を見つけないといけないね」
そして道をまっすぐ歩いていると、少しずつ緑の木々が増えて蒸し暑くなってきた。
そしてぼくたちはジャングルの入り口へと到着した、するとコンパスがある一本の木の根元に反応した。
「あっ、何かあるみたいだよ。」
「ほってみよう」
ぼくたちが木の根元を掘り起こすと、宝箱が出てきた。中を開けると新たな地図と、ピストルが出てきた。
「あっ!これ、おじいちゃんのピストルだ!」
「でもピストルならもっと早く出てきてほしかったよな・・」
「そうだよ、それならあの時のライオンやヒョウだって、追い払えたのにさ・・」
「でも、おじいちゃんのピストルは鳥や動物を追い払うためだけのもので、人や動物を倒したりすることはできないって。動物を捕って食べる時は、ワナをしかけるのがおじいちゃんのやり方なんだ。」
「へぇ〜、そうなんだ。」
「きっとこの先には、もっと恐ろしい動物がいるということだ。気をつけて進もう」
そしてぼくの予想は当たることになった、先へと歩いていると、突然西野くんが腰を抜かした。
「ず・・・ず・・・
そこにあったのは動物の頭蓋骨とバラバラになった骨の数々だった。
「えっ、まさか人の骨か!?」
「・・・ちがう、頭蓋骨の形がちがうんだ」
頭蓋骨は人ににていたが、どうも人とは形が少しちがうように見える。
「たぶん、これは大きなサル・・・オランウータンかゴリラだよ」
「えっ、じゃあそれを食べるような猛獣がいるということ!?」
「多分・・・、おそったのはトラだと思う」
「トラ・・!?」
その二文字の言葉でみんなふるえあがった、ライオンと肩を並べるほどおそろしい猛獣だからね・・・。
「とにかく気をつけて行こう」
ぼくたちは木々のしげるジャングルを進んでいった。ただトラがいつどこで待ち伏せしているか、わからない怖さをぼくたちはひしひしと感じていた。
しかしジャングルにはトラの他にもおそるべきものがいた・・・!
ぼくがふと足元を見ると、地面に二つのおそろしい目が浮かび上がった。
「待って!!何かいる・・・」
「ええっ!?トラが出たの!?」
そして地面から二つに分かれた赤いヒモがチロチロ出ている、それはヘビだった・・!!
「ヘビ・・!?大丈夫なの!?」
「マジかよ!毒とかもってないよな!?」
「ジャングルのヘビは大抵毒を持っているからね・・」
確かにこのヘビがたとえ毒を持っていないとしても、気をつけないと攻撃されるかもしれない。
どうしたらいいのか考えていると、近くに長い木の枝があった。
「よし、これなら・・・!」
ぼくは木の枝の先を地面につけると、地面をこするように動かしてヘビに近づけた。これはおじいちゃんから教わった、もしヘビと遭遇した時の対処方法だ。
この時、棒でヘビを叩くのはダメ。ヘビが反撃してくるのであくまで距離を取ってやるのがコツだ。
するとヘビは向きを変えて、どこかへクネクネと去っていった。
「よかった・・・。」
「もう、どこもかしこも危険ね・・・。こんなところ早く出ようよ!」
「それにしても、暑いな・・」
みんな顔を赤くして息を切らしている、しかし水が残り少ない・・・。
このまま歩いたら、かならずだれかが熱中症になってしまう。
水の確保を考えたぼくは、どこかに水がないか辺りを見回した。すると目の前に小川があった。
「小川だ!!」
「水だ・・・!」
「早く煮沸して飲もうぜ・・!」
しかし小川の水はどろでにごりきっていた、これはとても飲めたものではない。
「これ、どうするの?水をきれいにしないと飲めないわ・・」
「うーん、どうしようか・・?」
こんな時、おじいちゃんならろ過装置を作って水を飲んでいた。だけど、ぼくたちはろ過装置の材料になるものを持っていない。
すると北方くんが小川からペットボトルを拾い上げた。
「おい、ペットボトルがあるぞ」
「ほんとだ、一体どうして・・?」
そして地図を見てぼくは気づいた、ここから小川の上流へ進んでいったところに開けた場所がある。このペットボトルは、そこから流れてきたにちがいない。
「みんな、ここを見て!ここに開けた場所がある、もしかしたら人が住んでる家があるかもしれない!」
「おお、ということは元の世界へ帰れる方法がわかるかも!」
「早速行こう!!」
そしてぼくたちは、小川の上流を進んでいった。
そして開けた場所についたけど・・・
「ここって・・・ゴミ置場?」
そこにはペットボトル・空きカン・布・お菓子の袋などが、山のように積み重ねられた光景だった。
「これゴミ置場じゃないか・・・」
「近くに人の気配も家もないみたい・・。」
「この世界はどうなっているのよ・・・」
みんなはわけがわからずに困惑していた、だけどぼくにはこれが宝の山に見えた。
「よし、これなら・・・!」
そしてぼくはゴミ置場をあさりはじめた。
「東野くん!なにやってんの?」
「ここにあるゴミを使えば、あの小川の水を飲むことができるんだ!そのための材料を集めているんだよ」
必要なのはペットボトルと布と細かい炭だ、これらがそろえばきれいな水が手に入る。
そしてぼくはペットボトルと布を手に入れた、だけど肝心の炭が見当たらない・・。
「炭・・、炭は一体どこ?」
「東野くん、何かさがしているの?」
「うん、炭がないんだ。黒い炭をみんなでさがして〜」
そしてぼくたちはゴミの山の中から、炭を探し始めた。すると南原ちゃんが何かを見つけた。
「ん?これなに・・?」
「これ、使い捨てカイロだ。」
「カイロか・・、カイロだって!?」
ぼくの目がかがやいた、カイロは使えるからだ!
「そのカイロぼくにちょうだい!」
「えっ、いいけど・・・」
「やったー、これで炭をゲットしたぞ!」
ぼくは飛び上がりたくなるほどに喜んだ、これからろ過装置を作ろう。
まずペットボトルを半分に切って、キャップのところに穴を空けた。これはゴミ置場で見つけたハサミを使ってできた。
そこに布切れをつめて、そこに小石をいれてカイロから取り出した
「よし、完成だ!」
「東野くん、それなに?」
「これは水をきれいにすることができるろ過装置なんだ、これでさっきの小川の水も飲むことができるんだ!」
「おおっ!すごそう・・!」
「早速試してみよう!」
そしてぼくたちは再びあの小川へとやってきた、小川の水をすくってろ過装置の中へ入れる。
はたして水は飲めるようになるのか・・?
よごれた水は布・小石・活性炭の層に少しずつしみこんでいく、そして透明な水がチョロチョロと出てきた。
「やった・・・!水だ!!」
「おおっ!ろ過は成功したんだ!」
「後は、これを煮沸すれば飲めるぞ・・」
その後、無事に煮沸を終えたぼくたちは美味しい水でのどをうるおした。
今日はここで歩みを止めて、ゴミ置場の近くでキャンプすることになった。
「それにしても、このゴミ置場はどうやってできたのかな?」
西野くんが言うと、ぼくは首をかしげた。
ゴミ置場は人がゴミを捨てていくことで自然にできるが、今までの冒険で人に出会ったことは一度もない。
このジャングルのどこかに人が住んでいるところがあるのか・・・?
すると小川で魚つりをしていた北邦くんが、嬉しそうな顔をしてもどってきた。
「みんな!これ、持ってきたぞ!」
北邦くんが両手にいっぱい持ってきたのは、クッキーやチョコレートといったおかしの数々だ。
「うわぁ!!おかしがいっぱいだ!!」
「これ、どうしたの!?どこで見つけたの?」
「それが聞いてくれよ、魚つりに行った帰りにラムルというおじさんがくれたんだ。」
「ラムルさん・・・?」
「ああ、ここに住んでいるらしいぜ。」
おかしをくれたラムルさんとは、一体何者だろうか・・・?
おかしに夢中になっている北邦くんたちをよそに、ぼくは首をひねらせた。
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