第9話東西南北団VSライオン
どうくつの奥で出会ったおじいちゃんはすっかり消えてしまい、後には謎の筒を入れた祠が静かに残っていた。
「ねぇ、あれが東野くんのおじいちゃん・・?」
「うん、そうだよ」
「なんか落ちついた顔をしていたね、もう少しいパワフルなイメージを想像していたけど・・」
「それで、おじいちゃんは何て言っていたんだ?」
「この先、冒険は危険になるけど、ぼくならできるって信じているって」
「おお、期待されているということか!!」
「がんばって、東野くん!」
しかしぼくは内心不安だった・・、この先にとにかく危険があるとなると、みんなをまきこまないように移動・確認しなければならない。そんなことがぼくにできるのだろうか・・?
そしておじいちゃんが最後に言い残した言葉、カギを持って先へ進め・・・、これは一体どういう意味なのか?
そして祠を見ると、謎の筒も入れた穴もなくなっていて、そこにはカギが置かれているだけだった。
「まさかこのカギって・・・!」
「これがもとの世界へ帰れるカギなの?」
「うーん、わからないけど・・・もしかしたらそうかもしれない!」
「とにかく、このカギはとても大切なカギな気がする。みんな、この先に何が待ち受けていても必ず元の世界に帰るぞ!」
「エイエイ、おーっ!!」
ぼくたちは拳を突き上げて、気合いを入れた。
そしてもと来た道をたどって、どうくつから脱出した。そしてテントまでもう少し・・、のところでまさかの事態が・・・。
「おい、何かいるぞ・・」
「えっ・・・」
茂みにかくれてのぞくと・・・、なんとライオンが四頭テントの近くにいた。
「ライオンだ、四頭いる・・!」
「えーっ、まさか食べ物をうばいに来たの!?」
「いや、ぼくたちは食べ物を手に入れてない。たぶん偶然立ち寄ったんだろう・・」
「どうするの!?見つかったら食べられちゃうわよ!」
「よし、見てろよ・・!」
ぼくはパチンコを取り出すと、ライオンに向けて構えた。
「ちょっと待って!」
発射する直前、西野くんがぼくを止めた。
「どうしたんだよ、急に?」
「あの雷を落としたら、ライオンが逃げ出すどころかテントが吹き飛んでしまう。そうなったら、住むところがなくなってしまうよ。」
「そっか、じゃあどうすれば・・?」
「空に向かって発射するんだ、雷は音が大きいからそれだけでも追い払うことができるよ。」
「わかった!」
ぼくは空に向かってパチンコを発射した、すると雷のとどろく音が響き渡った。思わず耳をふさぐぼくたち、そしてライオンたちはおどろいて、どこかへ行ってしまった。
「やった、追い払ったぞ!」
「うん、よかった・・」
「とりあえず、今日は水を飲んで早く寝よう。」
そしてぼくたちは先を争うように、テントの中へ入りねむりについた。
翌日、ぼくたちは食糧調達のため狩りを始めた。
今回の狙いはガゼルやシマウマなどの草食動物だ。茂みの中をゆっくりと進んでいく。
するとガゼルの群れを見つけた、ぼくは狙いを定めてパチンコを構えた。そして少しずつ身を低くして、ガゼルの群れに近づく。
「よーし、落ちついて・・・」
少しずつガゼルとの距離をつめる、まるでチーターになった気分だ。
するとグーという音が聞こえた、あわてて後ろを見ると南原ちゃんの顔が恥ずかしそうに赤い。
『今のは南原ちゃんのお腹の音・・・!?』
するとガゼルの群れは突然どこかへ走り去っていった・・・。
「ああぁっ!?逃げられた・・・」
「ちょっと、なにやってんだよ!」
「ごめんなさい・・・、どうしてもおさえられなくて・・・」
「でもそのせいで、ガゼルを逃してしまったじゃないか。オレたちだってお腹空いてるんだから、そこんとこわかってくれよ・・」
「何よ、わざとじゃないのに・・」
「なんだよ、ガゼル逃がした張本人なのに」
「なによ!グチグチうるさいわね!」
「仕方ないだろ、せっかくのご飯を逃したんだから!!」
北邦くんと南原ちゃんの言い争いがヒートアップした。
「ちょっと、やめてよ!」
「なんだとこの!!」
「なんなのよもーーっ!!」
ケンカはヒートアップしている、ぼくはそれを必死に止めようとした。
「いい加減にしろーっ!!」
ぼくは北邦くんと南原ちゃんのケンカに腹が立って、ついに怒鳴ってしまった。北邦くんと南原ちゃんは、すっかり固まってしまった。
「今はケンカしている場合じゃないだろ!早く食糧を手に入れないと、オレたちが元の世界に帰れなくなるんだ!!」
「・・・ごめんなさい」
「ケンカしてしまって、ごめんなさい・・」
「いいよ、気にしなくて。」
ぼくは二人がわかってくれてホッと一安心した、そして再び獲物を求めて歩きだした。
すると今度はシマウマの群れを発見した、のんびり草を食べているのでこちらに気づいていない。
「よーし、今度こそ・・・」
ぼくは一頭のシマウマを狙ってパチンコを構えた。
・・・・今だ!!
弾を発射させた、その瞬間弾は強烈な電撃を
シマウマは電撃を受け、すさまじい叫びをあげるとそのまま倒れた。
「やったーっ!シマウマを捕まえたぞ!」
「これで今日の食糧は確保した、早く解体して持っていこうぜ!」
ぼくはシマウマの解体にとりかかった、作業を初めて三十分すぎたころだった。
「ねぇ、なんかイヤな予感がしない?」
「イヤな予感って?」
「なにかに見られているみたいな・・」
そう言って西野くんがふと視線を茂みの方にむけると・・・!!
「あぁっ!?ライオンだ・・!!」
「ええっ!?」
そこにはあの四頭のライオンがいた、牙を向いたその口からヨダレを垂らしている。
「なんでまたライオンが来たのよ!!」
南原ちゃんが叫ぶと、たてがみのあるオスのライオンがほえた。ぼくはまた襲われることを思った、けどふと考えた。
もしかしてライオンたちの狙いは、ぼくたちじゃなくてこのシマウマにちがいない。
ぼくはそう言うと、シマウマの肉を急いでナイフで切り取った。早くしないとライオンがいつ攻撃してくるかわからない。
「東野くん、早くパチンコで追い払ってよ!」
南原ちゃんの叫びを無視して肉を切り取ると、それを大事そうにかかえてみんなに言った。
「みんな、早く逃げろ!!」
ぼくたちは逃げ出した、その後を一頭のライオンが追いかけてくる。
しかしライオンはすぐに追いかけるのをやめた、ぼくたちは命からがら助かった。
「ふーっ、あぶなかった・・・」
「ホントだね、でもなんで現れたんだろう?」
「あっ、あれ見て」
西野くんが指さす方を見ると、ぼくたちがしとめたシマウマをライオンたちが、夢中になってかぶりついていた。
「あーあ、せっかく倒したのに・・」
「ライオンたちは最初からぼくたちのシマウマが目当てだったんだ、ライオンはチーターやハイエナから獲物を横取りすることがあるっておじいちゃんに聞いたんだ。」
「くやしいわ・・ねぇ東野くん、あのパチンコでライオンを追い払ってよ!」
「ダメだよ、これ以上刺激したら今度はやられてしまう。少し肉が手に入っただけ、よかったとしよう」
ぼくたちは肉に夢中なライオンを背に、テントへと戻っていった。
テントに戻ってきたぼくたちは火をつけて、シマウマの肉を切って焼いて食べた。
「よし、みんな食事を終えたら出発しよう」
「うん、ただみんなに言っておきたいことがあるんだ」
「もしかして、あのライオンのこと?」
「うん、ライオンだけじゃなくてここには猛獣がたくさん住んでいる。さっきみたいなことがまた起こることもある、だからおじいちゃんに聞いた『猛獣から身を守る方法』を教えるよ」
「おお!それで、その方法って何?」
「それは大きく手をふること、そして相手を見て叫ぶこと。これを守っていれば、襲われなくてすむ」
「本当かな・・・?にわかに信じられないけど・・?」
「とにかく、猛獣に十分気をつけていこう!」
そしてぼくたちは草原の先へと進んでいった。
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