第7話サンダーパチンコ

水を手に入れて戻ってきたぼくと北邦くんは、南原ちゃんと西野くんにぼくたちの食糧について話した。

「実は・・ここには水以外に、ぼくたちが手に入れられそうなものがないかもしれないんだ。」

「ええっ!?どういうこと?」

「オレと東野くんで近くを見てみたんだが、近くに川や池があまりなかったんだ。だから魚は釣れないし、しかもここには東野くんのワナで捕まえられる動物がいないんだ。」

「えっ、それってつまり今日の夜ご飯は無しということ!?」

南原ちゃんが絶望的な表情になった。

「いや、今日は前に残しておいた魚やウサギの肉が残っているけど、それがなくなったらぼくたちは全員飢えてしまう・・」

「それじゃあ、どうしたらいいのよ?このままだと、元の世界に帰れる前に死んじゃうよ!」

「・・・とにかく、またあのワナをしかけてみるよ。もしかしたら、また何かかかるかもしれない。」

「わかったわ・・・」

ぼくはそういうとワナの作成にとりかかった。何か生き物が取れればいいなと、ぼくは祈りながら作った。

そして近くの茂みにワナをしかけ、ぼくはみんなのところにもどってきた。

「あれ?南原ちゃんは・・・?」

南原ちゃんの姿がない、まさか行方不明になったの!?

「おお、東野。南原ちゃんなら、テントの中だぞ。」

よかった、ちゃんとテントの中にいたんだ。ぼくはほっと胸をなでおろしたけど、北邦くんは浮かない顔だ。

「しばらくそっとしておいた方がいい・・」

「どうして?」

ぼくが聞くと北邦くんがテントの中を少しだけ開けた、ぼくが中をのぞきこむと体を丸めて寝ている南原ちゃんが、すすり泣いていた。

「ううっ・・・、帰りたいよ・・・。パパとママに会いたいよ・・・」

「なんか東野くんの話を聞いてから急に泣き出してしまったようなんだ、たぶん一気に不安になったんだと思うよ。」

しまった・・、ぼくがあんなこと話すから、南原ちゃんが不安になったんだ・・。

ぼくは自分の話したことを、すぐに撤回てっかいしたかった。しかしそれを撤回する方法が思いつかなかった。

「ぼくのせいだ・・・」

ぼくが思いの言葉をつぶやくと、北邦くんがぼくのかたを持ちながら言った。

「そう落ち込むな東野、不安なのは南原ちゃんだけじゃない。オレと西野とお前だって、ちゃんと元の世界に帰れるか不安なんだ。だからそう落ちこまなくていい、力になれることがあったらいつでも頼ってくれ。」

北邦くんはぼくの肩を持ちながら、力強く言った。そのおかげでぼくの気持ちは少し楽になった。

「ありがとう、今夜はもう寝るよ」

「ああ、お休み」

そしてぼくと北邦くんはねむりについた。







翌日、ぼくは早起きしてしかけたワナを見てみた。

「ダメだ、やられた・・」

ワナは見るも無残にこわされていた、おそらく何かしら動物はかかってはいたけど、やはり力が強くワナを強引にこわして脱出したにちがいない。

これで今日の朝ごはんは無しになった、気落ちした気分でぼくはみんなのところにもどってきた。

「おはよう、東野早いな」

北邦くんと西野くんが起きていた。

「南原ちゃんは?」

「まだ寝ている、それよりこんな朝早く何していたんだ?」

「ワナを見に行ってたんだ」

「それで何かかかっていたか?」

「ダメだった、ワナをこわされたあげく逃げられた。」

「マジかよ・・・」

「ここには捕まえられそうな獲物はいないみたいだな・・・」

北邦くんも西野くんも落ち込んだ。

「とにかくこのままだと、オレたち飢え死にだぜ。何か手を打たないと・・」

「肉じゃなくて、植物でも何か食べられるものがあるはずだ。それを探してみるよ」

「西野くん、わかるの?」

「多少ならわかるよ、とにかく移動しながら食べ物を捜してみよう」

その後南原ちゃんも起きて、ぼくたちは移動を開始した。だけど空腹のため、歩みはとてもおそい。

「ねぇ、おなかすいたよ・・・」

「そんなこと言うなよ、余計におなかが空いてくるじゃないか」

「でも・・、おなかすいてるのはしょうがないじゃない・・・」

「だけど食べ物がどこにもないよ・・・」

ぼくたちは空腹でイライラしはじめていた、気持ちも最悪な気分で大自然の道なき道を歩くのは、本当に大変だ。

水を分けあっているものの、やはり食べ物がほしい・・・。

「ギャアギャア!!」

「ひぃっ!何今の音!?」

ぼくたちの周りから、動物のほえる声が聞こえた。

すると目の前にサルの群れが現れた、牙をむいてこちらを警戒している。

「一体なんだ!?」

「ヒヒの群れだよ!」

「なんかこっちにらみつけてない・・・?」

「もしかして、知らないうちにヒヒのなわばりに入ってしまったかもしれない。」

「これって、逃げた方がいいよな・・?」

「だけど、腹ペコで力が・・・」

目の前には怒り心頭なヒヒたち、そしてぼくたちは逃げる体力も気力もない・・・。

絶体絶命だ、ぼくたちはここでヒヒにおそわれてやられるのか・・・?

するとぼくの頭の中に、あることが浮かんだ。

「パチンコ・・・パチンコを使えば・・!」

ぼくはポケットからパチンコを取り出した、そして近くに落ちていた手ごろな小石を拾って、パチンコを構えた。

「東野くん、何を・・・?」

「わからない・・・わからなけど、これが一番いい方法みたいな気がするんだ。」

「ええっ!?やめてよ!やられちゃうよ!」

みんながぼくを呼び止めるなか、ぼくはパチンコを発射した。

すると小石が当たったヒヒの体に強烈な電撃が走った!ギャアーーッと絶叫した後、ヒヒは倒れた。

「・・・・・!!」

ぼくもみんなも一体何があったのかわからず、口を開けたまま呆然としている。

「きゃあ、きゃあ!!」

するとヒヒの群れは、ぼくたちから一目散に逃げ出した。そしてのこったのは死体のヒヒだけだった。

「やった・・・、ぼくたちたすかった!」

「やったー!」

絶体絶命な状況からたすかったことに、ぼくたちは万歳ばんざいしながらよろこんだ。

「そのパチンコすごいな・・!」

「一体、どうなっているんだ?ものすごい電撃が走ったぞ・・」

「いや、ぼくにもよくわからないんだ。」

「それでもわたしたちがたすかってよかったよ、ありがとう!」

みんなからほめられたぼくは、倒れたヒヒのところへやってきた。そしてナイフを取り出すと、肉をさばきだした。

「えっ・・?東野くん、何してるの?」

「このヒヒを食糧にするんだ」

「ええーっ!今度はヒヒ!?」

「でも前はウサギの肉を食べられたから、ヒヒの肉も食べられるよ。」

「東野くん、すっかりたくましくなったね」

「うん、もうすごいよ・・・」

そしてぼくはヒヒの肉を手に入れると、みんなと一緒に再び歩きだした。








歩き続けたぼくたちは、川のほとりで足を止めて休むことにした。

手に入れたヒヒの肉を棒に刺して焼き、それをみんなで食べた。

「美味しい・・・!」

「美味しいけど、肉ばっかりはイヤになるよ・・」

「そんなこと言うなよ、食べられることがありがたいことなんだから。」

「でも、南原ちゃんの言うとおりだよ。ぼくも肉にはあきてきたし、肉だけじゃ栄養が不足してしまう。」

「確かにそうなったら、病気でたおれてしまうかもしれない。とにかく食べられそうなものを他に見つけないと・・・」

ぼくたちは首をひねってアイデアを出そうとしたが、中々いいアイデアは思い浮かばない。

するとあの魔法の筒が再び開いた、そして中からもくもくと雲のかたまりが出てきた。

「今度は一体なんだ・・?」

すると雲のかたまりは、やじるしのようになって方向を指し示した。

「これは一体なんだ・・・?」

「もしかしてこの先に何かある・・、ということじゃないか?」

「よし、行ってみよう」

ぼくたちはうなずくと、やじるしの方向へと歩いていった。











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